第3話 涙の真実②
※ちょっと胸くそ展開かも知れません。
つくしくん(主人公)みたいにNTRへの耐性が無い方はご注意ください。
○
──はい、これ! こんにゃくゆびわ!!
──こんにゃく?
──そう! それ! 婚約!!
10年前の朝10時。とある公園にて。
これは、わたし──
お祭りで貰った
ルビーのような石の指輪はわたし。
サファイアのような石の指輪は
──これでわたしたち、ずーっと一緒だよっ!!
小学校に入るよりもずっと前から、わたしは幼馴染の彼に恋をしていた。
……初恋だった。
かっこよくて、優しくて、わたしと違ってたくさん友達がいて。
ちょっとナルシストなところが
──なぁ、僕たち付き合わないか?
そんな初恋が成就したのは、高校に入ったばかりの頃。
思いがけないことに、彼から告白してきたのだ。
想いを伝えられずに長年尻込みしていたわたしの恋が、ようやく報われた瞬間だった。
──うそっ!? アンタたち付き合うことになったの!? 良かったじゃーん!!
ついに叶ったわたしの悲願。
それを一人の少女が、自分の事のように喜んでくれた。
陰キャでコミュ障で引っ込み思案なわたしにできた、初めての友達。
中学の頃から仲良しの、唯一の親友だった。
彼女はいつもわたしを妹のように可愛がってくれた。
楽しいことがあったら一緒に楽しんでくれて、辛いことや悩みがあったらすぐに相談に乗ってくれた。
わたしと違って他に話す人がいて、彼女が他の子のところに行く瞬間はちょっぴり寂しかったりするけど。
それでも花蓮ちゃんと一緒にいる時間は、一人でいる時間の多いわたしにとってオアシスみたいなものだった。
……そう、あの時までは。
──なぁ、良かったら僕の家に来ないか?
──えっ?
ある日、思いがけない誘いを彼から受けた。
──その日、親がいなくてさ。せっかくだから、その、……お前と家で一緒にいれたらいいなと思って。
照れながら、なんとか紡がれた彼の言葉。
その一言一言が嬉しくて、愛おしくて。
──うん。……分かった。
返事をしたわたしは、高鳴る胸を押さえるのに必死だった。
ニヤけてないかな? 気持ち悪い顔してないかな?
そんな不安が頭を
──えっ、家に誘われたって。それってもしかして!?
もちろん、花蓮ちゃんにもすぐ話した。
そしたら赤面して、色んなことを捲し立てた。
──下着は? ゴムは? てか、アンタたちどこまで行ったの!?
よく分からなかった疑問の数々。
けれど意味が分かった瞬間、思考回路が焼き切れた。本当に顔から火が出るかと思った。
……そして、迎えた当日。
それまでわたしは、色んな準備をした。
服装はどんな感じがいいのか? 彼氏の家ではどういう風に過ごせばいいのか?
エッチなことをするタイミングは? そもそもエッチなことって、どんなことをするの?
とにかく頭の中は桃色で、ずっと彼の顔が浮かんでいた。
──……おじゃましまーす。
もしかしたら家を空けているかも、と言われて、彼に渡された合鍵。
それを使って、わたしは彼の家に足を踏み入れた。
わたしを快く出迎えられるようにと、キレイに整えられた玄関。
昔はそんな感じじゃなかったのにと、クスリと笑った次の瞬間だった。
──……えっ?
女の子の靴。しかも、見覚えのあるスニーカーだった。
──……なんで?
なんで? 花蓮ちゃんの靴があるの?
もしかして、今日はデートじゃなかった?
わたしの早とちりだった?
彼は『お前と一緒にいれたら』って言ってたけど、もしかしたら花蓮ちゃんが帰った後の話なのかな?
色んなことを考えながら、わたしはゆっくりと廊下で歩みを進めた。
徐々に大きくなる花蓮ちゃんの声を頼りに。
だけど扉に手をかけた瞬間、異様な声が聞こえてきた。
──ちょっ、あんっ、……もぅ、やだぁ。
その声はどこか聞き慣れないもので。だけど間違いなく花蓮ちゃんのもので。
なんというか、妖艶で生々しい雰囲気を纏っているように聞こえた。
──花蓮ちゃん!?
