第34話 これがトキソウマル、悪魔のチカラよ


 ー #三人称視点 ー



 「トキソウ・リーヴェ!サタニック・トキソウマル!出陣ッ!!!」


 「・・・・蒼転寺ヤトルフェ。デストロイ・リフレイン。浸食をする」



 裁縫部顧問のリーヴェ先生と機械部副部長を取り込んだヤトルフェが

バトルの開始を宣言すると同時に薄桃色のバリアフィールドが展開された。



 魔法エネルギーの応用で出現したそれは短時間ではあるものの核兵器すら

無効にできるシェルターのようなものだ。



 両機は基本15cmだがトキソウマルに刺さった2本の旗や

リフレインの背負ったバッテリーが機体の大きさを誤認させる。




 ☆☆☆



 専用の無機質なカタパルト・ゲートを超え

バトルフィールドへ侵入するヤトルフェ。


 しばらくは滑空で問題はないからと景色を眺め始めた、

壮大な森が戦場を支配している。


 しかし恐怖心ではない別の感情がヤトルフェを襲ったのだ。


 今からここを「今からここを滅ぼすから気分がいいのかしら?」




 「!!!」



 ヤトルフェが思考の海に片足を突っ込んだその刹那、

リーヴェの声と共に砲撃が始まった。



 おそらくは時蒼式電気火縄銃からの攻撃、

そう考えたとしてもトキソウマルに変形機構は見られなかった。


 

 人型を飛ばすにしては非効率であるし、

森を突破するには木々が邪魔なのだ。



 間髪入れずに第2射、

ヤトルフェが反撃を加えるため銃口を攻撃先に向けた直後

そことは別の場所へ攻撃をした。


 

 ヤトルフェに浸食された蒼転寺リエの指示である。


 彼女はロボットの玩具という概念がある限り何度でも復活する地縛霊的な

存在である。


 ヤトルフェにとっても魂を食いつくしても食いつくしても復活する

” 賽の河原 ” や ” わんこそば ” のような印象を受けている。



 全弾発射ではなく特定の場所への攻撃により敵は爆散した。




 だがそれは勝利ではない。




 「あら?見破られちゃった?SPスキル 時蒼式武装鳥ときそうしきクレッシェンド


 簡単に言えば自立稼働するドローンに武器を持たせたってわけ♪」



 「森の中を高速で移動するのは2足歩行ロボでは不可能だからね。


 蒼転寺さんが空を飛ぶサポートキャラを出すことは知ってたし」



 

 蒼転寺ランとクリエ・リエは前世で対決したこともありお互いの手の内が

読めるのだ。


 それでもランのほうが戦略方面では上であったが。




 ☆☆☆



 

 森林を抜け障害物のない荒野へと差し掛かったヤトルフェとリエ。



 実機は15cmだがスマホの画面及びVRゴーグル上では15mのロボとして

装狂演譜では映し出されている。



 遥か彼方にトキソウマルの影を見たヤトルフェは攻撃態勢に入る。



 「SPスキル ヤトルフェ・ファンタズマ」



 静かにそうつぶやくと背面の10本のサブアームが

ガコンと動き前方の敵へと狙いを定める。



 「・・・・イグニッション」



 目くらましの煙幕弾が発射されデストロイ・リフレインのショーが開園した。


 ビームやミサイルの暴風がトキソウマルへ襲い掛かる。


 実体弾、散弾、ビームマシンガンいずれも単発式。


 ゲームに負荷をかけ対戦相手の行動を阻害する機能は健在。



 まるでサーカスのように縦横無尽に駆け巡る攻撃の前に

立っているものは皆無に等しい・・・・・だがゼロではないのだ。



 

 伯爵  (これリーヴェ先生全部の攻撃捌いてますね。音で分かります)


 ジエンド (マントの下に腕とか生えてる?ポ〇モンのカ〇リキー的な)




 伯爵とジエンドには試合の勝者が見えていた。


 伯爵は煙幕とミサイルの爆発に違和感を覚え、

ジエンドは自分がやってるVRの音ゲーを思い出した。



 2人は部外者で装狂演譜に興味がないからこそ

現状の把握にリソースを割けているのだ。





 ☆☆☆



 「・・・・これで終わりか。蒼転寺もあっけなかった・・・なんだ?!!!」



 前方に "  揺らぎ ” があったと感じたヤトルフェだがその直後

背面のソウテンマルが半壊消滅した。


 

 そして・・・・・



 青白い光に包まれ白い粒子をスラスターから出しながらトキソウマルは現れた。




 「ちゃんと出撃時に ” サタニックトキソウマル ” って名乗ったわよ?


