第47話 職業あっせん保健室 その2
ー #保健室 #伯爵視点 ー
ヤトルフェ先輩との面談、
と言ってもテーブルを挟んでパイプ椅子に座って今後の理想を話すだけ。
本来なら機械部部長であるキキョウ先輩とするべきなのですが
私を訪ねて来たということは3つの選択肢が挙げられますか。
1つは1000万ユーリ以上の稼げる案件、
勿論各部長を信用してはいますが手柄を横取りされたくないという生徒は多い。
1つは部長副部長の専門外な事、
これに関してはメールで相談してくれると助かりますね。
それっぽい部活に意見を仰ぎます、
私は知識人ではありませんので丸投げします。
そして転部の場合。
さてどう出るのでしょうかねぇ。
☆☆☆
ヤトルフェ先輩がスマホを取り出し、私にメールを出しました。
伯爵財閥では履歴書については手書きでもデジタルでも構いません。
中身が重要ですので。
「ええとヤトルフェ先輩、趣味が ” 脈拍を計ること、心音を聞くこと ”
となっていますがこれはいったい?」
「はい、私は数字の変化に大変な興味を持っています。
特に・・・・・」
「ストップ!!!!!
ガチ面談じゃないんですよ!!!!!!!!
分かりました!
今日の夜食開けますから、それでも食べながら雑談しましょう、
そうだ、それがいい、きひひひひひひ」
「もう伯爵が食べたいだけじゃろうて」 (引き気味)
堅っ苦しい面談なんてやってられませんよ、まったく。
お菓子やジンジャーエールを交えて再び・・・・・
ヤトルフェ先輩が必死に手を伸ばしていますが届いていないようですね。
「もしかしてポテチ食べたいんですか?
なら追加で私の分開けますのでそれは貴女の分です。
あと言葉を崩してください、私もやりずらいので」
とてとてと歩いてポテチを自分の目の前に再配置して何事もなく座る先輩、
見た目が中学生ぐらいということもあり裁縫部は避けてほしいものです。
「うむ、キキョウ母さんが我を作ったのだが
肉体を得て初めて目が覚めた時、彼女は我を抱きしめていた。
そして我が言葉を話すと母さんの心拍数が上げて喜んでいた。
それがきっかけじゃ」
「あー、動物が初めて見る存在を親と勘違いする刷り込みに似てますね。
それが心音だったのが先輩ですか」
「ちなみに伯爵の体重も興味深い変動をしている。
冬場65kgで夏に54kg切りをし、また63,55kgまで
リバウンドしておる、これほどの変動は正直興奮に値する」
「個人情報!!!!!!!!!!!!!!!」
ニャラケルあたりが流しましたね、あとでお仕置きです。
「リエ姉さんがロボット、紅姉さんが洗剤、そして我が数字フェチ。
やっかいな性癖だな蒼転寺家は」
「性癖だけなら例の先生にも対抗できますよ、
お世辞ではなく本音で」 (ドン引き)
☆☆☆
「まあ冗談にとどめるがいい。
本題に戻りたい、我が出す提案はエナジードリンクの輸入量削減。
蒼転寺のチカラで各生徒の眠気や気だるさの軽減を狙う」
メールが届き添付動画を再生、3年の教室ですか?
無数の包帯がヤトルフェ先輩から伸び、各生徒の腕を触る。
先輩は触手系じゃないんですかと聞いたところ
「流石に触手は絵面がまずいでござろう」とキキョウ先輩が
包帯に変更してくれたようです。
「機械部の作業効率はキキョウ母さんが来てから飛躍的に高まった。
確かにエナジードリンクは汎用ではあるが個人差がある。
そこで母さんは各個人用に調合した飲み物をとうやk・・・・
渡したのじゃ」 (あせあせ)
「今投薬って言いかけましたよねぇ!!!!!!」
「ちゅ、注射ではないぞ、ドリンクじゃドリンク。
それと同じことを蒼転寺のチカラで成し遂げた事、
眠くなる成分を排除して頭をスッキリさせただけ。
リエ姉さんのような暴走のリスクはない」
「各教室と部室及び体育館には
水、エナジードリンク、お湯のサーバーがありますが
エナドリに関しては輸入に頼らざるを得ない状況ですので
正直助かります。
1日2本分飲むとして200x2=1人当たり400ユーリ
この学園の人数は約1000人x400=40万ユーリ
それが365日ですから
365x40万=年間1億4000万ユーリの削減・・・・・
年に1000万ユーリの時点で新設の部活を作ることを推奨していますが
正直学生なんてせずにすぐ事業を立ち上げるべきですね。
伯爵財閥の大人もエナドリ中毒者は多いですから
出張サービスするだけでも今の試算を軽く超えますよ?
さらに蒼転寺家しか扱えないプログラムコードの件もあります。
例えば8人ぐらいをタコ足な感じで乗っ取って
リエさん8人分の戦果をたたき出せるのであればビルはおろか、
私と同じく島を買い取って自分だけの楽園を作ることすら可能です」
私の考えに色気が出ましたね?
ヤトルフェ先輩の口角が緩んでいます。
「それはできない相談だ」
あれ?フられましたか?
「相手の脳を浸食する事しか能がない我が初めて他者と
手をつなぐことのできた
甘い言葉で言えば
今まで切り捨てた無価値な存在が我の思考に変革をもたらせたのじゃ。
分かりやすく言えば金儲けなんぞより青春を楽しみたい」
・・・・・・・機械のような感情が薄い子かと思いましたが
純粋で素直な性格。
生まれたばかりですし、目に映るものがキラキラと輝いて見えるのでしょうね。
なら私はその後押しをするだけ。
「分かりました、面談はこれにて終了です。
内容は合格ですよ?
そもそも赤字以外は私には止める権限もありませんし」
「そうか、では退席させてもらう。
・・・・・・これは我からの助言だが今日明日は伯爵眠れないと思うぞ?」
ヤトルフェ先輩の包帯治療ってそんなに凄い物なんですか?
「今回の資料をキキョウ母さんに見せたところ各部活動に指示を出していてな、
” 海外輸入品を減らすことに成功すれば予算増えそうでござるよ ”
という指示じゃ。
そして無事予算案が通りモデルケースが確立された」
ぴこん、と私のスマホが鳴る。
ぴこんぴこんと激しく鳴る。
「あの、まさか、このメールってもしや」
「各部活の申請じゃな。
書類は作られておるじゃろうから徹夜コース確定」
スマホを見たら50件の改善報告書が、いや現在進行形で増えてます!!!
やりやがりましたね!あのキキョウ先輩!!!
私が苦しむように事前に各部に連絡して
同時に連絡が行くように指示しやがりました!!!!
「あのぉ、ヤトルフェ先輩。
疲れが取れる最上級のやつお願いできますか?」
「・・・・・同情するぞ伯爵」
職業あっせん保健室 完
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