何事かと思い、わたしは扉を勢いよく開けた。
その瞬間だった。
頭が、真っ白になったのは……。
──……えっ?
白いソファの上に、上裸の男女が二人。
目に見えた屈強な肉体とピンクの下着を前に、わたしは固まることしかできなかった。
──……花蓮ちゃん? 星成くん? 何、してんの?
怒りなのか、悲しみなのか。分からない。
だけど声も身体も、確かに震えていた。
──えっ? 何って? そっちこそ、何?
──……えっ?
花蓮ちゃんからは、やや怒りに満ちた声が聞こえてきた。
何を、言ってるの?
──てか星成、どういうこと? コイツが来るなんて聞いてないんだけど?
なんで? なんでそんなこと言うの?
だって花蓮ちゃん、わたしが星成くんの家に行くこと、知ってたじゃん?
──あっ、もしかして二人って、そういう関係だったの? ……ははっ! ごめんね? 私、知らなかった!!
なんで!? なんでそんなこと言えるの!?
だって花蓮ちゃん、わたしが星成くんと付き合うって知って、自分の事のように喜んでたじゃん!
──……ねぇ、星成くん。何か言ってよ?
しかし返答は、一切なかった。
──あーあ、二股かぁ。星成も罪な男よねぇ〜?
同情を促すように「ねぇ?」と問いかける花蓮ちゃん。
──まぁ? アタシは星成が二股しようが、セフレを作ろうが、全然気にしないんだけど?
彼女の下卑た目は、悪魔のような微笑みは、わたしの脳から一生離れない呪いとなった。
だけど、呪いはこれだけじゃなかった……。
──ねぇ、星成。この陰キャ、どうすんの?
──……あぁ。このブスか?
陰キャ? ブス?
なんで、そんなこと言うの?
──そりゃあ別れるよ。僕は花蓮を一途に愛するって決めたからな?
なんで、なんで?
──そういうことだ、ブス。帰ってくれ。
──……なんで?
──なんで? あぁ。『なんでわたしみたいな陰キャでコミュ障なブスと、学校で一番イケメンの僕が付き合えたか?』って?
彼の放った、あの言葉。
──そりゃあ、ブスのお前のステータスになってあげようと思っただけだよ。
それは、わたしの涙腺を壊す、呪いのトリガーとなった……。
──まぁ? これからはお前のセフレくらいになら、なってあげてもいいけど? お前、乳のデカさだけは一丁前だし?
──…………。
──欲しかったんだろ? お友達。この僕がなってあげるって言ってんだけど?
──……うぅっ。
──あーあ、星成が女の子泣かせた〜。
──は? 嬉しくて泣いてるだけだろ? それに、イイ男は女を泣かせるもんだろ?
──やだぁ、なにそれ〜。ねぇ、それより早く続きしよっ♡
鼓膜を震わす、生々しい声。
心の傷に染み込む、生暖かい呼吸。
わたしは耐えることができなくて、立ち上がることができなくて。
ただ、すすり泣くことしかできなかった。
──……うぅっ。どうして。
それ以来、わたしは泣くことしかできなかった。
夜10時。彼との思い出の公園で。一ヶ月も。
──どうした? 話聞こうか?
そしてその一ヶ月間、涙を流すわたしに何度も話しかける優しい声があった。
星成くんには無かった、わたしを安心させてくれる優しい声だった。
──俺なんかで良ければ、何か手伝えないかな?
声の主は、わたしにそんな言葉をかけてくれた。
星成くんよりも背の高い、おそらく歳上のお兄さん。
怖い人から見知らぬわたしを助けてくれた、頼り甲斐のあるお兄さん。
そんな彼に、わたしは思い切ってこんなことをお願いした。
──じゃあ、わたしの復讐を、手伝ってくれますか?
……彼の返事は、『No』だった。
【あとがき】
すみません、胸くそ展開にし過ぎました……。
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