第7話 世界標準ダンジョン4
「ちなみにあのデーモン、レベル800くらいあればソロで倒せるらしい」
「800なんてバケモノに片足突っ込んでるじゃない! ようはバケモノにならなきゃ倒せないバケモノでしょ!?」
「ほんとそうだよなぁ~、はっはっは!」
「笑いごとじゃないけど!?」
冒険者のレベルの中央値は600ほどだ。1000を超えると冒険者から見ても怪物になる。レベル800という数字がどの程度のものかなんとなくご理解いただけるだろう。
ちなみにみんなの憧れ・
どうやったらそんなにレベルが上がるんだ? オレと雫なんてようやく400くらいなのにどうなってるんだマジで。
「ともあれ、拠点に着いたな」
「けっこう人がいるわね」
拠点に到着した。次からこのダンジョンに来た時は、あのボス部屋には行けずにここに辿り着くらしい。つまりは初回限定ってことだ。あのデーモンに挑戦したい場合は地下牢エリアを踏破して所定の位置まで行く必要があった。初見で撃破できたら特別なドロップとかもらえないだろうか。
拠点の広々とした空間にモニュメントが点在している。あれがダンジョン内の各階層への転送ポイントとのことだ。冒険者たちが列を作っている。
1本だけある通路の方に向かっているのは、オレたちと同じく初見の冒険者たちだろう。あそこから改めて【地下牢】エリアを攻略していくことになる。
このダンジョンは地下牢・砦・山林・草原・市街地・城・海岸のエリアで構成されている。まずは地下牢から脱出する的な設定なのだろう。
城以降はかなりの難易度になるらしい。けどレベル600の冒険者数人のパーティでクリアできる程度だという。
「
「よりによってなんでソレ……」
もうちょっとなんかあるだろ。”ねこぱんち”とか有名なのに。
ちなみに≪フルーツケーキハンマー≫はアメリカのダンジョンで手に入る打撃武器だ。やたら
日本に≪ダンジョンメッチャカタイアズキアイスソード≫があるなら、アメリカには≪フルーツケーキハンマー≫があると言われているとかなんとか。あまりにも固いので「このケーキに突き刺さることができた棒こそ実は最強」説とかあるらしい。
「ボス戦はダメだ。さっきは通り道だったからしゃーないけど。
とはいえ、雫が使った経費を稼がなきゃならない。スライムとかデカいネズミとかいるらしいけどいいな? 安心しろ。入ってすぐのエネミーがオレらに与えられるダメージなんて知れてる」
「スライムって何かの素材になったっけ?」
「粘液はダンジョン由来の細菌とかウイルスの培地の需要がある、らしい。ダンジョン内じゃないと増えないヤツらがスライム培地だと増えるとかなんとか」
「医療関係! そこそこ良いお値段で売れそうね!」
「悪くはないぞ。オレらなら超ローリスクだしな。それじゃあ探すか」
「うん!」
「50匹」
「…………うん?」
「どうした」
「ご、50匹? そんなに必要なの……?」
「最低ロットが50匹からなんだよなぁ」
「……」
口を広げてパクパクしている。
気持ちは分かる。でもオイシイ話は無いんだ雫、残念なことに。
「えっと、わたし急用が……」
逃走を試みる雫の肩に手を置く。そしてガッチリ掴んだ。
「待て。使い込んだ経費分は稼いでもらうぞ」
「か、身体で払うわ!」
「そうかそうか。良い心掛けだ。じゃあ働こうな~」
「ちょっ!? 体で払うって言ってるピチピチの女の子捕まえて肉体労働させるっておかしいでしょ!? ねえ聞いてる!? わっ、あっ、あああぁ~!?」
こうしてオレたちはダンジョンを歩き回り、無事に規定量のスライムを手に入れたのだった。梅田の冒険者組合に戻って換金しよう。
ファストパス分くらいは稼げただろう。
「「……」」
そしてオレたちは言葉を失っていた。
鑑定さんの言っていた、オレたちの相談に乗ってくれそうだという冒険者がもう組合で待っていたからだ。
そしてその、キツネ耳を頭に付けた女性冒険者のことをオレたちは知っていた。目の前の人物が誰なのか脳が理解した時、思わず口から彼女の名前がこぼれ落ちていた。
「
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