おじいさんの物語

 ※第14回のお題は「忘れる」です。


 おじいさんは、突拍子もない空想の物語をするのが好きだった。

 私はその世界に引き込まれ、おじいさんが話をしてくれるのが楽しみだった。

 だが、だんだんとおじいさんの世界が崩れ始めた。

 始めは、時間の感覚がずれていった。

 昨日のことが思い出せなかったり、遠い過去になったり、過去をつい最近のことのように言い始めた。

 感覚が狂っていく彼の物語も、少しずつ狂っていく。

 だんだん内容がちぐはぐになり、もはや彼の物語を理解するのも難しい。

 おじいさんは、自分の物語を頭のどこかに置いてきてしまったのかもしれない。

 おじいさんの話し方も、少し変わってきた。

 まるで、子どもに向かって言うように空想を話すのだ。

 私は、あなたの妻なのに。


(300文字)

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