第39話 常盤爆 霍公鳥



 ー #1週間後 3年教室 #紅視点



 「やぁやぁ、随分人気じゃないかぁ、何だったかな?特急エンジン」



 「あー、装狂演譜そうきょうえんふな」



 2mはありそうな身長で、ポニ―テールなヤツが語り掛けてくる。


 バレー部部長にして前年生徒会長、常盤爆 霍公鳥。







 俺はそういった心にグッとくる単語を日々勉強しているのだが、

大半の諸君達は読めないらしいな。



 ときわはぜ ほととぎす。


 

 俺が初見で読めたからなのか妙に馴れ馴れしいのだ、彼女は。



 背が高くスタイルもいい、リーヴェもできるOL風のカッコよさだが、

ホトトギスはキリッとした吊り目と仕草で同学年はおろか年下まで

人望があるのだ・・・・・俺だってハンカチぐらいは持ってるのにな!!!




 ☆☆☆




 まぁ彼女が言うにはリーヴェに乗っ取られた装狂演譜は

リエを始めとした機械部との共同制作という形で宣伝されているらしい。



 だが実際は違う、リーヴェと自称蒼転寺ランの2人がリエの作った

・・・・・・いや故人である蒼転寺ランの作品を乗っ取った。





 トキソウ・コンツェルンが作った着せ替えアプリのキャラを流用し、

人間が武器を拾って戦うバトルロワイヤル風ゲームに書き換えられていた。



 旧装狂演譜と違う点は課金圧が低いことだ。



 無料で出来るゲームは星の数ほど存在する中で、

 ” 商品を買って ” プラモのような

 ” 加工 ” を要するゲームはどうしても敷居が高い。



 対して新装狂演譜は全員申し訳程度の武器を持ち、

敵を倒したり武器を拾いながら

時間経過とともに縮小するフィールドでサバイバルするゲームだ。


 

 最強構築をネットでコピペして課金額を争うゲームより

純粋な腕で戦うゲームのほうがとっつきやすいんだろうな。



 かといって慈善事業ではなく、

バトル開始のコスプレスキンで集金している。


 またゲームのコスプレ衣装実装とほぼ同時に

現実で同じデザインの衣装をネット通販で実施する

商魂たくましいこともしている。



 そしてこの学園限定ではあるものの、

現実での試着を裁縫部で開催している。


 



 

 俺が文化祭で着た黒い服も装飾を抑えた廉価版として、

ゲームでも現実でも販売予定だとか。




 商売面もゲーム性も本当によくできている。



 俺も思わず課金しそうになったが、

リエが大事を取って自宅学習な状態でゲームに精を出すのはダメだろう。



 そう、リエやヤトルフェを傷つけた新たな装狂演譜を手放しには楽しめない。



☆☆☆




 「っと、失礼した、今はそれどころじゃなかったな。



 君の姉、蒼転寺リエ君の容体がよくないんだろ?



 本当は王都で流行してる ” さすまたチャンバラ ” に

誘おうと思ったんだけどね」



 「また伯爵に怒られそうなことを、ホトトギスよ」



 強盗をさすまたで撃退した英雄がSNSで話題となり

その武器がこの学園でも流行中だ。


 DIY部はこのところ追加残業でさすまたを量産している。




 「安心するといい。


 今回は教室ではやらないからバレはしないさ」キリッ



 「殺〇ドッチボールの元凶隠すの大変だったんだからな!!!!!」




 ホトトギスの固有魔法は物の破損や、

多少の人間のケガをなかったことにできるから証拠隠滅に適している。



 被害が出ていないからこそ伯爵も手が出せなかったんだろうな。



 

 「ぎっちゃん、先行くね~」



 ぎっちゃんとはホトトギスの事だ。


 名前のセンスはいいものの、常盤爆霍公鳥ときわはぜほととぎす

長いので ” ぎっちゃん ” や ” ぜっちゃん ” 呼びされている。




 「ああ、私もすぐ出る。


 という訳だ、気分転換も大事だぞ?


 君は私と生徒会長をかけて争えた唯一ゆいいつの存在だからね」 





 気分転換か・・・・・。



 彼女がいなくなった後もしばらく黄昏ていたがこのままではダメだ。

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