第4話 だが断る
「──断る」
ピシャリと、俺は彼女に言い放った。
「復讐? そんなことをして何になる?」
「……それは、その、わたしを傷つけた分、あの人たちには地獄に落ちて欲しいというか……」
「……はぁ」
地獄に落ちて欲しい、とは。
大人しそうな見かけによらず、物騒なことを言う少女だ。
まぁ、NTRの胸糞悪さが、彼女を一時的にそうさせているのだろう。
「あのなぁ、何があったかは詳しく知らないけど。曲がりなりにも親友と幼馴染だろ?」
「でも──」
「でも、じゃない。物騒なドロドロ話に他人を巻き込むな」
「……ごめんなさい」
しかし、そんなことを言ったところで何も解決しない。またこの子は夜の公園で泣き続けるのだろう。
「復讐しようとか、そういうの考えるのやめてさ──」
だから俺は、そんな彼女の特効薬になりうる言葉をかけてみた。
「まずは自分を選ばなかったことを後悔させるのが先決じゃないのか?」
……まぁ、姉さんからの受け売りなんだけどな。
「たとえば幼馴染が選んだ親友よりも可愛くて素敵な女になったり、幼馴染よりもっと素敵な相手を見つけたりさ?」
当時、姉さんは言った。
人生、やっぱり平和で幸せなのが一番だ、と。
その言葉の表れか、あるいは負けず嫌いな一面のある姉さんだから言えたことだろうか。
その言葉はとにかく姉さんらしく、不思議と俺の心を動かしたものだ。
「……やっぱりお兄さん、優しいんですね」
弱々しいながらも、なんとか笑顔を浮かべる少女。
どうやら今の言葉は
「それじゃあ、復讐の話は忘れてください」
「あぁ、そうする。他に何か無いか?」
できれば物騒なやつじゃなくて、なるべくお手軽なものを頼む。
俺は少し早めに、天の川にお願いしてみた。
「……じゃあ」
すると彼女はもじもじしながら、絞り出すように言葉を紡いだ。
「……その、……も、ちに」
「もち?」
「とっ、友達になってくだひゃい!!」
……とも、だち?
英語では『フレンド』と訳す、俺には縁遠いアレだよな?
「……ぷふっ」
思った以上にちっぽけな頼みだったので、これには思わず吹き出さざるを得なかった。
「……っはは。なんだ、そんなことか!」
「んにゃっ!? わわっ、笑わないでくださいよ!!」
「……だって。さっきと違って、可愛くて」
「かっ、かわっ!? じゃ、なくて! 今のわたしにとっては死活問題なんですよ!!」
死活問題、か。
今まで一人で過ごすことが好きだった俺だから、あまり共感できないけれど。
「わかった。なるよ、友達に」
「ホントですか!?」
「あぁ。これで問題解決だな」
たまには誰かと一緒に過ごすのも悪くないかもしれない。
そんなことを最近思うようになった俺は、彼女のちっぽけな願いを受け入れた。
「あっ、改めまして! 帝徳学園高校、一年の
「帝徳学園高校二年。
「はいっ! ……って、先輩だったんですか!?」
「そうだ。悪いか?」
こうして俺は、1つ歳下の後輩と友達になった。
いつぶりか分からない、久しぶりの友達だ。
「ところで道明寺」
「彩乃でお願いしますっ!」
「じゃあ、……彩乃」
少し照れくさく感じながらも、彼女の名前を口にしたその後。
「──友達というのは、何をすればいいんだ?」
俺の疑問に、彩乃は「さぁ?」と返した。
【あとがき】
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次回から、甘々。
今後、彩乃ちゃんを泣かせた相手へのざまぁもあるます。がんばるます。
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