第5話 世界標準ダンジョン2



「おぉー! ここが世界標準ダンジョン【ユニバーサル・ダンジョン・ジャパン】かー!」


 ついにやってきたぞ! 冒険者なら1度は行っておかないとなこのダンジョンは!


 なんでも、世界中に何カ所も同じようなダンジョンがあるらしい。

 で、構造とか出現するエネミーもほぼ一緒なので、1度入っておくと世界中の冒険者と共通の話題を作ることができるとか。そんなダンジョン、入っておかないわけにはいかないよな。


「よし、行くか雫。習合スキルは使えないかもしれないけど召喚獣は呼んどいてくれよ。戦力が多いに越したことはないからな」


「——……か」


「雫?」




「バカーーーーーー!!」




「!?!?」


 空気がびりびりした。


「な……!? し、雫? 一体どうし――」


「私が行きたかったのはテーマパークの方のユ〇バ! こっちじゃない!!」


「えっ」


「えっ、じゃないわよ! どこの世界にテーマパークのユ〇バとダンジョンの【ユニバ】を取り違えるヤツがいるのよ! ンばかぁー! ばかもーん!!」


「えー??」


 ユニバって言われたらダンジョンの方じゃないの普通? 俺たち冒険者だぞ?


「信じらんなぁーい!!」


 頭を抱えてうずくまる雫。

 いや知らんがな。お前がどう思おうと今はダンジョンの方のユニバにいるのが現実なんだから。


「はーい行きますよー」


「……ヤダ。テーマパークの方の〇ニバに行くまで1歩も動かない」


「1歩も動かないならユニ〇にも行けねぇだろ……」


「しゅーが運んでくれればいいのよ!」


「そうかそうか。じゃあ運んでやるからなダンジョンに」


 ひょい。雫を持ち上げて小脇に抱える。

 雫がそもそも軽いっていうのもあるんだろうけど、筋力にステータス振ってるとこのくらいは余裕だ。


「持つな~!」


「どっちなんだよ」


 めっちゃジタバタする。鮮魚かってくらい。なので降ろした。


「むぅー……ユ〇バでファストパスつけてくれたら許す」


「あぁー? ヤだよ。高いもん」


「えー!? 冒険者はお金持ちって聞いたんだけど?!」


「稼ぎは雫と山分けなんだからオレの稼ぎも知ってるだろうが」


 冒険者じゃない高校生と比べればずっと稼いでるんだろうけどな。でも売上と経費の差し引きはなかなかしぶいものだ。掛け金が自分の身体生命なことを考えると余計に。


「ていうか、さっき勝手に召喚獣用の娯楽アイテム買ってたよな? あの代金は当然しずくのサイフから出すんだよな?」


「けけけけけ経費よあれは……!」


「目が泳いでるぞ」


「ぐっ……あ、あーっ! ちょうど良いところにダンジョンが! あそこで稼ぎましょう! 来てっ、おあげ!」


 空から光が降る。細いレーザー光が素早く動いて積み上がっていく。3Dプリンターみたいだった。最初は感動していたけどさすがに慣れた。


「コン!」


 ほどなくして1匹のキツネが現界する。召喚獣でキツネ型モンスターのおあげだ。雫のネーミングだけどちょっとどうかと思うセンスだった。


 普通のキツネと外観上の違いはほぼない。だけど岩に爪跡を付けたり火を放ったりできた。


 雫が使役する3体の召喚獣の中で1番の新顔となる。キツネ耳の冒険者—— 橿原かしはられいに憧れた雫が入手した1体だった。


「ん~♪ おあげは今日もカワイイねぇ~♪」


「コン!」


「食べちゃいたいくらい~♪」


「コン!?」


 満面の笑みであおげに頬ずりしてる雫だけど……うん、おあげの方は真っ青だった。安心しろおあげ。さすがに食べないから。


 食べないよな……?





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