第18話 昇格と報奨金

ハルト達は一旦街の入り口へ戻りロンドと合流し、先ほど広場であったことを説明した。

「なるほど。敵は魔族の組織か。大変なことになりそうだな」

「ああ、何故この街を狙っていたのかはまだ分からないが、また襲われると考えていいだろうな。ロンドも用心してくれ」

「わかった。それじゃ旦那たちは宿へ向かってくれ。俺は店の方も心配だから確認してくる。今日はそのまま店で休むとするよ」

「わかった。んじゃまた明日宿の前で落ち合おう」



こうしてロンドと別れ2人(3人)は宿へと向かった。

以前宿泊した小さな宿でなく、街で一番大きな宿だ。

中に入ると壁は石作りで明らかに他の宿とは雰囲気が違った。

案内の人にアモンの名を告げると部屋に案内された。

「こちらのお部屋になります。代金は先に頂いておりますのでごゆっくりおくつろぎくださいませ」

そう言うと案内人の男はその場を去って行った。


これはもう宿というよりホテルだな……。

こんな街でこれ程の宿を利用する人がそんなにいるのか、何故経営が回るのか不思議に思ったが今はそんなことはどうでもいいのでひとまず部屋で休むことにした。


中に入るとベッドは2つ部屋も寝室と別にもう一部屋あり、かなりいい部屋のようだ。

うわー。結構高そう。アモンって魔族結構金持ち?

そんなことを考えながらベッドに飛び込んだ。

「はぁー。今日は色々つかれたー」

すると同じベッドにルナも飛び込んでいた。更に袋から出てきたルシアもハルトの上に飛び乗ってきた。

「ちょ!重い!ベッドはもう一つあるのになんで二人ともこっち来るんだよ!」

「今日はまだあまり構ってもらってないので!」

「私もずっと袋の中だったから」


「はぁ……分かったよ」

二人をなでながらハルトはアモンについて考えていた。

魔族の危険因子が集まった組織の存在を潰すために動いているって感じだったけど。そもそも魔族はなんで人間領を襲うんだ?魔王領で何か起こってるってことなのかな?


ハルトが考えに耽っているとドアをノックする音が聞こえてきた。

『コンコンッ』

アモンの使者が来たと思いルシアを隣の部屋に隠し、扉を開けるとそこに立っていたのはケビンだった。

「あれ?どうしたんですか?」

「あのー。すぐに冒険者ギルドへ来てもらえませんか?」

「はい?」


こうして何故かハルト達は冒険者ギルドに呼び出された。

ルシアには誰か来たら待っていてもらうように伝えケビンと共に冒険者ギルドへ向かった。


中に入ると武骨な人間族の男がハルト達を出迎えた。

「お前が例の新人冒険者か!」

無精ひげに大柄な体格、ライオンのようなぼさぼさの髪、筋骨隆々の体。もはや人間離れしている容姿だが一応人間みたいだ。

「どうも、何故俺らが急に呼び出されたんですか?」

「挨拶が遅れたな。俺はこのギルドのマスターをしているライナスだ。急遽呼び出したのは他でもない。お前らに色々話があるからだ。奥の部屋まできてくれないか?ケビン。マーレ。それとルッツ!お前らも一緒に来てくれ」