 ただのトキソウマルでなくてね♪」



 さらにヤトルフェの眼前に3つの粒子発生装置が現れた。



 「この粒子の名は ” Ca粒子 ” 対蒼転寺遺伝子用に作った特注品。


 ヤトルフェちゃんには悪いけど我慢比べと行きましょうか」




 スギ花粉を思わせるほど猛烈な勢いでCa粒子が放出される。



 徐々にチカラが抜けていくことに恐怖を覚えたヤトルフェだが、

消滅したソウテンマルの残骸をパージしトキソウマルの死角から触手を伸ばす。



 「機械と触手プレイって結構難儀な性癖なのね♪ヤトルフェちゃん♡」



 「戯・・・言・・・を」



 もはや満身創痍なヤトルフェだが触手は

トキソウマルの太もも部分へと迫った。


 他にも背中や手首等3mm穴のありそうなポイントへ

にゅるにゅると進行する。



 「???


この機体・・・・3mm穴が・・・・・無いだと・・・・・」



 ヤトルフェが驚くのも無理はなかった。


 諸説あるが老舗のプラモメーカーが穴とジョイントの規格を統一し

武器やロボプラモとして販売して以降、各社メーカーがそれに倣い

3mm穴規格という暗黙の了解のようなルールが出来上がっていた。


 コンテストには出られないものの、メーカーの垣根を越えた

カスタマイズという物はユーザーにとってはありがたい物である。



 諸説と言ったがロボットと美少女メカ物に関してはデザイナーの数が

不足しており、財団B社と立川のK社では同デザイナーの血が流れた

腹違いの姉妹品といっていいプラモが乱立している。



 それほどまでにありふれた3mm穴だがトキソウマルには存在しない。



 「確かにロボットフィギアにおいてスタンドの固定法は重要よ?


 けど私はあくまで15m級のロボットとしてトキソウマルを新規造形した。


 おもちゃではなく戦略兵器として」




 「ひっ・・・・・」



 ヤトルフェは底知れない恐怖に襲われた。



 リエの知識も通じない、触手によるエネルギー供給もできない、

地平線ぎりぎりに見える距離から約数秒で眼前に出れた種も分からず、

あげく突如半壊した背面のソウテンマルの件もある。



 青白い光を放つ悪魔のパイロットはニィとほほ笑みながら通信を続けた。




 「この機体は文字通りの次世代機。

Ca粒子のサポートもあるけれどもうあなたに戦意は残っていない。


 降参する?」




 「誰が!!!!!!!!!」



 ヤトルフェはまだ辛うじて動く機体の全エネルギーをサブアームに流し込み

攻撃を試みるが・・・・・


 

 「そう・・・・・」



 トキソウマルは刀を抜きサブアームに直結している触手を切り落とし、

デストロイ・リフレインの首元へ刃を向けた。



 「命乞いでもする?機体だけは助けてあげるけど?」



 「・・・・降参・・・・する訳ないっ!!!!!!!」



 デストロイ・リフレインの装甲が外れ内部フレームから触手が飛び出す。


 もはやプログラムで動く機械ではなく、触手に支配された一種の生命体。



 化け物の化したリフレインを蹴り飛ばしたトキソウマルは

真の必殺技を放つ。




 「サタニックとは悪魔の意。


 搭載されてるのよ、 ” デーモンコア ” が。


 リエちゃんなら分かるかしら?この機体は核駆動の機体。


 バトル中実質エネルギーは無限なの♪」




 一瞬怯んだヤトルフェだがトキソウマルに食らい「できるわけないでしょ?

音もなく消えてね♪


 サタニック・プレッシャー☆」 



 トキソウマルがマントの下からサブアームを展開し4本腕に、

それぞれ左右の手で触手を挟み込むと瞬時にそれらは消滅した。



 ” 勝者 トキソウ・リーヴェ ”


 そのアナウンスがゲームから響き勝敗が決した。

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