Wearing scent

 その匂いは、私を惹きつけてやまない。

 それに出会ったのは、道端ですれ違ったある人の残り香から。

 ついその知らないその人を引き留めて、その匂いのもとを聞いてしまっていた。

 オンラインのショップでしか取り扱いがなく、値段もそれなりにした。

――これは、人々の心を奪う香りです。

 何とも自信にあふれるうたい文句だ。

 私は迷うことなく、購入のボタンを押した。

 家にそれが届くと、さっそくそれをつけた。

 この匂いをつけていると、気分が高揚した。

 しかも香水をつけていると、人々が自分に好意的に接してくれた。

 ただ、最近誰かの視線をずっと感じる。

 これは、気のせいだろうか。


(270文字)

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