第3話 二人との亀裂
今日からは一人の登校だ。なんてなんとなく気合いを入れて家を出たのに、なぜ私は今隣の席の男子と登校しているのか。
二人に会わないように普段より早く家を出て5分後
紫陽「泉香ちゃん!今日はおひとりですか?」
この男に話しかけられてしまった。
そしてそのまま一緒に登校してしまっている。
泉香「私、二人には新しく出来た友達と登下校するって言ってあるからこの感じだとあなたと登下校する約束をしてるみたいになっちゃうんだけど」
紫陽「二人って?あーあの良い人そうな男の子と杏璃ね。じゃあ下校も一緒にしちゃうか」
泉香「やだよ。なんでそうなるの」
紫陽「だって本当は一緒に登下校する人なんていないんでしょ?俺がその嘘に付き合ってあげるよ」
泉香「なにそれ。普通はなんでそんな嘘ついてるのとか聞くんだよ」
紫陽「だって知ってるもん。嘘ついてる理由なんて」
泉香「は?なんで?」
紫陽「楓くん?が杏璃のこと好きだからでしょ。てか二人の関係に気づいたとか?」
泉香「なんでそんなに二人に詳しいの?」
紫陽「んーやっぱ夜って口が弾んじゃうんじゃないかな?」
泉香「夜?あんたまで杏璃とそういう関係なわけ?」
紫陽「泉香ちゃん、みんなから見られてるよ」
紫陽に半笑いで言われて、いつの間にか学校が目の前で生徒が周りにたくさんいたこと、私の声のボリュームがまあまあ大きかったことに気づいた。学校でこの話はできない。聞かれてしまったら杏璃と楓の評判を落とすことになってしまう。
泉香「続きは帰り。いや、お昼」
紫陽「お昼ご飯まで泉香ちゃんから誘われるなんて嬉しいなぁ。それにしてもお昼まで二人と離れちゃうんだ?」
泉香「徹底的に二人から離れることにしたの。そういえば、ずっと言いたかったんだけどその気持ち悪い作り笑いやめて。私の前でまで表情なんて作らなくていいから」
下駄箱に靴をしまいながら振り返って私はそう言った。
紫陽「俺の人気の秘訣はこの笑顔なんだけどなぁ。まあ嫌ならやめるよ。二人の時はね」
急に冷たい目で顔を近づけて話されて私は不覚にも怯んでしまった。それを隠すように
泉香「そっちの方が好みだよ」
なんて笑いながら言ってみたけど、なんだか私じゃないみたい。まるで杏、、
紫陽「なんか今の杏璃みたいだね。君もそういう系なんだ?」
また言い返しそうになったのを抑えて無言で教室に向かった。教室に着くまでにも無駄に紫陽に話しかけられたがほとんど無視して歩き続けた。
紫陽「ねぇねぇ俺たちあの二人のことしか話すことないのぉ?」
泉香「ないでしょ。逆に話したいことでもあるわけ?」
呆れて反応してしまった。
紫陽「んー、俺は泉香ちゃんのこともっと知りたいな」
泉香「あっそ」
紫陽「ねぇ質問していっていい?」
泉香「好きにすれば」
何でこんなふうに返してしまったのか、聞いていいと言ってるようなものじゃないか
紫陽「じゃあさ、なんで俺にそんな冷たいの?二人と話してる時は大分雰囲気違うし、なにより聞いてた印象と全然違うんだよね」
泉香「聞いてた印象ってなに?私はあなたと話す時に冷たいんじゃなくて、あの二人以外と話す時に冷たいの。もう良いでしょ、昼も話すんだから」
教室についたので話を終わらせようとすると
紫陽「待って、あと1つずっと気になってたんだけど、俺のこと紫陽って呼んでよ」
泉香「わかったよ、紫陽。昼休みは屋上で待ってるから」
紫陽「了解」
満足したような顔で紫陽が笑った。いつものうざい笑顔ではあったけど、今回のはそんなに嫌じゃないかもしれない。
昼休みになって楓と杏璃がお昼を教室に誘いに来た。それを見た周りがなんだか言っているが別に気にするものじゃない。
泉香「ごめん。ご飯も食べる人いるんだよね」
杏璃「そっかぁ、じゃあ二人で食べるかぁ」
紫陽「ごめんね、今日から泉香ちゃんは俺と食べるんだよね」
紫陽が急に現れてそんなことを言った。杏璃が今まで見たことの無いような冷たい目をしていることに気づいた。それに楓が何か話しかけて来そうだったので
泉香「もう時間なくなるから行くね」
私は紫陽の手を掴んでその場を立ち去った。
紫陽「手、繋いだままでいいの?」
そう言われて焦って手を離した。それから屋上について私が持っている鍵を使って中に入った。
紫陽「なんで鍵持ってるの?」
泉香「秘密」
紫陽「えー、俺はこれから泉香ちゃんに色々話してあげるのに。あ、あの楓って奴との密会に使ってたとか?」
泉香「密会なんかじゃない」
紫陽「やっぱ会ってたんだ」
泉香「もうその話はいいから、杏璃との関係を教えて、杏璃が夜出歩いてるのは何か関係あるの?」
紫陽「夜出歩いてるのは知ってるんだ。俺はただ夜遊び中に偶然会っただけ。まあ友達の友達くらいの感じだよ。杏璃が夜何してるか知りたいなら見た方が早いんじゃない?俺と今日の夜出かける?」
泉香「友達の友達でそんなに仲良くなるものなの?それに夜出かけて杏璃に会ったらどう説明するの」
紫陽「まあ夜遊び友達って特殊じゃん?大丈夫だから今日行こう。ほらもうチャイム鳴るよ。俺はちょっとサボっていくから」
そう言って紫陽は鍵をもらって私を屋上から出した。教室に戻る途中で楓に話しかけられた。
楓「俺らのこと断ってまで一緒にいる友達があいつかよ」
泉香「なんでキレてるわけ?杏璃と二人にしてくれてありがとうって言って欲しいくらいなんだけど」
楓「俺はそんなの頼んでない。俺はお前とも、、」
楓の言葉を遮って私は
泉香「楓が杏璃を好きになったのは知ってる。元々私が好きだったのにそこから杏璃に乗り換えたってことも。もうどっちつかずはやめた方がいいんじゃないの」
楓はびっくりした様子だった。まあ当たり前の反応だ。楓に対してこんなにきつい言い方をしたのは初めてだから。それでも私は後悔したところなんて見せないように早歩きで教室に戻った。
私だけがいないハッピーエンド ボブジョンソン @bobjohnson
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。私だけがいないハッピーエンドの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます