第12話 ペナルティ。

ここで男はある事に気付いた。

国王や兵士達は、ブランドの態度に意見をしたカインに、「よく言った」と思っている事がイリゾニアには書かれていたが、ブランドとパールについては何も書かれていない。

ライムは「そうなるのも仕方ないわね」と心情が書かれている。

ブランドとパールは口にしてから初めて心情が書かれていた。


「…イリゾニアの人間と、外からきている人間の違いか?」


そうなると自分とパール、そしてブランドがイリゾニアの人間ではないとなる。


ブランドは何を思ったのか慌てている。

恐らくだが、何を言ってもイリゾニアの登場人物である、カインやライムは自身を裏切らない。何を言われてもヘコヘコと頭を下げて、お願いをする形で着いてくると思ったのだろうか?


だがここで甘やかせば良くないのは明白。

恐らくだがイリゾニアも今慌てているだろう。

それくらいブランドの存在は異質だった。

そこら辺の兵士よりも弱い戦闘力。尊大で無礼な態度。それなのに、それらを認めずにカインを貶めようとするプライドの高さ。これで本来ブルガリが行う冒険をどうやってやり遂げることが出来るのだろうか?


考え方を変えれば、自分とパールとブランドがある種好き勝手に物語を台無しにしている。

なんとか軌道修正をする必要があるのだが、パールは「そうね。私も勇者ブランドと同意見よ。魔物かも知れない人とはとても共に戦えません」と言い出し、ブランドは慌てながら、「嫌だが我慢してやるから、お前は俺様の下僕として着いてこい」と言う。

だが、男はカインとして「多数決しませんか?パールさんも反対、ブランドも反対ですよね?僕も反対です。ライムさんは?」と提案をすると、パールはうんうんと頷いて、「ブランド、3人で頑張りましょう」と言い、ブランドはカインが抜けた時の戦力低下を不安視して「え…、あ…」と言い出す始末。

そこにライムが、「私もこの4人のパーティは反対だ。なので私はカインと行動を共にする。そちらも2人、こちらも2人なら問題あるまい?」とトドメを刺すと、ブランドは気になることを言った。


「カインの魔法力がなかったらどうやって海底洞窟に行くんだ!?」


それはイリゾニアを読んだことのある者しか知らない事。

この場でそれを言うと世界が滅びかねない。

男は1人慌てたが、世界は壊れなかった。


皆イリゾニアの指示で、ブランドの言葉をスルーしていた。

だがブランドだけにはペナルティが用意されていて、不思議なことが起きたブランドは目や鼻から血が吹き出るほどの激痛に5分間苦しめられて元に戻っている。


顔面血まみれで「な…なんだったんだ?」と驚くブランドに、パールは魔王の攻撃を疑い、魔王の攻撃と聞いてブランドはカインを疑う。

男はカインとして「今の事が攻撃だったとして、なんでブランドなんですか?この前の戦いで戦果を残したのは僕ですよ?」と言うと、ブランドは「俺様こそが聖剣レイザーイを振るえるからだ!お前はそれが邪魔な魔王の送り込んだ手先だ!」と言い返し、真っ赤な顔で「いいか!?俺はこのパールとむす…」と言いかけたところで、再度ペナルティで苦しむ。


イリゾニアの外で男は「成程、ネタバレのペナルティがあるのか」と納得をする。

口に出さずに偶然を装えばセーフだが、ブランドのようにまだ誰も知らない情報を口にすると、イリゾニアの防衛で人々はその言葉が耳に届かずに、話したブランドは激痛に襲われる事を理解した。


苦しみが終わったブランドに、「僕はライムさんと進みます」と言い、ライムも「それがいいみたいね」と返す。


ブランドはぶつぶつと不満を口にしながら路銀を受け取り、パールと共に旅立っていく。


心配そうに後ろ姿を見るデイドリー王に「ご安心ください。あくまで背後からついて行きます。ただ万一がありますから、陛下の方からも監視をお願いします」と言った。

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