4話 はじめてのお使い

マシロは勇者パーティーに所属していたけど、魔王城の玉座の間の前にてパーティーを追放されてしまった。異世界から誤ってこの世界に異世界転移してきた元魔導師。わたしは、勇者パーティーでは皆の身の回りのお世話や炊事をしてきたが肝心な魔王軍との戦闘では誰からも必要とされない生活を送ってきた。皆は、そんなわたしを置いて行ってしまった。


「マシロ、キミはクビだ。」


突然、わたしは勇者パーティーのリーダーである勇者ユーリからパーティーからの追放を言い渡されてしまった。


「そんな……置いていかないでー!」そう、叫び起き上がるとここは?貴族様のお屋敷だろうか?! いや違った、ここはフジワラさんの家。転移魔法で違う国の王都にでも転移してしまったのだろうか?あまりにわたしがいた国とは文明も文化も違い過ぎて混乱する。どう突然、お邪魔してしまった、わたしを家に置いてくれて、そんなわたしの手料理を喜んでくれた家主の藤原さん。生活魔法が使えなくなって遂にわたしの取り柄も無くなったかと思われたけど、この世界の技術で、フジワラさんに美味しい料理を作ろうと決意した。その為にわたしは、この国のことをあまりにも知らなさすぎる。






フジワラさんの話によるとここはニホンという国のトウキョウなんだとか?わたしが居た世界とは違うことなのかな?この世界で生活する必要最低限の読み書きを教えて貰うことにした。




フジワラさんの分かりやすい教え方の甲斐もあって、しばらく経ち、日常生活が難なく送れるまでこの世界の知識を吸収していった。信号は赤は止まれ。青は進め。黄は注意して進め。


場合によっては止まれ。など、基本的な道路交通法この世界でのお金の仕組みなどを教えてもらった。硬貨よりも紙幣の方が高価なのには驚いたけど、これがこの世界でのルールなのだと理解した。




そして、最後の総仕上げとして、初めてのお使いに一人で行くこととなった。




近くのスーパーというところに今夜の晩御飯のニクジャガという料理の材料を買いに行くことが最後に課せられた試練でした。






これでやっと、フジワラさんにわたしの手料理を振る舞える。これで藤原さんから貰った恩をお返し出来る!それがとても嬉しかった。そうして、今近所のスーパーの前まで来ていた。








スーパーの前まで来て、これで藤原さんにわたしの手料理を食べてもらえる。この最後の試練を乗り越えれば、認めて漏れる。でも、なかなか、中に踏み出せない。




この未知なる領域に踏み込んでもいい者なのかと最初の一歩が踏み出せないでいた。




そうして、入り口付近で入ってもいいものかと迷っていると、後ろからくる人たちが次々と、




扉の前へと進み扉が勝手に開いて施設の中へと入っていく。よく見れば、人が近づくと扉が自動で開き、人が入っていくのに気が付いた。この世界の住人は、皆、魔録持ちなのだろうか?扉を開錠する呪文も唱えなければ念力で扉を開けて入っているのか?それとの魔力に反応して開いているのか?どちらにせよ、今は魔力の使えないわたしには中に入る手段が無い。このままでは中へ入れない!?藤原さんにご飯を作ってあげられない……と不安になる。フジワラさんからも要らない子扱いされて屋敷から追い出されてしまう!そうしたらわたしなんて行き場を失い野垂れ死ぬしか無くなる。そんなのはイヤだ!




もう、あんな惨めな思いなんてしたくない……そんな泣きそうになっているわたしに優しく声をかけてくれる一人の女性が現れた。




「お嬢さん、こんなスーパーの入り口でどうしたの?」




「あ、いや……中へ入りたいのに入れなくて、それで……」




「一人で初めてのお使いかい?えらいねー」




「はい、初めて来ました。でも、わたしは中へは入れないのです。魔力使えないから……」






「え 、魔力?!自動ドアなんだから、そんなものは無くても中へ入れるんだよ」




「え??本当ですかぁ?!」


ジドウドアと言うのですか。だから皆、スラスラと入っていたのかな?


「そうだよ、おばちゃんだって魔力は無いけど、ほら!扉の前に立てばこの通りさ」




と自動ドアの前におばちゃんが立つと、うウィーンと扉が開いていく。




「ほ、本当だ!なんだ魔力が無くても入れたのですね」


わたしは今まで何を迷っていたのだろう……




「お嬢ちゃん、お使いが初めてならおばちゃんが一緒に買い物に付き合ってあげようか?」




「え?!いいんですか!?」


もし手伝ってもらえるならこんなに心強いことはない。








もし、ご迷惑じゃなければお願いしてもいいですか?」




「いいよ。可愛い娘と一緒に買い物するみたいでおばちゃんも嬉しいからさ」




「そうなんですね、それならお言葉に甘えてお願いします」






「まあ、なんて礼儀正しい子なんだいうちの子にも見習ってほしいくらいだよ」




こうして、おば様と一緒に買い物をすることになりました。




おば様は、わたしに買い物をする上で、大切なことをたくさん教えてくれました。




ニンジンは、果肉のオレンジ色がなるべく濃いものを選ぶと甘く絵美味しいとか、




ジャガイモは、『とうや』や『メイクイーン』の方が煮崩れしにくいから、カレーやシチュー、ニクジャガなどの煮込み料理に向いているとか、料理をする上での『さしすせそ』なんかも教えてくれました。




「マシロちゃん料理をする上で一番大切なことはなんだかわかるかい?」




「それってレシピ通りに作ることですか?」




「まあ、間違ってはいないけどねぇ…。でも、一番大切なことは、食べてくれる人のことを想って『おいしくなあれ』てお愛情を込めて作ることが一番大切なことなんだよ」






「そ、そうなんですか……」




「マシロちゃんも、愛情込めて作ってあげたい人がいるんじゃないのかい?」




「そんな、わたしが抱いているのは愛情とかでは……」




「まあ、そんなに赤くなっちゃって可愛いねー」




「ち、ちがいますからね!」




わたしが藤原さんに抱いているのは、愛情ではなくて、恩義であって決してそんなのじゃ……


わたしはおば様と一緒に買い物を済ませて帰路についたのだった。


***

読んでくれてありがとうございます。久しぶりの投稿です。

 明日も投稿します! よろしくお願いします

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