第38話 紅先輩の事、分かってなかったみたい

 ー #廊下 #ジエンド視点 ー



 機械部副部長 (リエ先輩) の手術のため保健室から追い出された私達、

もう紅先輩とも彼女関係でもないし、これからどうしようかな?




 「伯爵はさ、今回の事どう思うの?」



 私がそっけなく聞いてみたけれど 「何が正しいか分からないですよ」 と

ボソッて呟いただけ。


 なんとなく伯爵が歩いているから私も一緒いっしょに。




 ☆☆☆



 到着したのは購買部・・・・・でもこの学園の購買部は普通じゃない。


  

 食堂と合体したそれは巨大な自動販売機の群れ。


 いうなれば24時間営業の薬局みたいなもの。


 冷凍された食品や保存の効くジュースやお茶とかお菓子、

1000ユーリ以下の化粧品まで。



 紅先輩にフラれて落ち込んでいるのを隠したいから、

新たな話題を私が出さないとね。 



 「そういえばさココって店員さんいないよね。


 やっぱ人件費の削減?」



 「単純に ” 万引き ” 対策ですよ。


 海底火山の同時噴火によって気温が45℃まで跳ね上がった時、

人口の6割が干からびて

何処の会社も人手が足りなくなったんです。


 そういった理由でセルフレジが急遽導入されましたが、

実はセルフレジで得られる人件費削減より、

万引きで商品を取られる額のほうが多かったんです、がっっっつり赤字。



 お店としては警察を呼んだり、

別室で犯人を従業員に見張りをさせたりするだけでも人件費がかかります。



 犯人も面倒事は店員もしないだろうと ” 甘く見積もってます ”

 



 なら発想を変えようと。



 全部自販機にすれば万引き・・・・・いえ窃盗罪と呼ぶべきですね、

それは無くなります。


 商品は自販機の中にありますから。


 意図的に壊せば商品は出てきますがその時点で

” 器物損壊罪 ” が適用されます。


 勿論窃盗は立派な罪ですよ?


 ” 万引き ”とか ” イジメ ” とか ” パパ活 ” みたいな

言葉遊びで緩いイメージを植え付けていますが悪は悪なので♨


 きひひひひひひ」



 「人体錬成やってる悪の親玉がそれ言う?」くすり



 「きひひ、ようやく笑いましたね」







 あー、気が付かなかったかも。そんな頬緩んでたのかな?







 「自販機修理までの時間を民事裁判で請求できますので

お店としても対応しやすい。


 何より人件費の削減ができるんですよ、商品補充は2,3人いればいいので」



 ☆☆☆



 他愛もない?会話をしてると目的の場所に付いたみたい。


 伯爵はスポーツドリンクとビタミンメイトを買った。



 「ジエンドさんは何か買わなくてもいいんですか?


 私は保健室に戻って紅に差し入れをするので」


 

 「あぁそのための。


 そういえば紅先輩が好きな物分からないまま別れちゃったし、

そういうのが好きなんだ」



 「え?私も分かりませんよ」とか言いながら首を横に振る伯爵。


 

 「ただ紅の性格を考えたら手術成功まで廊下にいそうじゃないですか、

装狂演譜ってゲームはあくまでトラブルを減らすための手段。


 彼女が倒れてしまったら学園のインフラは崩壊しますので」



 「・・・・・それってさ、紅先輩が卒業したらどうするのかな?


 私は面倒だから週休3日でしか働かないから」




 「ホント、どうするべきか迷います、まったく。


 前世で保健室の先生に憧れを抱いてなければ学園運営なんてしてませんよ」



 ・・・・・・前世、か。



 紅先輩も、機械部副部長も前世がどうとか言ってたけど

記憶の引継ぎってことは ” 強くてニューゲーム状態 ” のはず。


 

 なのになんでこの人たちはこんなに苦悩してるんだろうね?



 



 「うーん、前世の記憶が本当の事だとして裁縫部顧問は倒せそう?」



 「倒すこと自体はできますよ?


 でも彼女を説得できるのは不可能に近い。

 

 私でも貴女でも。


 唯一ゆいいつ対抗できるとするならば、

1年前にトキソウ先生と手を組み傲慢な教師共を追い出した学生たちの英雄、

圧倒的才能を持ちながら生徒会長選挙を放棄した3年の先輩」



 「ならその人に頼めばいいんじゃない?」



 「ジエンドさんもよく知ってる人ですよ?」



 私も?




 「その名は




























 紅。


 ” 紅の双璧くれないのそうへきシステム ”


 

 彼女で無理なら伯爵財閥は倒産します。


 それだけ経営者としての ” トキソウ・リーヴェ ” は

影響力えいきょうりょくが強いんです」



 「紅先輩ってそんな凄い人だったんだ。


 なら私とは最初から釣り合ってなかったじゃん」



 「私達はできうる限りの時間稼ぎをします。


 紅が立ち上がるのが先か、トキソウ先生がヤケを起こすのが先か。


 今回の件に関わらないのなら早めに脱出する資金を用意すべき。



 これは伯爵財閥元最高責任者のススではなく、

貴女の友人であるニコラス・スラーとしての警告です」




 伯爵が本名使うってことはマジのやつだ。



 ☆☆☆




 結局あの後私は伯爵と別れて自室に戻った。


 財閥の命運がどうとかじゃなくて・・・・もっと単純な話。



 どんな顔して紅先輩と顔を合わせるのか分からないし。

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