第13話 年休300日の復讐者その2
年休300日の復讐者その2
ー #屋上 #夕方 #伯爵のクラスメート視点 ー
「ゲッ、こっちに向かってくるし」
黒い羽根を生やして空を飛ぶ子が私の目の前に現れて手を振っている。
にこやかな笑顔と服の黒金の装飾も相まって大人びた雰囲気。
多分私達とは違うタイプの生き方、
生まれながらの ” お嬢様 ” と感じた。
「あなたは伯爵と混じらないのです?」
うん、この人の話し方はいびつだ。
最後に ” ですます口調 ” 付ければ許されると思っているタイプ。
「私はインドア派だし。それに昨日メイド喫茶で半日働いたし」
遅刻と言えば遅刻なんだけど。
「メイドならご奉仕しやがれです!!!」
「ほんと口悪いね君。
伯爵達が無理なら私はもっと楽しくないから」
「余に焼きそばをぶちまけたスス伯爵は楽しそうだったですよ?」
「あー昨日の人か。
ごめん、多分伯爵新作ゲームやりたくて魔が差したんだと思う」
現に私もサボって楽しんでたし。
「余は貴族ではなく、ただの人として扱われたあの体験が嬉しかったのです」
「いやいやいや!アレただのクレーム物だから!!!!」
慌てて返答するしかないけど、後で訴えられるよね伯爵。
「みんな余のキーホルダーを見ると途端に慌てふためくです」
キーホルダー?ちっさいポーチにつけられたボタン?
「核ミ〇イルのスイッチです」
「・・・・核ミサァ!!!!
そりゃ伯爵達も委縮するって!
あー・・・うん。もし私がナイフ持って話したら怖いよね?」
「なんでそんな危ない事するんですか!!!!!!」
これ自分が凶器持っていることに気が付いてないパターン。
こうさ、いい感じに説明をしていく、
私って論理じゃなくて感覚で物事を感じるから説明が下手、
それでも彼女は私の言葉に耳を傾けた。
「なるほど、余は悪いことをしてたのですか」
「あー、うん。分かってくれたならそれでいいや」
全て投げやり気味だけど言語が通じてよかった。
こういう問題児は紅先輩にいつも任せてたから。
「決めました!余はこの学園に転入します!!!
友達になってください!!!」
え?何言ってるの?
核ミサのスイッチは危ないってことを教えたら好感持たれた?
そりゃ誰も言えないだろうけどさ・・・・。
「私?友達は選んだほうがいいと思うよ?
ほら私って根暗だから単独行動が多いし」
それは事実であり、羽の子へのやんわりとした拒絶。
「まずは自己紹介、余は黒雪・スノーフレーク。
百合リス貴族にして生徒会長、年齢は18」
うわ、先輩じゃん。
「そっか、ごめん。私の名前は言えないんだ。
別に君が悪いんじゃなくて親が付けた名前が嫌いなだけ」
「親と不仲だったんです?」
うーん。空気ぐらい読んでくれるかなぁ?
流石の私もキレそう。
「じゃあ教えてあげる。貴族様とは無縁の下級国民の生活ってやつをね」
☆☆☆
ー #少女の過去回想 ー
私が小学校入学した時かな、親は折りたたみゲーム機を買ってくれた。
いわゆるキャラクター物じゃなくて
” 脳トレ ” って言われる簡単な問題集。
何百時間もやってるうちに違和感に気が付いた。
「これ問題傾向に癖がある」
うーん、説明が難しいな。乱数って言う羅列。
ランダムな問題集じゃなくてある程度決まった法則性って言うべきかな。
とにかく馬鹿正直に答えるんじゃなくて ” 予測とか予言 ”に近い
ズルみたいなことができてしまった。
それは現実にも当てはまってしまって、
例えばテストの過去問をスマホで調べて何度も解く、
たったこれだけで傾向を自己分析して高得点が取れてしまう。
教科書や与えられたプリントだけをこなす同年代とは明確に差が付き
これが悲劇の始まりだった。
☆☆☆
ー #少女の中学時代 ー
私のやることは変わらなかった、スマホで過去問を分析してテストに臨む。
成績がよかったから、おこずかいも増えて新しいゲームソフトも買ったし、
SNSも普及し始めてゲーム友達も増えた。
だが私の親は違った。
周りがお金持ちの私立、
当然親御さんも金持ちでマウント合戦が多発していた。
パートナーの年収だの車の金額だの実にくだらないことだと思う。
あげくSNSで自分の子供の学歴を自慢したり、
テストの順位を無断で貼り付ける者達が現れてからは大変だったよ。
元から感じてはいたけれど
” 親の人生を華やかにするための舞台装置 ” として子供を利用し始めた。
10位以内の成績だったけど私の親は勉強を強要し、
私の目の前でゲーム機を破壊した・・・真っ二つだったよ。
ゲームのおかげでテスト問題の予測ができていたのに
それをへし折られて・・・なんか今までの自分が否定されたみたいでさ。
私は ” 不登校 ” になったんだ。
自分でもびっくりしたよ、なんせ体にチカラが入らない。
うつ病の人が ” 糸が切れたみたいに突発で ” 症状がでるって
言うけれどまさに私がそうだった。
☆☆☆
ー #少女の過去回想 ー
そいつは突然やってきた。
青髪と赤毛の2色髪・・・・のちの錬金術部副部長にして伯爵財閥の役員。
私と両親の不仲を知ってか知らずか
リビングの中で指パッチンをし無機質な機械を呼び出した。
私は髪の毛を要求され1本引き抜き所定の容器に入れたら
台所ぐらいの大きさの機械はカタカタと震えだした。
そして ” 私のクローン ” と呼ぶべき生命が生まれた、
後の人体錬成と呼ばれる技術。
両親も私も驚いた、そんな間をつんざくように2色髪が語る。
「新たに誕生したこの子は
間違いなくあなた達の遺伝子を引き継いだコピー人間。
彼女はゲームなんてせず勉強のみに執着し、
難関大をも受験可能なように ” 遺伝子を調整しました ” にゃひひひひ」
試しに今まで習った所のテスト問題を2人で解いた・・・・
そして偽物の点数が勝ってしまった。
私は両親に見捨てられ、偽物が私立に復学した。
☆☆☆
で、百合の鳥島学園に編入させられた。
私は情報系・・・プログラムとかを専攻して
ゲームを作る側に立とうと思った。
けど勉強すればするほど伯爵財閥の機械に違和感を覚えた。
汎用プログラムであるけれど百合の鳥島は巨大な船に近いから
突発的な ” 揺れ ” が発生してる。
・・・いや島じゃなくて地面が繋がってないから正確には
” 百合の鳥船 ”なんだけどさ。
その揺れに対しての修正案を提出したらお金が貰えた。
それからは躍起になってプログラムの勉強をして、
お金を稼いで、仮想通貨の勉強もして ” 投機 ” して
ついに学生の身でありながら生涯年収を稼ぎ切って
若者の究極の称号を手に入れて
” 元両親と偽物の私 ” のSNSに通帳の数字を送り付けてやった。
これが私の復讐。
私を捨てたニンゲンに対して幸福であることをアピールして
劣等感を与える。
彼らの断末魔みたいな書き込みは楽しかったよ?
すぐブロックしたけどさ。
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