青が棲む場所

 そこは、ずっと隠されて受け継がれてきた場所だった。

 清い湧き水のある場所。

 私は、何とか頼み込んで、その管理を任されている人々に案内を受けることができた。

 飲み込まれそうなほどの、透き通り、かつ深い青がそこにあった。

 ずっと、彼らが守ってつなげてきたから、今私はこれを見ることができる。

 彼らの土地を一歩出ると、もうそこに緑はない。

 人が、もともとそこに生きていた者たちから奪って得たものだ。

 家路に向かう中、街の風景を見ても、もうそこに、あのように澄んだ青は見えない。

 私はあの青が無性に恋しくなり、またきっとあの場所へ行くのだろう。

 この星は宇宙から見れば青く見えるのに、それが生きる場所は、限られている。


(296文字)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る