第5話 「ハルトの正体」

「ちょっといいかい?」

 ん、なんか妹のことを呼んでるな。

「な、何か用ですか?」

 俺はここで待ってるから行ってきな、大丈夫どこにも行かねえから。


「さてお嬢さん質問いいかな?」

「何でも聞いてください。」

 じゃあまず君は家出をする前にどんなことをされてきたんだい?

「わ、私はいろんな家を転々としてきたからあまり信用されていなくて。掃除洗濯料理のすべてをやらされて何か一つできなかったら暴力を受けていたんです…そのせいかつはまるで奴隷どれいのような感じがしました。」


 なるほど君はそのようなひどい仕打ちを受けたんだね、だからここに逃げてきたという事かい?

「いいえ、路頭ろとう彷徨さまよっていた時にたまたまお兄さんのお母さんが見つけてくださったんです。」

 タツヒロのお母さんが見つけて君を招いたと。


 じゃあここに来る前の人はどんな感じだったんだい?

「さっき話したのと同じです。」

 そうか、それは許せないな。他人の家に首を突っ込むなとは言われそうだが僕にも協力させてほしい。

 そうだ、君にはこれをに持っていてほしい。

「分かりました、ありがとうございます。」


 分かってくれたならいい、さあ彼の部屋に戻ろうか。僕みたいな他人と一緒に居ても困るだろうからね。

「そんなこと…ありません!それにハルトさんがいなかったら今頃どうなっていたか私にもわかりません。」

 ハハハッ!そうかそうか、君がそういうなら僕も気づいてあげられてよかったよ。


「遅くなってすまないねって寝てるよ。おーい君は風呂に入らなくていいのかい?」

 んあ?あれいつのまにか寝てたわ。おこしてくれてありがとな、じゃあ俺は風呂に行ってくるわ。

「あぁ、僕はこのことしばらくお話しておくよ。」

 好きにしてくれ、俺はちょっとゆっくり浸るわ。


 さて僕がさっき渡したものを覚えているかい?

「はい、これですよね?」

 それについて説明していなかったから今するけど、もしかしたら君がさらわれるかもしれないからそれの対策のためのアイテムさ。

 大分簡易的だけど所持者の位置がわかるのだよ。


「このような技術この国では絶対に見かけません、あなたはどこから来たのですか?」

 僕は遠い大陸から来た人だって思ってくれたらいいよ。

 ちょっと大陸の名前は忘れちゃったけど諸事情でこのアスパル大陸に来たってことにさせてくれないか?


「い、嫌です。お兄さんのことは詳しく聞いたのにあなたのことは詳しく聞かされてません。」

 はあ、いいのかい?君は禁忌きんきに触れることになるよ?

「私はこの体に何が起ころうと問題ありありません!」

 君がそういうなら話そう。


 僕が誕生した時にはすでに国として崩壊していたところだ。

 まあ言ってる意味わかんないと思うからわかりやすく説明すると僕自身はただの古代兵器だ。

「え?でも見た目は私たちと同じ人間ですよね?」

 そうそこが問題なんだ、この体自体が古代兵器なんだ。とても不便だろう?


「私は…不便だとは思いません、もしあなたが別の物だったら今こうして出会えてないでしょう?」

 そういわれたらそうだね、でも生身の体じゃないんだよね。だから誰かに刺されても死にはしない。

「あなたも私みたいにいろいろ苦労したのね。」


 君ほど苦労したわけじゃないがまあ苦労したって言えばしたかな。

 だからこそ今の状況下に置かれている君を見過ごすわけにはいかないんだよ。

「でもまだあなたの出身地を聞いてないです。」

 まだ聞き足りないのかい?仕方がないな、僕は大昔のこの大陸出身だ。

 今まで嘘をついてて悪かったね、こうして君にすべてを話したが君はちゃんと約束を守れるよね?


「も、もちろんです!私は禁忌に触れましたからどんな責任も取れます!」

 じゃあ今から僕を使いこなせるかシュミレーションしてみよう。今からその空間を用意しよう。

「わ、私にそんなことできるの?」

 もちろんだ、さあ目を閉じて深呼吸をするんだ。そうすればシュミレーション空間に入れる。


「ここがシミュレーション空間ですか?ハルトさんはどこへ?」

 僕は君の周りをフヨフヨしてる物だよ。ここでは君の想像したものを僕が出すことができる。

 さあやってごらん、そう難しくはないよ。


(まずは私が欲しいものを考えてみよう。私はあのゴミどもを殺せる力)


 さあ君が欲しいのはこれだろう?

「これは…なんですか?」

 僕がいた国ではかなり主流の武器の銃だ、これは遠距離でも人を殺せる。

(これこそ私が求めていた至高のアイテムだわ!)


 お嬢さん、恐ろしいことを考えているようだねえ。

 君にはちゃんと適性があったようでよかったよ、じゃあシミュレーションはこれで終了だ。


 やっと起きたのか、もう朝だぞ。ったく風呂から上がったらお前ら寝てるもんだからビビったぞ。

「タルヒロ兄さん、ごめんなさい。」

 なぜ謝る必要があるのだ?いや俺も言いすぎたかもしれないな。


「そろそろ僕を元に戻してくれないか?僕とタツヒロは今日も学園に行かねばならないのだよ。」

 どこからかハルトの声がするぞ、一体どこにいるんだ?

「あ、ごめんなさいすぐに戻します。」

 一体何の話をしてるんだ、俺が知らない間にすげえ仲良くなってやがるぞ。


「ふうやっと元に戻れたよ。さ、一緒に行こうか。」

 いや飯がまだなんだけど何も食わず行く気か!?

「そうかまだ食事を済ませてなかったようだ、すっかり忘れていたよ。」

 誰しも忘れることはあるさ、さっさと食って行こう。


 今日もいつも通りのパンに野菜だ、これ美味いから飽きないんだよなあ。

「僕の代わりに誰かこの緑色の物体を食べてくれないか?」

 なんだお前野菜嫌いなのか?なら俺が食べてやろう。

 じゃあそのかわりに今日の昼めし奢ってくれよな?

「ハハッ、もちろんさ。得体えたいのしれないものを食べてくれたんだそれくらいはしないとな。」


 よし食い終わったしそろそろ行こうぜ、また遅刻したら今度こそ先生に説教されるぞ。

「おいおいそうかすなよ、僕にだって荷物の準備があるんだ。」

 まだ準備できてねえのか、じゃあもう少しだけ待っとくよ。そこまで時間がないわけではないからな。


「いやあすまないねちょっと準備が遅くなったよ、もう行ける準備はできたかい?」

 そりゃ当たり前だろ、お前より先に準備してるんだからな。

「そういえば今日はどんな授業内容なんだい?」

 それはお前が直接確認してくれ、俺が知ってると思うのか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る