第9話「眠れない夜」
Side 藤宮 キリノ
=夜・イスズ高校・寝室=
「リリさん、大丈夫ですか?」
「キリノこそ大丈夫?」
リリも私も眠れないようだ。
「お互いたまにこうなるよね。死ぬんじゃないかって思って、こわくなって」
「うん」
その気持ちは分かる。
私もそんな時がある。
皆そうだと思う。
そうじゃなければ逆に異常だと思う。
「女子高生になったら、世界が変わるみたいに思ってたんだけどな……」
「うん」
「勉強はともかく、恋愛して、遊んだりして――だけど仕方ないよね、戦争だもんね」
「……」
何度もした話題。
私も何度も同じ話題をした。
「……キリノ。私、変になりそう。南雲に、浩一が欲しいとか思ってる」
「あ――そう言われたら私も――」
気が変になってこう言う話題も出てしまう。
「わかんない。とにかくこわいの。誰かに抱きしめられたい――ううん、それ以上の事されたいとか考えちゃってる」
「私も同じことを何度も考えた事があります」
「でもダメだよね。ダメなんだよね」
私はリリのベッドに入り、リリの体を優しく抱きしめた。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「いいんです。私も何度もこうして貰いましたから、今日は私が――」
「うん……」
☆
それからどれぐらいの時間が経過しただろう。
何を話題に盛り上がっただろう。
私達は抱きしめあった。
まるで恋人同士のように。
気が付いた時には朝になった。
恥ずかしくてお互いの顔をみれない。
「ごめん。変なことさせちゃって」
リリさんが謝る。
「ううん。いいんです。私も何度もやってもらいましたから」
「そ、そう」
そしてリリさんは「さて、支度するわよ」と、甘ったるい雰囲気を打ち消すように立ち上がりました。
私も「はい」と言って続きます。
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