【スピンオフ・ショートエピソード集】酔っぱらい、攻略不能とされていたダンジョンを攻略してしまう

月啼人鳥

第1話 呪われアームズ1





「あ? 鑑定レジストされたし?」



 鑑定さんは不機嫌そうに呟いた。


「うわ〜コレ無理系だわ。あんたたち、大阪の梅田支店に行ってきな。高ランクの鑑定スキル持ちがいるから。ちな、アタシのセンパイね。はいこれ紹介状」


「えっと……その人でも鑑定出来なかったら……?」


「超高ランクな存在に由来する呪われアームズだってことじゃん?」


「ずっと装備変更できないんですか、しずくは?」


「解呪スキルならワンチャン。でも鑑定レジストされるってことは解呪スキルもレジストされるかもだから、そのパターンだと一生外せない可能性はある。マジで」


「マ、マジで……?」


「マジで」


「……」


 言葉を失うオレを尻目に、鑑定さんはニヤニヤしながら雫に話しかけた。


しずくぅー、ちゃんと驟雨しゅうに責任取ってもらえよぉ〜?」


うよ、責任取りなさいひょ」(モゴモゴ)


「おまんじゅう食べるのやめなさい。いま大事な話してるんだぞ」


 和装にブーツスタイルの女の子が目をぱちくりとさせた。そんな思いも寄らないこと言われたみたいな顔してもダメだぞ。


「ごくん……。それより大阪行くのよね?! きゃー! 都会だしなによりれいちゃんに会えるかも!」


「あのなぁ……オレは雫を心配して―― 聞いちゃいねぇ」


 さっそくスマホで大阪の観光スポットを調べ始めた幼馴染み。能天気にも限度とかない? ガックリ疲れるよもう。


 まあ、ああいう底抜けに明るい感じに救われもするんだけど。


「……でも確かにあわよくばグランドリーフの実物も見てみたいな」


「そうでしょそうでしょ? じゃあ早速行きましょ!」


「最終的には電車になるとして……途中までは搭乗式人型アームズゼンテイカで行くか。良いか雫?」


「よろしく!」


「じゃあ明日の9時くらいに迎えに行くから。今が春休みで助かったな」


「あ〜楽しみだなぁ大阪♪」


 イラっ☆


 しずくの頭を両サイドから拳で挟んだ。そして――ぐりぐりぐりィ!


「お前ぇぇ! ちょっとは真面目にやれぇぇ! おばかー!」


「あ゛あ゛あ゛ぁぁ~~!! ごめん! ごめんて!!」









 ―― ダンジョンがこの世に現れて幾年月。


 ダンジョンに由来する物事は当然のように社会に組み込まれていた。


 ダンジョンはもはや無くてはならないものだ。ダンジョンで採取できる素材でしか作れないものがあり、治せない病気があった。


 それらを採取してくる冒険者という職業が生まれた。


 彼らは莫大な価値と富を生み出し、経済的に大きな影響力を持つに至った。


 またダンジョンに出現するエネミーを狩って経験値を得ることで超人的な力を手に入れた。それらは治安や軍事の面にも多大な影響を与えていた。


 オレと雫もそんな冒険者の端くれだ。


 もっとも、ほぼ駆け出しの高校生冒険者なので金があるわけでもないし、治安に影響を与えるほどの力なんて無いけど。


 というかそんなレベルの冒険者はごく一部だ。雫の呼ぶところの光ちゃん―― 橿原かしはられいクラスじゃないとそうはならない。よく勘違いされるけどな。


 けど少し前に興味深い話を聞いた。

 その橿原光がこううそぶいたらしい。



 殴り合うばかりが冒険者ではないと。我々はもっとダンジョンに向き合うべきなのだと。



 その言葉の意味を、間もなくオレたちは理解することになる。


 理解させられることになる。



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