第3話 呪われアームズ3




「まず大前提として」


 鑑定結果に唖然とするオレたちに鑑定さんは言った。


「その刀は呪われアームズではない可能性があります」


「「えっ」」


「じゃあ何なの? という話ですが、まずは付喪神つくもがみタイプもしくは依代よりしろタイプの召喚獣である可能性が高いです。習合スキルが発動しているということを考えると、9割がた召喚獣の類いだと思います」


 雫の頭部から伸びるツノを見る。鹿っぽいヤツだ。


 ……うん、だいたいの人間はツノ生えてないからな。たぶん習合スキルが発動している。


「そして先ほどの『この刀は不完全であり』という説明を鑑みると……何かが足りないのでしょう。それが何かは分かりませんが。すみません、私のスキルの限界です」


 そう言って鑑定さんは頭を下げた。


「そんな! 鑑定さんはぜんぜん悪くありません! ここまで分かっただけでも充分です! それよりもホントありがとうございます!」


「そう言っていただけると幸いです」


 ……とは言ったものの。


 弱ったな。

 不完全? 不完全ってなんだ? 呪われアームズじゃないって言ったって、起こっている現象は呪われアームズと変わらないじゃないか。


 雫は……どうなってしまうんだ。


 本当にこのままなのか? 頭にあんな、鹿みたいなツノを生やしたまま過ごすのか? 仮に一生このままだとして見た目以外に影響はないのか? 涙が出そうになる。


 雫を見る。




 いや、どら焼き食ってんじゃねぇよ。




「しゅー! このどら焼きすごくおいしい!」(ハフハフ!)


「おばかー!!」


「ア゛ァアァー! それ痛い! グリグリ痛いからー!」


「お前もちょっとは考えろよこの状況を打開する方法を!」


「だってだって! 値段の割に美味しそうでほんとにおいしかったんだもん! そこのコンビニで売ってた! さすが大都会の組合だわ!」


「そういう問題じゃないんだよぉぉ!」


「イヤァァっ!?」


「ふふふっ、仲良しですねぇ」


 笑いごとじゃないんですよ鑑定さん。いや、ほんと。










「【九尾】のダンジョンはご存知ですか?」


 俺たちが落ち着いたころ、鑑定さんがするりと切り出した。


「2、3年前まで攻略不能だったダンジョンですよね。ボスの九尾が強すぎて。ていうか今も殴り合いじゃ誰も勝てないんですよね?」


「はい。で、その九尾さんを鑑定した時もこんな感じの鑑定結果でした。というか名前しか分からなかったので今回より悪いですね」


「……」


 思わず絶句してしまった。


 それはつまり、このアームズは九尾クラスの化け物由来のアームズってことか?


 オレたちは何に触れてしまったんだ?


「そんな怪物由来の武器……いや、化け物そのものの可能性もあるのか。そんなの、雫を元通りにするのは絶望的なんじゃ――」


「いえ、逆ですね」


「???」


「おそらくですが力押しではどうにもならないタイプの存在です。逆に言えば、フタを開けたら簡単な話な可能性が高いです」


「それって要はタネが分かればってことですか」


「はい。分かれば、です」


 それは分からなかったら永遠にどうにもならないってことだ。1かゼロか。そんな世界の話だ。


「ひとまずそのアームズを見つけたダンジョンをよく探索されてみてはどうでしょうか。それでもダメならダンジョンの外にも探索の範囲を広げて、それでもダメなら……協力をあおぐとかでしょうか?」


「協力?」


「そういったことが得意な冒険者もいます。報酬を用意して頼って見るのも手ですよ。

 ああでも、ひとまず相談だけでもしてみてはどうでしょう。大雑把……こほん。大らかな方たちなので相談くらいなら報酬うんぬんとは言われないと思います。こちらからお声がけしましょうか?」


「……ありがとうございますっ、本当に何から何まで……! お願いします!」


「2、3日もあれば捕まると思います。観光でもして待っていてください―― あまり悲観しないでね。彼女さんも不安になっちゃうから」


 言われて雫を振り返る。

 ニコニコと微笑んでいた。「なんとかなる!」とでも言いたげに。




 口元にあんこ付いてんぞ。




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