第2話 呪われアームズ2



「しゅー! 見て見て! ほんとに〇ーバーイーツが走ってるわ!」


「交通系IC無いとコインロッカー使えないとかビビるわ……」



 というわけで大阪までやって来た。

 そして洗礼を受けている。目に入ってくる情報量が地元とはケタ違いだ。圧倒されるしかない。


「うおっ!? ≪ダンジョンメッチャカタイアズキアイスソード≫売ってる! これ筋力補正高くて凍え効果もあるアームズだから気になってたんだよ! けどまさか人間並みのサイズだとは!」


「≪モンスターをダメにするクッション≫……召喚獣へのプレゼントのおすすめ! 1個4,000円だけど3個なら10,000円……! ぐ、ぐ……3つ買います!」


 そして当然ながら冒険者も多い。とてつもなく多い。さすがは大都会だし、さすがは未だに踏破されてない【梅田ダンジョン】を擁する街だ。冒険者向けのお店とかも大量にあった。そのへんを歩いている冒険者の装備とかもいろいろだし、眺めているだけでも1週間くらい楽しめそうだ。


しずく! あとで海とか行ってみようぜ! ダンジョン産の戦艦とか見られるかも!」


「(モゴモグモゴモグ)!!」


「きんつばほおばらないでゆっくり食べなさい」


「ごくん。しゅーも食べる?」


「食べる」


 あーんしてもらった。


 もぐもぐもぐ。


 うまいなこれ。


 じゃなくて。


「何はともあれ組合に行くぞ」


れいちゃんいるかな?!」


「忙しいだろうしなぁ」


 スマホのナビを頼りに組合を目指す。

 知らなかったんだけど都会ってGPSの精度あんまり良くないんだな。たぶんビルが高くて衛星を遮られるからだと思うけど。


「え、このビルまるごと冒険者組合なのか?」


「地元の農〇本部より大きいわ!」


 当然オレたちが普段利用してる組合よりもデカイ。もう何もかも巨大で大量でわけが分からん。


「まぁビビってても仕方ないな。入ろう」


「待ってしゅー! もしかしたら入った瞬間絡まれるかも! 転生モノのネット小説みたいに!」


 なんでワクワク顔なんですかね……。


 ちなみに絡まれなかった。







「すみません、鑑定をお願いしたいんですが……」


 鑑定の窓口にやってきた。声をかけるとメガネのお姉さんが顔を上げてにこりと微笑んだ。この人がこの組合の鑑定さんか。高ランクの鑑定スキルを持ってるらしい。


「鑑定ですね~。カウンターに出せますかー?」


「それが呪われアームズでして……」


「あらあら。じゃあそちらのかたが?」


 鑑定さんが雫を見る。まあ見れば分かるもんな。


「頭のシカの角みたいなのも呪われアームズの影響ですか?」


「おそらくは。”習合”スキルが強制発動してるみたいなんです。おかげで普段使ってる召喚獣と習合できなくて」


「”習合”というと召喚獣とかと合体できるヤツですね」


「それですそれです。あ、これ紹介状です。地元の組合のかたに鑑定してもらったらレジストされてしまったんです。武器の名前すら分からなくて……」


「わぁ、懐かしいですね。あの子、元気ですか?」


「元気ですよ。世話になってていうのもアレですが、ふてぶてしいくらいに」


「ふふっ、あの子らしいですね」


 とりあえず取り出してもらえますか? と鑑定さん。雫はすぐに例のアレをロードした。



 ひと振りの、ひどくサビ付いた刀がしずくの右手に出現した。



「これはまた露骨な……」


 鑑定さんは苦笑いだった。「お前らよくこれを無警戒で手にしたな?」と言外に言っていた。ほんとそれ。


「ともあれ鑑定してみましょう」


 雫が刀を水平に持ち上げる。そして鑑定さんの瞳に光がはしった。地元の鑑定さんよりずっと鮮明に光が映っていた。相当に高ランクの鑑定スキルみたいだ。これで何か、どうにか分かってくれれば良いんだけど。


「——えっ」


 鑑定さんが声を上げた。


「これは……驚きましたね。ほとんど情報が読み取れません。こんなことは久しぶりです」


「そう、なんですか……」


「ああすみません。とりあえず読み取れた分は共有しますね」


 鑑定さんはパソコンに向き直ってキーボードを叩く。それはすぐに終わった。明らかに打ち込まれた文字数が少なかった。プリントアウトされた紙が差し出される。




 ≪シヅカ≫

 由来の分からない古い刀。ひどく錆び付いている。

 この刀は不完全であり、***********************************************************。

 装備変更・装備解除・売却・譲渡・破棄ができない。





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