第9話「眠れない夜」

 Side 藤宮 キリノ


=夜・イスズ高校・寝室=


「リリさん、大丈夫ですか?」


「キリノこそ大丈夫?」


 リリも私も眠れないようだ。


「お互いたまにこうなるよね。死ぬんじゃないかって思って、こわくなって」


「うん」


 その気持ちは分かる。

 私もそんな時がある。

 皆そうだと思う。

 そうじゃなければ逆に異常だと思う。  


「女子高生になったら、世界が変わるみたいに思ってたんだけどな……」


「うん」


「勉強はともかく、恋愛して、遊んだりして――だけど仕方ないよね、戦争だもんね」


「……」


 何度もした話題。

 私も何度も同じ話題をした。


「……キリノ。私、変になりそう。南雲に、浩一が欲しいとか思ってる」


「あ――そう言われたら私も――」


 気が変になってこう言う話題も出てしまう。

 

「わかんない。とにかくこわいの。誰かに抱きしめられたい――ううん、それ以上の事されたいとか考えちゃってる」


「私も同じことを何度も考えた事があります」


「でもダメだよね。ダメなんだよね」


 私はリリのベッドに入り、リリの体を優しく抱きしめた。


「ごめんなさい、ごめんなさい」


「いいんです。私も何度もこうして貰いましたから、今日は私が――」


「うん……」



 それからどれぐらいの時間が経過しただろう。

 

 何を話題に盛り上がっただろう。

 

 私達は抱きしめあった。


 まるで恋人同士のように。


 気が付いた時には朝になった。


 恥ずかしくてお互いの顔をみれない。


「ごめん。変なことさせちゃって」


 リリさんが謝る。


「ううん。いいんです。私も何度もやってもらいましたから」


「そ、そう」


 そしてリリさんは「さて、支度するわよ」と、甘ったるい雰囲気を打ち消すように立ち上がりました。


 私も「はい」と言って続きます。

  

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