第096話「憑依能力者の末路」

※グロテスクな描写がありますのでご注意ください。

 お食事中の方は閲覧をご遠慮……したほうが良いかもしれません。

 メス達は美少女に脳内変換してお楽しみください。

 北村の末路とかどうでもいいという方は、読み飛ばしても全然問題ない回です。

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 ――ガシャァアアン!!


 激しい衝撃音と共に、黒い島の中央に落下したケージが、勢いよく砕け散った。


 中から這い出て来た北村は、必死になってゴキリオンの体を動かし、この地獄からの脱出を試みる。


(何故この僕がこんな目に遭わなきゃならないんだ! 山田のクソ野郎め、絶対に殺してやる!)


 こんな醜い姿になってしまったが、まだ希望はある。異世界モノの小説では、主人公は最弱から成り上がるのが定番だ。ゴブリンだろうが、スライムだろうが、最強になることが出来るのだ。ならば自分だって――。


 そう思った北村は、どうにかしてこの魔物だらけの島を脱出しようと、必死になってその6本脚を動かす。だが、慣れないゴキの体は思ったように動いてくれない。


(僕は主人公なんだ! この異世界で、僕に従順でエッチな奴隷美少女達に囲まれ、チヤホヤされながら、最高のハーレム人生を味わうんだ! 僕を馬鹿にするゴミ共は皆殺しにして、美少女以外は僕に媚びへつらい、絶対の服従を誓う者だけを下僕にして生かしておいてやる! そうやってこの世界の支配者になるんだ! こんなところで死んでたまるかぁぁ!)


 こんな状況になっても尚、身勝手極まりない欲望を垂れ流しながら、魔物の蠢く島を這いずり回る北村。


 だが、そんな願いも虚しく、北村の目の前に一匹のメスのゴキリオンが姿を現す。


 そのあまりにもおぞましい姿に、思わず後ずさりする北村だったが、メスゴキはそんな彼を一目見た瞬間、島中に響き渡るような大声で叫んだ。


《い、イケメンよ! とんでもないイケメンがいるわ! みんなぁーー! 空から突然、イケメンが降って来たわよぉぉーー!!》


 直後、周囲の至る所から無数のメスゴキが湧いて出てくる。カサカサと高速で近寄ってきたメスゴキ達は、一瞬にして北村の周囲を取り囲んだ。


《キャァァ! 本当に凄いイケメンじゃないのよぉぉー!》


《私を彼女にしてぇー! いえ、結婚してぇーーっ!!》


《交尾しましょう! 今すぐに!》


《いいえ! 私が先よぉぉー!》


(うわぁぁぁぁー! ち、近寄るなぁぁ! あっち行けよぉぉぉ!!)


 大量のメスゴキに囲まれて、北村は身動きが取れなくなってしまう。何とか逃れようと必死に足掻くが、無駄だと言わんばかりに、その体は彼女達に拘束されてしまった。


 全身に無数の脚が絡みつき、そのおぞましい感触にゴキタムラは恐怖のあまり震え上がる。


《や、やだぁ……彼ったら》


《ど、どうしたのよ!?》


《今、チラッと見えちゃったんだけど……。彼のアレ……》


《アレがどうかしたの?》


《とんでもないビッグマグナムだったのよぉぉーー!!》


《 《 《キャァァー!! ス・テ・キーーーー!!》 》 》


 興奮したメスゴキ達は、狂喜乱舞しながら北村の周りを飛び跳ねるように走り回る。そして、我先にと言わんばかりに北村に抱きつこうと、一斉に押し寄せてきた。


(チ、チート能力を覚醒させるんだ! 憑依のスキルはなくなってしまったが、異世界にやって来たのだ! 主人公の僕ならチート能力を獲得しているはず! そしてこの害虫共を皆殺しにしてやる! こいつらを倒しレベルアップを果たした僕は、やがて最強の存在になり、人型のイケメンへと進化して美少女達に囲まれた最高のハーレムを築くんだぁぁぁーー!!)


 大量のメスゴキにまとわりつかれながら、必死の思いでチート能力の覚醒を願う北村。



 ――だが、その時である。



《あんた達待ちな! このイケメンを最初にいただくのはアタシだよ!》


 群れの中でひと際大きな一匹のメスゴキが声を荒らげる。その個体は他のメスゴキ達と比べて一回り以上大きく、よりグロテスクな見た目をしていた。


《大婆さま……。彼は私が最初に見つけたんですが……》


《だからなんだって言うんだい!? 巣に囲ってたオスが皆死んじまってから、もう随分と経つんだよ! あたしゃーもう限界さね!》


《それは……大婆さまが無茶な交尾を繰り返したからでしょうが!》


《だまらっしゃい! 小娘がっ! アタシは激しいプレイが大好きなんだよ!? とにかく、こいつはアタシが最初に頂く! 文句がある奴はかかってきな!》


《ぐぬぬ……。わ、わかりましたよ……。ただし、いつもみたいに壊したりしないでくださいよ? こんなイケメン滅多にいないんですから!》


《心配しなさんな! わかってるさね! アタシとしても、こんな上玉を簡単に壊すなんてことしたくないからねぇ。これから何十年……いや何百年も、末永く可愛がってあげるつもりさぁ……》


《大婆さま、一体いくつまで生きるつもりなんですか……。もう二百歳を優に超えてるでしょう?》


《ハッ! この体が動く限り、アタシの欲は枯れることはないんだよ! さぁーてと、ふぅぅぅ……巣まで我慢できそうもないよ! ここで早速いただくとしようかねぇ……》


 大婆さまと呼ばれたそのグロテスクなメスゴキは、まるで女王のように他のメスを牽制すると、北村の体にゆっくりと近づいて来た。


《おや? その怯えよう……。もしかして初物かい? 安心しな、アタシが優しく抱いてやるからさ。じゅるり……》


(ひ、ひぃっ! た、助けて……。嫌だぁぁーー!!)


《さぁ、大人しくアタシのモノになりなっ!》


 巨大なメスゴキが、北村の体に覆いかぶさる。そして――


(や、やめ! やめてくれっ! それだけは! ……………………あ)


 アッーーーーーー!!


 ゴキタムラの声にならない声が、黒い島中に響き渡った……。




 ――それから数ヶ月後。


 大陸では、黒い島の噂で持ち切りとなっていた。


 なんでも、ただでさえ島中に溢れかえっていたゴキリオンが、ある日を境に、更に大量に増殖してしまったというのだ。


 そのあまりの増えっぷりに、島の管理者であるミステール王国が駆除を試みたが、駆除しても駆除しても数が減らないどころか、逆に増えている始末。


 研究者の間では、余程精力にあふれたオスの個体でも誕生してしまったのではないか、と噂になったが、真相は定かではない。


 結局、島から溢れ出て来たゴキリオンが、ミステール王国の海岸まで大量に流れつくようになり、王国は急遽、宮廷魔導士達を総動員して島を封印する事態にまで発展してしまった。


 結界に閉ざされた島の中で、これからもゴキリオンは増え続けるのだろう。一匹のイケゴキが巣の奥に囚われ続けている限り――。





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Q.異世界に来たけど、北村は女神のギフトやチート能力に目覚めたりしないの?


A.しません。北村はソフィアと同じ非正規のルートで異世界に入ってる上に、そもそもまだ死亡扱いにはなってないので、転生による神様の恩恵もなし。そして、ソフィアのように謎の女性にスキルを持っていけるようにしてもらった訳でもないので、ギフトもスキルもなしです。ただイケメン(笑)なだけですね。

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