なぜなのか

「冬山君に告白された!?」

 メロンソーダを吹き出しそうになりながら、亜紀は叫んだ。

 美玲は昨晩あった珍事を亜紀に相談するため、放課後、ファミレスに来ていた。

「声がでかいっ!」

 美玲は慌てて亜紀に紙ナフキンを手渡した。そして、学校から一番近いファミレスに来たことを後悔した。

「なんでいきなりそんなことになってんの!?」

「私にも何が何だかわからん!」

「てか、幼馴染に告白されるとか、少女漫画かっ!羨ましぃぃぃ!!」

 亜紀は目をキラキラさせながら悶えた。

「ちょっと待って、私は困ってんの!」

「なんで?いいじゃんイケメン幼馴染」

「よくない!」

「それで?なんて返事したの?」

「…してない」

「え?」

「逃げられた…」

「はぁ?」

 

「好きだよ」

 昨晩、いきなりのことに放心状態になっている美玲を放置して、誠は帰っていってしまった。

 美玲は意識を取り戻し、我に返った。

 なんだったんだ今のは。え、告白?な訳ない、ない。またふざけてるんだ、きっと。また私にちょっかいかけて面白がってるんだ。……てか、

「私に逃げさせろ!?」

 美玲は一人、部屋で叫んだ。


「まさかの言い逃げかぁ…」

「はい…」

「今日はまだ一回も会ってないの?」

「会ってないよ、気まずいし」

 私も避けてるし、多分あっちも避けてる。あんなこと言われた後なのに、まともに顔なんか見られるかっ。

「なーんで今更、告白なんかしてきたんだかねぇ」

「ほんとーうに、わからん」

 元からすっとぼけた天然バカ野郎だが、ますますわからん。

 美玲は頭を抱えた。

「で?付き合うの?」

「付き合う訳ないじゃんっ!」

「え、なんで?」

「え、逆になんで付き合うと?」

「逆になんで付き合わないの?」

「え、ちょっと待って、私別に誠のこと好きじゃないよ?」

「そーなの?」

「そーだよっ!」

 そしてこの件には、超大問題が一つあった。

「ん?そういえば冬山君ってさ、今彼女いたくない?」

「そーなんだよっ!」

 誠は事もあろうか、彼女がいるにも関わらず、美玲に告白してきたのだ。

 誠は中学から今まで、彼女が途切れたことがない。別れたと思えば、一ヶ月も経たづに新しい彼女ができていた。そして、付き合うのはいつも、学年や校内一と謳われる美人や、他校の美人。とにかく、誠の歴代彼女は美人だった。

「そういえば冬山君の今の彼女って、めっちゃ普通の子じゃなかった?」

「そうだっけ?」

「うん、冬山君の同じクラスの子だよ」

「へー」

 美玲にとってそれは心底興味がないことで、アイスティーのストローを啜った。

「あー、もうどうしよっ」

 美玲はテーブルに頭をゴンと落とした。

 あいつは彼女のことをどうするつもりなんだろうか。あの告白は本当だったんだろうか。

 美玲の頭の中はもう、ぐちゃぐちゃだった。

「てか私、今は恋愛とか彼氏とか、どーでもいいんだよなぁー…」

「もったいないなぁ、美玲可愛いのにぃ〜」

 そう言いながら亜紀は、美玲の頬をぷにぷにとつついた。

 私は推しに恥じぬようにと、中学生の頃ぐらいから自分磨きを始めた。スキンケアにヘアケア、ある程度のメイク技術を身に付け、体型にも気を使うようになった。すると、有り難いことに周囲の人達から、可愛いと言ってもらえるようになった。全ては推しのためなのだが。

「私には、推しさえいればいいんだもん…」

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