終わり

 ゴールデンウィーク初日。春が終わり、少し暑くなってきたころ、俺と遼は、クーラーボックスと食材が、まとめて入った袋を持って、キャンプ地を歩いていた。ちなみに、食材は、家族に頼んで、野菜や肉をもらったものだ。


「おい、蒼。なんで、男子が俺と蒼しか、いないんだ?」


「仕方ないだろ。知夜が共通で、知っている人、俺と遼しかいないんだから」


「そうか。だけど、こんなに大荷物だとは、思わなかった」


「遼の姉ちゃんも入れて四人だから、これぐらいかもな」


「姉貴は、俺達を車に乗せてくれたし、知夜ちゃんには、荷物を持たせる訳にもいかない。そう考えると、必然的に俺達が荷物持ちになるのか」


 遼が愚痴を言うのも仕方ない。駐車場から、キャンプ地まで、距離があった。汗を流しながら歩くと、キャンプ地のスタッフに説明を受けている、遼の姉ちゃんである涼香と知夜の姿が見えた。


「蒼君、こっちだよ」


「はーい! 今行くよ」


「知夜ちゃんー、俺の名前を呼んでくれー」


「弟、こっちだよ」


「姉貴に呼ばれても、嬉しくないよ!」


 俺と遼の姿に気づいた二人が手を振ってくれた。俺と遼は、涼香と知夜がいるところに辿り着く。屋根があるから、少し涼しい気がする。


「ガスの取り扱いの説明は以上です。何か、説明はありませんか?」


「大丈夫です」


 涼香は、頷いて返事をする。


「了解しました。何か、わからない事がありましたら、机の上に書いてある電話番号に連絡お願いします」


 キャンプ地のスタッフは、そう言うと、その場から立ち去った。


「蒼君大丈夫? 重くなかった?」


「大丈夫だよ」


「そう? 汗かいているけど」


「日頃、運動していないせいかな。良い運動になったよ」


「そっか、それなら良かった」


 知夜は、笑顔になって頷いた。


「涼香さん、車を出してくれてありがとうございます」


「良いのよ。バーベキューしたいって言ったのは、私だし」


 このバーベキューの提案は、涼香によるものだった。


「姉貴、すごく喜んでいたんだぜ。『蒼と知夜ちゃんから、遊びに誘われたけど行く?』って聞いたら、『行くー!』って飛んで喜んでいた」


「こら、勝手に話を割ってこない」


「いてて!」


 涼香は、遼の耳を引っ張って黙らせた。姉弟、仲が良いよな。


 バーベキューの提案は、涼香によるものだが、最初に四人で何かしたいって考えたのは、俺と知夜の二人だ。この前、立てた計画の一つである『ゴールデンウィークで、仲が良い人と集まって思い出を作る』から来ている。これは、計画の一つを実行している際中なのだ。


「ガスの取り扱いも聞いた事だし、早速食べる準備をしていこう!」


 涼香が、袋から食材を取り出す。


「知夜ちゃんは、何が食べたい?」


「私は、玉ねぎが食べたいです」


「いいねー、野郎共は、肉から食べる?」


「姉貴、俺達には、ちゃんとした名前があってな」


「肉ね、了解」


「話を聞けよ」


 弟である遼の話を無視して肉と玉ねぎを焼き始める涼香。


「俺達は、飲み物の準備をするか」


 遼が、クーラーボックスを開けると、コーラやお茶など、様々な飲み物が入っている。


「飲みたい飲み物がある人―?」


「蒼君、私にカルピスちょうだい」


「私は、サイダーかな」


 リクエストされた飲み物を取り出して、知夜と涼香に渡す。


「蒼は何が良い?」


「俺は、コーラかな」


「ほらよ」


 遼は、俺にコーラを渡す、遼は、紅茶を取った。


「肉焼けるの、もうちちょいだし、先乾杯しますか!」


「うん!」


 みんなで、飲み物を手に持つ。


「乾杯―!」


 みんなで、乾杯をして、飲み物を飲み始める。


「玉ねぎ焼けたよ!」


「涼香さん、ありがとうございます!」


「俺にも、玉ねぎ、お願いします」


「いいよ!」


 無性に玉ねぎを食べたくなった。涼香から、玉ねぎを貰う。


「肉も焼けたよ! 弟、手伝え」


「了解」


 遼は、遼香からトングを貰い、肉をみんなに分ける。皿に乗せる時、肉の脂が垂れて、食欲をそそる。早く食べたい。


「みんなに、いきわたったかな?」


「はい」


「貰いました」


「姉貴の分もとってあるぞ」


「よし、お楽しみの食事タイムだ!」


 知夜は、みんなに割り箸を渡す。


「みんな、手を合わせましょう!」


「姉貴、そんな小学生みたいなことをするの」


「いいから! いいから! 知夜ちゃんも、蒼も手を合わしてね」


 言われるがままに、俺と知夜は手を合わせる。その様子を見て、遼も手を合わせた。


「四人、初めてのバーベキューって事で、いただきます!」


「いただきます!」


 みんな、それを言った後に食事を始める。


「かー、肉美味しいね。お酒飲みたいわ」


「姉貴、酒飲んじゃダメだからな。前回の反省、生かしてくれよ」


「わかっているわよー。気持ちだよ、気持ち」


 涼香は、そう言っているが、実際酒を勧めたら飲みそうな勢いだ。しかし、飲んでしまったら帰れなくなるので、ここは我慢してもらうしかない。申し訳ない。


「玉ねぎ、美味しいです!」


「知夜ちゃん、わかっているねー、この玉ねぎは、実家のおばあちゃんから、送ってくれた、もらった物なのよ。おばあちゃんが作った野菜が美味しいってわかってくれるなんて、嬉しいわ」


 玉ねぎを食べてみる。確かに、甘みがあって美味しかった。


「蒼君」


「ん?」


「一つ目の計画、達成だね」


 知夜は、無邪気な笑顔を見せた。それは、太陽の光も相まって、美しくて輝く笑顔だった。


 その後も笑い合ったり、団欒したり、最高なバーベキューを過ごす。計画書は、使い方を誤ると人を傷つけてしまうのかもしれない。しかし、明るい事で作られた計画は、周りの人を幸せにする事に気づいた。


 二人で、『二年生の間に幸せになる十の事』は、始まったばっかりだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

自信がない彼女との付き合い方 るい @ikurasyake

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