第43話 シーフ


 紅先輩を13cmの人形に閉じ込めることに成功したし、

もうこの学園に居座る理由もなくなった。



 「待て!ジエンド!俺は何も成せていないのだ!

こんなところで立ち止まる訳にはいかん!!!」



 何を叫んでも、もう手遅れじゃないかな先輩?



 「ジエンドが興味を引きそうなもの・・・・・

そうだ、 ” シーフ ” 


 新装狂演譜そうきょうえんふの高難易度ミッションを

ほぼ初期装備でクリアした奴から逃げているのだ!!!!」



 !!!!!このせんぱい急所を突いてきた、

正直むかつくんですけど。



 「俺はシーフもリーヴェも倒し最強の称号を手にする・・・予定だ。


 そんな俺と戦わないのはジエンドが腑抜けな自称天才ゲーマーの証拠。


 あー、えーと、暴力女。頭タイ〇ニン」




 あのさ、勢いで悪口言うのは自由だけど最後まで貫いてほしい。


 ノープランというか行き当たりばったりというか。




 「シーフを倒すってせんぱいは言ってましたけど不可能だし。


 あのプレイヤーは最強のボスを倒した後行方をくらませた、

現代人にとってその行動は不可解極まりない」




 「不可解?」



 せんぱいが食いついた、正確には興味を持たせたって言ったほうが正しいか。


 情報を小出しにして興味を惹かせるのは会話の基本戦術。




 「前人未踏の事をしたらSNSで自慢するはず、

いわゆる承認欲求ってやつ。


 けどここ最近姿を現してない。


 偽物も当然出たよ?


 けど悪質なチーターや、売名行為が目的の動画投稿者とかね。



 ただゲームの挙動を見ればわかる。



 シーフはいわゆる ” 魅せプレイ ” っていうカッコよさ重視の戦い方。



 偽物は挙動を真似るだけで肝心な時に被弾して正体がバレていったから」




 「やけに詳しいな、ジエンドよ」




 「私だってシーフと戦いたいから、

けどゲームにログインしてないなら戦えない。



 そう、戦えない!!!!!」



 珍しく熱くなった。


 でもこれはしょうがない事。




 「なら俺ごときに負けるはずはあるまい」



 「まだ挑発するつもり?



 そんなに私と暮らすのはイヤなのかな?」



 「・・・・・・仕方あるまい。紅の双璧システム・・・・・起動!!!」




 ついに来た、私の紅先輩だ。


 この先輩を屈服させれば私の恋は成就する。



 目つきが鋭くなったのがその証拠、私の命名 ” 夢女子製造モード ”



 「俺はこの学園が好きだ。


 リエがいてキキョウがいて、ランやリーヴェも。



 無論ジエンドもだ。



 この学園を去るならそれもよかろう。



 だが!!!!!!!!



 所詮はその場しのぎにしかならん。


 

 それは保健室登校や不登校をしてきた

リエやジエンド自身が知っているはずだ」



 人が変わったかのような、言葉に迷いがない。



 そう、この先輩と戦いたいんだやりたいんだ





 「それに、ジエンドが興味があるのはこのモードの俺なのだろう?



 なら戦って屈服させてみるがいい!!!!!」




 っ!!!!!!!やば、めっちゃゾクゾクしてきたぁ。




 「条件を確認しようか、

私が勝ったら私の好きにやらせてもらう。


 転校しようが、先輩の事を着せ替え人形にしようが文句は無しで」



 「それで構わぬ、勝つのは俺だからな」



 かっこよ。




 「それで先輩が勝ったら私に何を要求するんです?


 洗剤のお歳暮セットぐらいは用意するけど?」



 

 「その予算は夕食代にでも回すがいい」





 おおっ、キレッキレのセリフ回し。






 「じゃ、戦ってあげる。


 だけど私は先輩の機体特性とか必殺技を全部知っている。


 だからハンデとしてこれだけは教えとくから。


 私には機械部副部長 (リエ先輩) の必殺技は通用しない」  

 



 「フッ、忠告感謝する」




 

 そう、今からこの先輩の自信過剰をバキバキに砕く。


 

 でもそれはSNSとかにはアップロードしない。



 私には承認欲求とかない。



 私は他人から褒められても感情が動かないから。



 そして先輩は私に負ける。


















 なぜなら私が ” シーフ ” だから。






 私はシーフと戦えなかったって言うのは嘘じゃないけど曲解した真実。



 流石に自分自身とは戦えないからさ。

 

 

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