第6話 「平凡な日」

 俺らの家から学園まで結構近いからいいよな。

「そうだね遅刻しかけても走れば間に合うからね、あと突然で申し訳ないけど誰かが尾行してる気がするんだよね。」

 笑顔でそういわれると逆に怖いんだが?

 でもそれは尾行じゃなくてただほかの人が歩いてるだけなんじゃないのかね?


「ただ歩いてるってだけじゃないよ、物陰に隠れながらこそこそ歩いてるんだ。君も不自然だとは思わないか?」

 たしかにこそこそと歩いてるんだったら不自然ではあるな。

 しかし俺らを尾行するやつっていったいどんな人間なんだろうな。俺を襲ってもなんも出ないのにってね。


「そうかな?君は少なくととんでもない武器を持ってるじゃないか、それを狙って君を襲撃するやつもいるかもよ?」

 あんなもの奪って何の得になるんだよ、てかもう学園に着いたな。

 意外と話しながら行ってるとすぐ到着するものなんだな。

「もともとそんなに距離がないからね、余計早く感じるのかもしれないね。」


 ただ教室までが長いんよな、たしか22階だったもんな。

 もうちょっと下の階層にしてくれてもよかったのにな、でもちょっとした運動になるからいいか。

「いや何を言ってるんだい?ここにテレポート装置があるじゃないか。まずここでどこに行くか選択して入るだけさ。」

 その装置あるなら早く言ってくれよ、わざわざ階段使って登ったのが馬鹿馬鹿しいじゃないか。


「おや?君は下見したって聞いたんだが違ったか?」

 したけどそこまで見てなかったわ不覚!

「学年一の怪力のカズユキを倒した人じゃない?」

「聞いた話によると私たちのクラスメイトが脅しにあってたらしいよ。」

「うわあ脳筋なだけでやってることクズじゃん。」

 なんかあいつぼろくそに言われてるな。


「これで君の印象はかなりいい方だと思うよ。」

 印象は確かによくはなったが、ちょっとうるさすぎる気がするな。

「ま、こういう話題はすぐに終わるさ。」

 それだといいんだがな、でもずっと言われ続けても困るし今日でこの話題は終わってほしいな。


「あの、もしかして私を助けてくれたのはあなたですか?」

 この前の人がハルトに話しかけてる。

「いいや助けたのは僕じゃなくて隣にいる彼だ。」

 おいおい余計なこと言うんじゃない、俺はただ行動しただけだぞ。

したのは事実じゃないか、だから君が感謝されるべきだよ。」


 確かに行動したな、お前がそこまで言うならいいか。

「ちょっとだけお話していいですか?」

 ん?もちろんさ、長ったらしい話ではない限り全然問題ない。

「じゃあ一緒に廊下に行きましょう。」

 ここでは話せないことなのか?彼女が気にするなら俺はそれについていくだけだしな。


 話しとはいったいなんだ?手短に頼む。

「ただ、昨日のことで感謝をのべたくて。あと自己紹介が遅れました、私はカリンです。」

 昨日のことか俺は当たり前のことをしたまでだ。俺の名前はタツヒロだ、お前のことは…カリンさんと呼べばいいのか?

「はいそれで大丈夫です。そして先日は守ってくれてありがとうございました。」


 どういたしまして、あと気になったんだけどさ俺たちクラスメイトだからさお互い敬語はなしで行こうぜ。

「タツヒロくんがそういうならこれからは敬語を使わないようにするわ。」

 俺は堅苦かたくるしいのが嫌いだからな、やっとまともに会話ができそうだ。

「それじゃ教室に戻りましょ。」

 そうだな、もうすぐ始礼があるからな。


「ずいぶんと早く話を終わらせたんだね、あと言っておくけどまだ始礼じゃないよ。」

 なんだよまだ始まらないのか、あの子には悪いことをしたな。

「でも長く話して間に合わない方がダメな気がするけどね。」

 ふっ、お前の言うとおりだな。


 とはいってもさ今日は何をやるか書いて無くね?

「どうせ先生が言ってくれるさ。でも今日一日乗り切れば休暇があるからだいぶ楽だとは思わないかい?」

 そうか俺たちは最初は長い休暇で何かをやるんだったな。

「何かをじゃないよこれからこのクラスで一致団結して林間学校とやらがあるみたいだ。」

 ウソだろ!?まだそんな季節じゃないと思ったんだがな。


「ちゃんと配られたものを見たのかい?行事一覧に書いてあったよ、僕たちは入学してすぐにクラスの人と仲良くやろうって理由ですぐに合宿があるって。」

 完全にそこだけ見るのを忘れてた。


「みんなおはよう、さっさと挨拶をして話を始めようじゃないか。」

 相変わらずのば先生はドアの音もしてないのにどうやって入ってきてるんだ。

 しかしこの先生、何回見ても美しいなと思ってしまう。

「まあ挨拶は一切聞こえなかったがいいだろう。そして今日はみんなも知っての通り合宿について色々決めるつもりだ。」

 え?そんなこと聞かされていないんだが。


「先生!俺たちなにも聞かされてません。」

 みんなも何も知らなかったらしい、じゃあなんでハルトは知ってるんだろうか。

「え?私もしかして、伝え忘れてる!?」

 そうですね伝え忘れてますね、一名を除いてみんな知らないみたいです。

「そ、そんなあ。やっぱり私は教師に向いていないのかしら。」


「ハハッ、のば先生そんなことはないよ。君はまだ新任って聞いたから間違いはあるものだと思わないかい?」

 こいつ教師に対してもいつもの態度で話せるの凄いな。

「新任だからこそきちんとしなければならない。そこの金髪野郎、なぐさめてくれてありがとう。」

 まだ俺たちの名前を覚えきるのは難しいか。


「気を取り直してやることを説明する。この学園からかなり南に位置する林の中で12日間生活してもらう。もちろんみんなの部屋はあるから安心してくれ、そして私が同行することになったよろしくたのむ。」

 のば先生が付いてきてくれるならすごく楽しい12日間になると思います!

「僕たちもそう思います、みんなもそう思うよね?」

 みんなが一斉にうなずいた、どうやらただならぬ圧力を感じたのだろうな。


「じゃあそこの金髪と隣にいるやつは私と一緒に食料を集める役目だ。ほかのみんなは近くで遊んでいていい。」

 おいおい俺たち食料狩りだってさ楽しそうじゃない?

「そうだね。」

 いやなぜ食料はあらかじめ用意されていないんだろうか。


「僕たちが気にすることはないだろう、なにしろこうしてまた君とペアでできるのだから。」

 そういわれるとなんか照れくさいな。

「食事についてだが各グループそれぞれで作ってくれ。グループに関しては当日私が発表する、キミたちは帰ってくれてもかまわない。」

 今日は話がだいぶ短かったな、そして何も起こらなくてよかった。


「そうそうキミと金髪君はちょっと残ってもらうからすぐ帰るなよ。」

 す、すぐに帰れないだと!?そんな馬鹿な!

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