5人はライナスに付いていき部屋に入りテーブルを囲にソファに座った。

部屋の外を人払いしてライナスもソファに腰を掛けた。


「話というのは当然今日の事件についてだ」

まぁそうですよねー。いきなりの魔族の襲来。事件の当事者に聞きたいと思うよな。

「お前ら賊のトップとやり合って勝ったそうだな?こいつらでも勝てなかった相手に」

ケビンとルッツは悔しそうな顔をしていた。

「正直な話、ハルトが来てくれなかったら俺らのチームは全滅していたと思います」

「俺もだ。上級冒険者として情けない」

「私はハルトさん達の戦いは見ていませんけど、二人が気圧されるほどの魔力を持った相手を圧倒していたそうですね」


「まぁ。たまたま運が良かっただけです」

「運ねぇ。運だけで上位魔族を圧倒できるってか?」

「炎の魔法を無傷で打ち破ったという話を聞いた。私はそれがなぜ可能だったのか知っている。でも私の口からは言えない」

あー、そう言えば人のスキルを口外しちゃいけないんだっけか。隠す必要もないし言っても問題ないか。

「俺は火に対して完全耐性を持っているみたいで、どんな炎も無力化できる体質みたいなんです」

「なっ!完全耐性?そりゃホントか!?」

ライナスはマーレを見て確認する。マーレは頷いた。


「まさか完全耐性なんて……」

想像以上にライナスとケビンが驚いて黙りこくってしまった。

あれ。このスキルってもしかしてやばい系?

「お前……そのスキルを持っていることを絶対誰にも口外するな。ケビン!マーレ!お前らもこれは絶対他言無用だ」

ええ……。属性耐性ってそんなにすごいスキルなの?チート性能の攻撃系とかじゃないよ?

「あの……耐性スキルってそんなに珍しいんですか?」

「弱体性程度なら稀に持ってる奴はいる。けどな……。完全耐性なんて伝説の英雄王や初代魔王が持っていたとされるおとぎ話の世界のスキルだ。俺も長年冒険者に携わっているが強耐性持ちの冒険者ですらこれまでに一人もみたことがない」


あはは……。健康な体って願いがこれほどヤバイ話になるとは……!

先日工房で火の粉が手にかかったとき暖かいとしか思わず放って置いたらロンドに気味悪がられて火耐性に気が付いた。火傷しない健康な体ってことなんだろうな。神様ありがとう!!

ってあの時は思ったけど、これほど驚かれるとは。


「まぁなんにせよ街に攻め入った魔族を討伐してくれて助かった。これは報酬だ」

そういうとライナスは金貨の入った子袋をさし出した。

受け取り中身を確認すると白金貨が20枚も入っていた。

「えっ!?こんなに!?」

「領主様の命を守り、上級冒険者達でも歯が立たない魔族の討伐。命を懸けて街を守った衛兵や冒険者ギルドに対し貢献を認めて領主様から報酬が支給されたんだ。貢献に見合った量を分配し、更にギルドからの報酬も上乗せしてある。これはお前らへの正当な評価の報酬だ」

「はぁ、ではありがたくいただきます」


「それと……お前ら二人は今日からアダマント等級に昇格させる。実力的にはさらに上の等級にしたいが、流石にギルド本部が黙ってないだろうから俺にできるのはこれが限界だ。それとお前らから何かギルドに要望とかはあるか?」

これはイイチャンスかもしれない。ハルトはいい機会を得たとおもい要望を告げた。

「実は俺の仲間にまだ身分証を持っていない仲間たちが居るんですが、彼らの身元をギルドで保証してもらえないでしょうか?」

「ん?そんなことか?まぁお前らの知りないってんなら別に構わねぇけど。マーレに頼んで今度鑑定してもらうといい。実力を測る試験官はハルトとルナで十分だろう身内ならお前らが試験官として動いてくれ」

ハルトは小さくガッツポーズをした。

これでもの猫達はともかく、ルシアが魔王だと知られても誰にも知られずに済む!


「ありがとうございます。俺からはそれ以外特に何もありません」

「わかった。んじゃこれからも他のんだ。それと今日の襲撃者たちの情報はケビンから聞いているが、例のアモンって魔族に接触して新たな情報が得られたら冒険者ギルドへも共有してもらえると助かる」

「わかりました。ではこれで失礼します」


こうして二人は街の仲間たちの身分証作成も取り付けることができ、臨時収入も確保したので宿に戻る前に例の串焼きを購入し意気揚々と部屋に戻った。

「おーいルシアー?串焼き買ってき――」

そう声をかけながら扉を開けると床に横たわるルシアとその傍に立つ知らない女性が目に入った。

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虚無からはじめる異世界生活 ~最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します~ すなる @sunaru

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