盲目の姫と魔法の鏡

「文披31題」day16 窓越しの


「鏡、この世で一番美しい人はどんな人?」

 生まれた時から目が見えない姫は今日も、お気に入りの魔法の鏡に質問をする。

「世界で一番美しい人はこの人です」

「見えないわ。説明してよ」

「見た方がわかりやすいですよ」

 鏡の声は無機質で、これ以上会話は進まないことを物語る。

 鏡は人を映すことしか知らないから、私が見えないことがわからないのだ。

 何回もしたこのやりとりで、姫は理解せざるをえないとあきらめた。

 なぜなら彼女も、鏡というものがどういう物かわからないからだ。

 鏡というお互いに見えるガラス窓のようなもので向かい合っている二人。

 彼女は鏡をすぐ隣にいる親友のように思っていたが、窓の向こうの世界は隔たれているのだった。

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