第7話 紅の恋模様その1 たまにはシリアスもよかろうて
ー #学園寮リエの部屋 #夜 #地の文担当 紅 ー
なぜか明日からメイド喫茶の出し物に参加することになったが
まあ問題はない。
裁縫部顧問とやらが生み出した黒を基調とした
服を着て仕事ができるというのだ、
見た目はカッコいいし十字架のアクセサリーはキキョウを連想させる。
メリハリをつけるための真紅の差し色がアクセントとなり
さらに俺のやる気を出させる。
しかし洗濯せずに消臭剤を振りまいて誤魔化すのは邪道だな。
そこで伝家の宝刀を切らせてもらう!!!
” ビーズ型香り付け洗剤 ユリジュエリー ホワイトティーの香り ”
こいつを用いてイイ香りを持続させる!!!!
いわゆる粉や液体、ジェルボールなど違い
しっかりとした香り付け目的で使用されることが多い、
大きさは米粒よりも少し大きめだがしっかりと水に溶けてくれる。
問題は値段が粉洗剤の2倍以上の価格ということだ。
それの対処法としては似た香りである ” ユリング大容量版 ” を
混ぜて誤魔化すという小賢しい手を使っているが今日は違うのだ!!!
ついでにリエ達の服もホワイトティーの香りに染めてやる!!!
文化祭だから機械油を使わないだろうしな!!
ー #40分後 ー
洗濯が終了しハンガーに洗濯物を吊るす。
夏とはいえ今は夜だ。
どんなに優れた部屋干し洗剤とて生乾きでは異臭の元、
そこで!!!室内洗濯物ラックとエアサーキュレーターだ!!!
風のチカラで乾かして万事OKだ!!!
☆☆☆
ー #百合の鳥島文化祭2日目 #家庭科室 #三人称視点 ー
「じゃあ、私達休憩入るから」
「お先にドロンでござる」
機械部部長 キキョウ・リゾルートと副部長 蒼転寺リエが
メイド喫茶会場を去る。
本来スス伯爵のクラスの出し物であるが
あまりの混雑ぶりに応援を頼んだのだ。
しかし紅は別である、まともに料理ができるため
キッチン兼接客として業務の中核を担っていた。
自分の分身であるリエがコンビニ弁当やスナック菓子を食べているのに
憤慨し、料理を通じて更生を促したのがきっかけ。
紅の家事はネットで調べた付け焼刃だが実戦経験だけは豊富なのだ。
ー #1時間後 ー
わざわざ紅を指名する客が現れた。
黒のロングヘヤ―で身長は150cmぐらいだろうか、
紅よりちょっと背が低い彼女は眼鏡をかけており、おどおどした様子で
受け付けで待っていた。
「指名感謝するぞご主人様、不肖 紅がお相手しよう」
胸に手を当てもう片方の手は伸ばす
ボウ・アンド・スクレープで客人を迎え入れる紅、
どちらかと言えば紳士がやる挙動ではあるがカッコいいという理由で採用した。
「きゃっ!!!!」
あいさつも終わりお姫様抱っこで席へ移動する紅、
謎の少女は突然のことに驚き声を上げたが、
暫くすると大人しくなっていった。
紅の息使いや心臓の鼓動をダイレクトに受け赤面をする少女。
それに汗と洗剤の香りが交じった紅の匂いが彼女の鼻を
刺激する。
緊張をして自分の呼吸まで早くなり何が何だか分からなくなる。
体が火照り、お腹あたりが痒い錯覚に陥り脳が快楽物質を生み出す。
間違いなく彼女は ” 恋する乙女 ” であった。
☆☆☆
「ご注文は?」
ぶっきらぼうに質問をする紅に対し少女はカタログを見ていた。
メニューに悩んでいたわけではない、
紅は普段ツインテールだが皮ひもで髪を束ね
それに合わせて前髪を後ろに回したオールバックな風貌、
普段と違うギャップに少女は困惑しつつ見とれていたのだ。
「えっと、メイドさんのオススメで」
合法的に火の扱いができる料理人に目覚めたミツヒデと、
料理で天下統一を目指すノブナガの2人がキッチンの主力ではあるが、
在庫の関係上特定のメニューだけを頼まれても困るのが実情。
あらかじめ料理を作るセントラルキッチン方式は大量の赤字を生むため
文化祭ではまず採用されないからだ。
在庫の食材からイイ感じの料理を提供するのがメイドさんのオススメである。
よりにもよってメニュー表の目立つところに記載されているのは
確実にメイド喫茶側の事情である。
メインのオムライスと飲み物のオーダーを終え紅は料理を作り始めた。
夏場に火を使う事もあり紅の顔に汗がにじみ出るがそれもまた
少女にとって美しく見えた。
「ところで名前は?」
「ひゃい!!!!え、エリーです」
「エリーお嬢様か、いい名だ」
紅 (エリー・・・まさかリエか!!!!!
いやありえないだろ!!
俺を置いて休憩に行った裏切者に重ねるのは侮辱なんてレベルではない。
リボンの色からして1年だからな。
というか全部活回っている俺が把握できていないということは帰宅部か?
まあいい、大人しそうな子が来たのなら
俺も多少の無茶は許されるだろうしな)
紅はエリーの分のオムライスとは別に
” 自分用の料理 ” も作っていた。
お昼ご飯を食べてない紅にとっては空腹で死ぬ手前であったのだ。
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