第40話 最高の皮肉




 ー #裁縫室地下サーバー #自称蒼転寺ラン視点 ー



 「新装狂演譜結構な盛り上がりね。


ねぇ、トキソウ・リーヴェ社長?」



 私が皮肉たっぷりに元マスターへ呪詛の言葉を放つ。



 「違う、こんなことはありえないの!!


 リエちゃんも!紅ちゃんも!全然ログインしてない!!!


 彼女たちは装狂演譜が好きなはずよ!!!!!!」




 何を勘違いしてるのかしら?この人は。


 仕方ありませんね、塩対応である ” 当機 ” の人格で応戦します。




 「・・・・・・リエ様は重篤なまでのロボット好きですが

女の子に武装させて戦う別ジャンルは好みに合わなかった。


 そして紅様も戦いこそ好きですが仲間を傷つけた方が作ったゲームに

乗り気になるでしょうか?


 お金儲けの才能は確かに彼女達より元マスターの方が上です。



 しかし、共にゲームを楽しむご友人がいない現状は正直可笑しいですね。



 運営というゲームマスターの地位、現実世界の衣服ブランドトップシェア、

教師という立場、それらが意味をなさない」




 腕組みをしながら当機は元マスターに持論を展開します、

しかし彼女は缶ビールを取り出しグビグビと飲み始めてしまいました。



 「ん、ん、ん、ぷはぁ。



 そんなことは分かっているわ。


 でも結果、そう結果さえ出せばきっと・・・・・」



 「今の貴女を見たらコーダ姉様も、スミレ様もお嘆きになりますよ?」



 「その話はしないでッ!!!!!!!!!!!!!!!」



 元マスターは缶ビールを投げつけて当機の顔を濡らしました。


 設定上当機は18歳。


 飲酒できる年齢ではありませんが?



 「ディストピアを成形した博士にすら勝てなかった貴女の宇宙ロケットは

案の定隕石の流星群に巻き込まれた。


 乗員は3名。


 蒼転寺ランの姉、蒼転寺 コーダ。


 リエ様を置いて宇宙に逃亡した、蒼転寺 ラン。


 コーダの結婚相手にしてメイド、蒼転寺 スミレ。




 大人2名は真っ先に蒼転寺ランを脱出カプセルに乗せ避難させました。



 そして両名は帰らぬ人に」




 「・・・・・・・・・・・」




 「コーダ姉様もスミレ様も蒼転寺ランよりスペックが高い方々。


 トロッコ問題ではありませんが命の選別をするなら

蒼転寺ランは切り捨てられるべきです。



 何故だか分かりますか?


 いえ正しい答えなんてありませんよ?」




 「それは・・・・きっと2人とも年下が好きで」おどおど



 「ふふふ、私の答えは違いますよ」ニィ



 思わず口角が上がりますねぇ。こういうのは。



 「単純な話 ” 呪い ” をかけたんですよ。


 蒼転寺ランが自分達より幸せになってほしいという呪いを。


 人生が歴史にとって教科書のシミほどの価値しかないことに気が付いて、

勝手に限界を作って、勝手に自己ルールを作り、勝手に自滅していきます。



 人は愛情やキズナと飾る言葉を展開しますが傷の舐めあいの茶番劇」






 論理で武装する人ほど正論には弱いのです。



 







 「太陽系第5惑星・・・・・・木星。



 高重力化による後天的圧縮遺伝子治療により人間の器を保ちながら

人を越える能力を得たトキソウ・リーヴェ。



 生命のことわりを捻じ曲げてなお、


 愛する人を救えず、

 友と交流する機会もなく、

 あまつさえ従者としていた当機に裏切られました」




 「何が言いたいのかしら!!!!!!!」




 「元マスターが破滅する様を特等席で観覧します。


 ああそうですね、装狂演譜やトキソウ・コンツェルンのお仕事は手伝います、


 では失礼いたしますね」営業スマイル








 これで第1段階はクリア。


 追い打ちをかけるべく、 ” 協力者 ” である ” シーフ ” を

呼び出しましょう。





 ☆☆☆




 ー #更に1週間後 #自称蒼転寺ラン視点 ー





 新装狂演譜にある独立エンドコンテンツ。



 かつて本物の蒼転寺ランが戦いを挑み勝てなかった博士の機体。



 15m級惑星防衛機構ロボをクラッキングした、


 ” 不協和音神・グランディオーソ・フルアクティブ ”











 ” シーフ ” と名乗る方が初期装備に近いポン付け武器で倒したのですから。




 死なんて生ぬるいんですよ?



 愛する人を救えず、

 愛した者に愛想をつかされ、

 愛したゲームすら無名のプレイヤーに強さの存在意義を否定されたのです。



 これ以上の尊厳破壊はなく、今の彼女は芸術に昇華しました。

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