第37話 財閥解体の危機
ー #濃縮還元 蒼転寺ラン視点 ー
せっかく紅ちゃんとの ” 初めての共同作業 ” だというのに、
やってることは元マスターであるトキソウ・リーヴェの液体を浄化する作業。
こんなことならコルセットじゃなくて
ウエストニッパーを着てくるべきだったかしら?動きにくいし。
「なぁ、伯爵ってリーヴェに弱みでも握られてるのか?」
デッキブラシで床をごしごししながら紅ちゃんが聞いてきた。
「うーん、この手の話ってキキョウちゃんあたりが好きそうな
権謀術数というか頭使う話だけど聞きたい?」
「で、できる限り分かりやすく頼む」
紅ちゃんもリエちゃんも蒼転寺ランが勉強を教えれば飛び級できるぐらいには
自頭がいいんだけど、普段は雑念に囚われててその真価を発揮できていない。
☆☆☆
ー #蒼転寺ランの財閥解体クッキング♪ ー
「じゃあ分かりやすく。
伯爵財閥は数多くの企業が傘下に所属しています。
その中のひとつが ” トキソウ・コンツェルン ”
元マスターが最高責任者の会社。
売っているものは服やアクセサリーと言った日用品。
ここまでは大丈夫よね?」
「ああ、俺達が着ている制服とか体操服も彼女の会社製だ」
「そう、惑星1のシェアを誇る洋服屋の偉い人。
それだけならいいんだけど、
よりにもよって伯爵財閥ETF株を大量に保有しているの」
「い、いーてぃーえふぅ?」
マズイ、紅ちゃんが知らない単語が出て来たわ!!!!
「ETF、いってしまえば伯爵財閥株の複合体。
幕ノ内弁当やおせち、お子様ランチみたいな
料理プレートのようなものよ」
「料理がそれぞれの株で、おせちがETFってことなのか」
あれれ~、お子様ランチをスルーされちゃったわ。
せっかくボケたのに。むぅ。
「そう、元マスターを退陣させたとして残ってるETF株をどうするのかが問題。
それ以前にトキソウ・コンツェルンは元マスターと私が2人で
入れ替わりながら仕事をしているから1人辞めただけで
何万という従業員達に迷惑がかかるの」
「さらっととんでもない事言ったな、ランよ」
「だって社会人なんて8時間も
だから半日ごとに教師と社長入れ替えてメンタルを回復させてたわ」
「・・・・・・おい、
俺の靴下のニオイ嗅いでいたのはリーヴェだけじゃなかったのか」激おこー!
うわぁ、激おこぷんぷん丸ね♪
「だ、大丈夫。私達以外には渡していないわ。
フリマサイトのユリカリとかに流してないから」あせあせ
「ならいいのだが」ふんす
「近日建造予定の ” トキソウ・ミュージアム ” にて
展示予定よ♪」
「使用済みソックスの美術館なんて需要無いぞ!!!!!!!!!」
これほどの芸術はないと思うけどね☆
ご機嫌斜めになっちゃった紅ちゃんの為に話を戻すわ。
「と、とにかく問題はETF株だけじゃないの、
元マスターって無駄に商才があるのよ。
伯爵ちゃんを始めとして数々の出資者に対し
常に結果を出し続けている。
そんな彼女を辞めさせたとなれば伯爵ちゃんへの信用問題に繋がって
最悪の事態を引き起こすの」
「ま、まだ悪いことが起こるのか」
「ええ、 ” 伯爵財閥関連の銀行から預金を引き出されるのよ ” 」
「・・・・・ゑ?それだけか?」
ぽかんとした表情してるけど結構深刻なのよ?
「バブル崩壊やユリーマンショックって言葉は聞いたことがあるはず。
単純に言えば不景気になるってこと。
銀行っていうのは皆の預金口座からお金を集めて資産運用しているの、
それを信用取引・・・・・えっと会社の持ってる金額の100倍レートで
FXや仮想通貨といったマネーゲームをしているの」
「危ないだろ!!!せめて預金額と同等で勝負しろよ!!!!!」
「それだと他の銀行や石油王に負けちゃうわ、
リスクを取って伯爵ちゃんが無理してくれてるから
伯爵財閥に従う人たちの生活が安定するの」
「今度伯爵にクッキー焼いてやるか、それぐらいしか俺にはできないしな」
うむ、素直でよろしい。
「で、元マスターが辞めると知ったら資産家はどういった手段を取るかしら?
もしかしたら伯爵財閥の株全て危ないんじゃ?と思って
銀行預金から株まで全部 ” 売り取引して現金にするの ” 」
「それがどうして危険なのだ?」
「銀行預金や株がなくなると資金調達が難しくなる。
そうするとさっき話した100倍レートのマネーゲームの資金が減る。
伯爵財閥はどんどん貧乏になっていく」
「そんな風が吹けば桶屋が儲かるみたいな話を信じろと」
「少なくとも私と伯爵ちゃんはそう思ってる。
ETFがおせちと表現したけれど、中身が劣化すれば
” すかすかおせち ” になって価値がどんどん腐っていく。
このままだと自分たちの会社も巻き添えになると伯爵財閥傘下の企業達は
独立を宣言して残った企業群は貧乏になっていく。
ドミノ倒しみたいに負の連鎖が続いてあっという間に財閥解体♪」
「なら俺にはもうどうすることもできないな」諦め―
「そうね。玩具サイズとはいえ核兵器を所持しているトキソウ・リーヴェ。
彼女を
マネーゲームにおいても彼女は強いわ、買収も難しい。
はっきり言って無敵。
でもたったひとつだけ彼女を止める方法があるとしたら?」
ここまで言った後紅ちゃんが俯いた。
やっぱり薄々気が付いていたのね。
「俺はリエを、いや今はヤトルフェだったか。
どちらにせよ2人を傷つけたヤツのゲームに参加する気はない」
「それでも元マスターが自暴自棄を起こす前に止められる」
「断る!!!!!!!」
「お願い紅ちゃん、元マスターのココロを・・・・。
” 装狂演譜 ”
かつての蒼転寺ランが作ったゲームでへし折ってほしいの」
☆☆☆
願いは聞き入れられなかった。
よくよく考えたら紅ちゃん専用の機体もないし、
リエちゃんの ” ソウテン・クリエール ” を私が使っても
デーモンコアとCa粒子の前に膝を突くことになる。
私は・・・・蒼転寺ランはあまりにも
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