第14話 料理とお酒 

「かんぱーい!」


ルシアの歓迎会も兼ねて街の設立を祝っての宴が始まった。


皆で果実を絞った飲み物でグラスを交わした。

まだ街にまともな料理を出せる者はいないのでハルトやロンドが肉や野菜を適当に焼いたり煮たりしたものをテーブルに並べた。

元猫達やルシアはそんな料理でもとても美味しいとほめてくれた。


「この果実のジュースもうまいんだが、おらぁ酒が欲しいなぁ」

ロンドがハルトの方をちらっと見ながらそうボヤいていた。

以前加護の力で試しにビールを作り出して見たのが、ロンドにはかなり好評だったらしい。


しかしお酒を出そうにも液体としてそこに生成できるだけで、保存が難しい。しかも冷えてない。

毎度酒を飲むときに、日に3度しか使えない加護の力を使うわけにもいかないので検討することにした。


二人が色々話している横でルナとヒナタとレナで肉の争奪戦が繰り広げられていた。

そんな三人をセバスとユキが制止しようとし、マリアは騒々しいことに腹を立てていた。

リンとシンは我関せず食事を続け、ルシアは皿まで食おうとしている。


皆を人の里に連れていけるのは当分先になりそうだな……。

そう思いつつもハルトとロンドは笑いながらその様子を眺めていた。


ひとしきり飲み食いして宴はお開きとなり、夜も更けてきたので各自解散して自室に戻ることとなった。


ハルトはルシアとルナを連れて家に戻った。

ルシアは家が出来るまではハルトの家で預かることとなった。

「あ~!今日は色々驚くこともあったけど皆で囲む食卓はやっぱ楽しいな」

「そうですね♪お肉もありますし♪」

「人の食事は初めてでしたがとても美味でした」

「ふふっ。二人とも満足してくれたみたいでよかった」


でも俺やロンドからすると今日の料理は正直美味しいとはいえないよなぁ。ちゃんとした料理を作れるようにするか、料理ができる人に来てもらうのは必須。

それにロンドの要望だったお酒も俺が気軽に作り出せないとなると街で仕入れるしかないか。

そんなことを考えながら歩いていると寝室の前に着いたので二人に寝る前の挨拶をする。


「んじゃおやすみ二人とも。また明日もよろしくな」

「はい♪おやすみなさい♪」

「おやすみなさーい」


扉を開けようとするとなぜかルシアが付いてくる。

「ルシアさん?なんで付いてきてるの?」


ルシアは不思議そうに首を傾げて口を開いた。

「ハルト様が寝るときに私を抱いて寝るとおっしゃられていたので」


何その勘違いされそうな発言!ハルトは頭をかかえた。

そういや進化する前、そんなことを言ったような……。


ルシアの方を眺める。ルシアは性別も年齢も無いスライム。しかし進化したその容姿はどう見てもルナより年下の少女。

いやいや、こんなルシアと一緒に寝るとかさすがにむりむり!


「えっ?ルシアちゃんご主人様と一緒に寝るんですか!?なら私も――」

「ルシアはルナと一緒に寝てくれないか?」

ハルトはルナの言葉をさえぎってルシアに指示を出した。


「わかりました。ルナ様が今日は私を抱いてください」

「……わかりました」


ルナは納得していないようだが渋々ルシアを抱きしめながら自室に入っていった。


ハルトも自室に入りベッドに横になる。

「はー!久々にゆっくり一人で寝られる~!」


ベッドに横になってハルトは明日からどうするか色々と考えていた。


食糧泥棒事件は無事解決したので生活の基盤をまず安定させるか。

セバスを教師において元猫のユキ達と一緒にルシアにも人の生活を教えてもらおう。

ロンドには住民皆に合わせた魔法性の武具と農具の作成を頼むか。ルシアやマリアは体も小さいし、俺用の道具は使い辛そうだしな。

それとまずはまともな飯と酒か……。

衣と住は充実してる。材料は確保できるんだしあとは食を充実させないとな。


色々と考えているうちにハルトは眠りについた。





とある城にて――


高貴な雰囲気の女性が部屋の窓際に置かれたティーテーブルに1人で座りお茶を口に運んでいる。

その部屋に悪魔のような翼を生やした男が駆け入り女性の前で膝をついた。

「サタナキア様。例の件、間違いない様です」

「わかりました。いよいよですか……。アモン。指揮はあなたにお任せします。支度を始めてください」

「はっ。かしこまりました」

アモンと呼ばれた者は軽く頭を下げると部屋を出ていった。


サタナキアは立ち上がり窓の外の月をを眺めながらこれから始まる戦いを憂いていた。

「こうするしか……」

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