第10話「哨戒任務」

 =昼・イスズ高校・格納庫=


 Side 南雲 浩一


 パワーローダーが立ち並ぶ格納庫。

 そこで俺達のチームはパワーローダーを身に纏って実戦に出ることにした。

 哨戒任務――ようするに指定された区域のパトロールだが帝国との遭遇率も最近高まっていてそれを不安視する声も上がっている。


 中には帝国の大規模侵攻が始まる前触れなんて言う話もある程だ。


 格納庫内には緊張感が漂っている。


「あの――浩一君」


「なんだキリノ?」


「その、緊張しません? こう、周囲の雰囲気と言うか何というか」


「そりゃそうだ。自分が死ぬかも知れないんだ。緊張しない方がおかしんじゃないのか?」


 俺だって正直、どうにかなりそうな時が何度もあった。

 それでもこうして乗り越えてきた。

 本音を言えばキリノを求めたい気持ちもあった。

 それだけでなくリリでいけない事を考えてしまった事もあった。

 どうしようもないダメな奴である。


 そんな奴が木里さんが言うように、重大な役目をどうたらこうたらするのだろうか? などと考えてしまう。


「死なないでくださいね」


「え?」


 キリノが突然そう言って俺はキョトンとなった。


「いえ、その、出発しましょう……」


「お、おう……」


 なんだか変な空気になった。

 リリは「相変わらずなんだから」と愚痴を零している。



 =昼・イスズ市・市街地=


 パワーローダー、零戦二型を身に纏い市街地の指定されたルートを巡回する。

 

 正直言うと生きた心地がしなかった。


 と言うのもパワーローダーは確かに強いが無敵の鎧ではない。


 生身の歩兵時代の視点からパワーローダーが中の人間もろともスクラップ、人の形をした棺桶になるところを沢山見てきたからだ。


 そして戦場ではパワーローダーは真っ先に狙われる。


 手に持ったパワーローダー専用のアサルトライフルが微かに震えている。

 まるで新兵に逆戻りしているような状態だ。


『怖い……ですか?』


『え?』


 突然キリノに呼び掛けられる。


『大丈夫です。浩一ならきっと――』


 続けて優しい口調でそう言われた。

 リリは『こんなところでラブコメしてるんじゃないの』と呆れたように言う。


『だけど南雲ならやれると思うのは確かね』


 とリリは付け足すように、ちょっと恥ずかしそうにそう言った。


 二人とも俺をどう思っているのだろうか。

 

(だけど、ちょっと気が晴れたかな――)


 などと思いつつ意識を哨戒任務に向ける。

 ハズレを引かなければいいのだが。

 このまま基地(学校)に帰りたい気分だ。



 そんな風に考えていた時がありました。

  

 現在敵の部隊と激しい戦闘に突入しております。


 敵の数は此方の倍以上。


 パワーローダーだけで小隊規模(五十人)。

 装甲車の姿もある。

 

 規模や編成からして偵察任務か、此方と同じく哨戒任務だろうか。


 此方はたったの三人。

 

 増援が来たとしてもようやく敵と真正面からやり合える数になる。


 つまり何が言いたいかと言うとピンチである。 

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