第12話「この酷い世の中で」

 Side 南雲 浩一


=イスズ市・イスズ高校・文芸部、部室=


 ラジオを聴きながら、何度も読んだラノベを見ながら過去に想いを馳せる。


 インターネットが敵味方のジャミングなどで繋がり難い状況下だと、情報は独自に収集する必要がある。


 彼方此方飛び回っている木里さんの来訪などが有難いのは各地域の戦況、状況などを聞けるからだ。


 こうなってから初めてインターネットやスマホを普通に使えた昔の便利さを思い知った。


 他にも繋がり難いラジオ放送やテレビなんかも重要になってくる。

 ラジオ放送もテレビも俺達を勝手に英雄視したり、さも俺達が有利なように大本営発表かましたりしている。


 それは敵の放送も同じだ。


 どちらが不利だろうと有利だろうと大量に人間は死んでいるのにだ。

 一回テレビ放送で「国に尽くす事を誇らしく思います」なんて言う、自称日本人学生がいたが、目の前にいたら鉛弾をぶち込んでやろうかと思った。 


 そんな大本営発表や放送を聞くよりかはドラマか音楽、アニメでも見るのが日常だ。何を見るかだの見逃しただので騒ぎになる事もあるが。あと、ご時世的にどうしてもプロパガンダ作品は多いが。


 それと、とにかく皆娯楽や話題に飢えている部分がある。

 ゲームだけでなく、近くのコンビニや電気屋からオセロやらトランプやらを入手して遊んでる人々も見かける。


 映画の円盤なんかもそうだ。

 基本は戦争映画は何か不吉なので禁止であるが。

 

 それでもまだ娯楽に飢えてしまっているのか、平時の時は本を読んでなさそうな人間が図書室の本に手を出したりしている。


 当然文芸部の本も貸し出し中の奴があったりした。


 だから補給品の必須品目の中には漫画もある。


 食事とかは――イスズ市が戦場になって市民が退避した最初期はコンビニやスーパーから入手していた時期もあったが、自分達の人数が人数だ。それも早々と尽きてしまった。


 今となっては味気ない、レーションとかで、とある謎の別ルートから支給された食材とかで料理されたご馳走は普通に生きていた頃の日常が懐かしく感じてしまう。

 あとジュースとかも歓迎される。


 首都圏とか後方の連中は上手いもん食ってるんだろうな~とか毎日のように愚痴ってる同僚の姿なんかも珍しくはない。

 

 そうそう、食事の話をした後に下品な話だがトイレットペーパーとかも必須品目だ。人数が人数だから無くなるスピードも相応である。

 あと大人用のオムツにも手を出している奴もいた。そう言う趣味ではなく戦場で一々トイレとか行く暇なんてないのだ。

 

 ……トイレの最中に死亡なんて嫌であるが、オムツをつけて死亡と言うのも後々考えると、どうかなぁ? などと考えるのは贅沢な悩みなんだろうな。


「なに? またテロが起きたのか?」


 新聞も立派な情報収集に必要な媒体だ。

 嘘か本当か見抜く力が必要になるが。

 4コマ漫画だけが唯一の癒しと言う言葉も耳にする。


 それよりも平和な地域では反政府運動やデモ、武装勢力によるテロが活発化しているらしい。


 この分だと、この戦争をマネーゲームか何かだと思っている、金に余裕がある奴は海外とかに高飛びしているんだろうなとか考えてしまう。


 戦争に賛同する奴に限って戦争になんか行かないのだから世の中、救いようがない。

 

 テロリストの気持ちもわかってしまう。


(ダメだ。何か気が滅入ってきた)


 そう言って新聞を机に置く。

 首都圏、関東圏の同じ学生は今どうしているんだろうか。

 戦争の影に怯えながら平和を楽しんでいるだろうか。

 それとも戦争に投入される準備が進められているのだろうか。 

 

 戦争を一方的にヴァイスハイト帝国もクソだが日本もクソだ。

 戦争なんかせずに、上の人間同士で殴り合いで決着つければいいのにと思ってしまう。 


 などと考えても現状はどうにもならないのだ、残念ながら。


 大人達の部隊が再編して反抗作戦が開始されるのが先か、俺達が死んで反抗作戦が出来ずこの国が敗北するのが先か。


 どちらにせよ碌なもんじゃねえな。

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