第9話 番外編・彼女に似合う花・妓女澪綾
「
そんなことを言い出したのは意外にも釉翡だった。大方、自分以外の話を聞いて笑う算段なのだろう。
「ストック、とかじゃないですか?」
「永遠の美、愛情の絆、求愛ねぇ……いい趣味してるじゃん」
「聞いておいて何なんですか?」
茉仁荼がキレている。怖い(笑)。
「白のアルストロメリア」
「瑠禾ちゃん、可愛ッ。凛々しい美しさ…似うねぇ、姐さん」
フル無視された。
「ハーデンベルギアだと思う」
「壮麗、運命的な出会い、広い心、思いやり。そんな風に思ってたとは意外だよ」
達也は黙り込み、赤くなる。図星らしい。
「ラナンキュラスじゃない?」
達也弟、女装してるらしい連斗が答える。
「達也弟って華やかな美人、好きなんだ?」
「俺が誰を好きでも関係ないだろ」
ふい、とそっぽをむく。
「俺は、薄紅のマーガレット。彼女、似合うだろ?」
五人で姐たる彼女を想う花を語り合った。
「……なんてことがあったんだよ」
「ありがと、釉翡は優しいと思う」
花が綻ぶような微笑み。
「世話になってんからな」
彼は、笑い返した。
これは濡羽が
あまり客がつかないのはおかしいが、ついて夜を貸すことになるのも困る。なのであらかじめ作戦が練られた。瑠禾、連斗は論外として達也は裕福に見えないし、茉仁荼は顔が売れすぎている。そこで選ばれたのがいい加減で軽薄そうな釉翡である。かくして彼は妓楼を訪れた。
無事に澪綾のもとまで通される。
「お待ちしておりました。旦那さま」
頭を下げると同時にいくつも挿された
「綺麗だね、
圧倒されたように呟いた。妓女とはそういう仕事である。
「星でも降るかな」
少女が微笑む。
「釉翡、ちょっとお相手願うよ」
ふい、と顔を背ける釉翡を気にも留めずに帯をほどいた。
「見せかけは大切、だろ?」
彼女は躊躇いがない。
「でも
それもそうかも、と脱ぎかけた着物を着直した。その際に彼女の下着姿が見えたのは他の者には秘密である。
「姐さん、見えてる」
「だからなに?」
真顔で言う。やはり少女は強者だ。釉翡が考えているうちに
「それでは旦那さま」
一礼する澪綾。
「また来る」
妓楼の外から彼女の部屋を見ていると。ひらひら手を振る少女が見えた。
「やっぱ姐さんには敵わねえや」
嬉しそうにも、羨望にも聞こえる呟きは花街の綺羅綺羅しい夜の隅で
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