第2話 なぜなのか

「冬山君に告白された!?」

 メロンソーダを吹き出しそうになりながら、亜紀は叫んだ。

 美玲は昨晩あった珍事を亜紀に相談するため、放課後、ファミレスに来ていた。

「声がでかいっ!」

 亜紀に紙ナフキンを手渡しながら、美玲は慌てた。そして、学校から一番近いファミレスに来たことを、後悔した。

「なんでいきなりそんなことになってんの!?」

「私にも何が何だかわからん!」

「てか、幼馴染に告白されるとか、少女漫画かっ!羨まし!!」

 亜紀は目をキラキラさせながら、悶えた。

「ちょっと待って、私は困ってんの!」

「なんで?いいじゃん幼馴染」

「よくない!」

「それで?なんて返事したの?」

「…してない」

「え?」

「逃げられた…」

「はぁ?」

 

「好きだよ」

 昨晩、いきなりのことに放心状態になっている美玲を放置して、誠は帰っていってしまった。

 美玲は意識を取り戻したあと、我に返った。

 なんだったんだ今のは。え、告白?な訳ない、ない。またふざけているんだ、きっと。また、私にちょっかいかけて面白がっているんだ。……てか、

「てか、私に逃げさせろ!?」

 美玲は一人、部屋で叫んだ。


「言い逃げされたかぁ…」

「はい…」

「今日は、一回も会ってないの?」

「会ってないよ、気まずい」

 私も避けてるし、多分あっちも避けてる。

「なーんで今更告白なんかしてきたんだか…」

 わからん。元からすっとぼけた奴だが、ますますわからん。

 美玲は頭を抱えた。

「で?付き合うの?」

「付き合う訳ないじゃんっ!」

「え、なんで?」

「え、逆になんで付き合うと?」

「逆になんで付き合わないの?」

「え、ちょっと待って、私別に誠のこと好きじゃないよ?」

「そーなの?」

「そーだよっ」

 そして、これには超大問題が一つあった。

 亜紀は、あることを思い出した。

「冬山君ってさ…、今彼女いるよね?」

「そーなんだよっ!」

 誠はあろうことか、彼女がいるにも関わらず、美玲に告白したのだ。

 誠は中学から今まで、彼女が途切れたことがない。そして、付き合うのはいつも、学年や校内一の美人や、他校の美人。とにかく、誠の歴代彼女は、美人だった。

「そういえば、冬山君の今の彼女って、めっちゃ普通の子じゃなかった?」

「そうだっけ?」

「うん、冬山君の同じクラスの子だよ」

「へー」

 美玲には心底興味がなく、アイスティーのストローを啜った。

「あー、もうどうしようっ」

 美玲はテーブルに頭をゴンと落とした。

 あいつは彼女のことを、どうするつもりなんだろうか。あの告白は本当だったんだろうか。

 美玲の頭の中は、もうぐちゃぐちゃだった。

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