第7話「木里 翔太郎」

 Side 南雲 浩一


=夕方・イスズ高校・文芸部部室=


 いやはや、とんでもない人が文芸部に顔を出してきた。

 木里 翔太郎。

 黒髪で顔立ちも整っていて、雰囲気もある、同年代のエースである。


「やっぱりビックリした?」


 苦笑しながら木里さんは尋ねる。


 キリノとリリ、含めて俺たち3人はコクコクと首を縦に振る。

 そりゃ驚く。

 突然同年代のエース、もはや違う世界の住民が訪ねてきたのだから。


「さっきの模擬戦で、各チームの課題とかそう言うのを監督官に提出して、まだ帰還まで時間があるからこうして、各チームのリーダーと顔合わせをしていたんだよ」


「「「はあ」」」


 そう言う事らしい。

 木里さんの説明に俺は一応の納得はした。


「君達まだ実戦も経験してない、新設したばかりのチームだって聞いたけど凄い良かったよ」


「そ、そう言って頂けて光栄です!!」


 木里さんの賛辞にキリノが慌てて返す。


「それにしても文芸部か――これも因果かな」


「どう言う事ですか?」

 

 部室を見渡しながら何やら物思いに耽る木里さん。

 それに疑問に思った。


「いや、自分も文芸部だし、他校のエースの、比良坂学園の荒木 将一さんも文芸部なんだよ」


「えっ、そうなの!?」


 木里さんの説明にリリが口元を両手で抑えて目を見開いていった。

 木里さんと同世代、一つ年上、竹宮高校チームと並ぶエースの学校、比良坂学園。

 その中でも名高い荒木 将一さんも、そう言う共通点があったとは。


「まあ、話しておいてなんだけど、この辺にしておいて――ちょっと反省会開こうか」

 

 苦笑してそう言う木里さん。



 そこから反省会が始まった。


 戦略、戦術面、技術面などで細かい指摘を受ける。


 例えば俺に負担を掛け過ぎている点とかだ。

 そこをどうにかすれば、もっとよくなるとの事だ。


 最後に付け加えるように「新設部隊である事を考えれば満点だ」との言葉を頂いた。


 そして――


=夜・イスズ高校・屋上=


 人気のない屋上。

 そこで俺と木里さんは二人きりになった。

 

 どうしてそんな事になったと言うと――


「君とは二人きりで話をしたかった」


 との事らしい。


「荒木さんもそうだけど、君も俺と何処か似ているからだよ――あ、文芸部とか抜きにしてね?」


「そうなんですか?」


「うん――」


 自分が木里さんや荒木さんと似ている?

 本当にどう言う事だろう?


「あっ、勘だから深く考えないでね? 自分でも何言ってるんだろうって感じだから」


「はあ?」


「だけど、あの戦いぶりは嘘じゃない。あの訓練での戦い――荒木さんや皆と戦っているような感覚だった」


「それを伝えるために?」


「それもあるけど、強いと言う事はいい事だけじゃない。きっと君達はもっと強くなるけど、たぶん俺達と同じように、これまで以上の困難に直面すると思う」


 と、真剣な表情で俺に伝えてくる。

 それが何だかとても怖かった。


「パワーローダーを身に纏っているからですか?」


「うん」


 即答だった。


「パワーローダーを身に纏って前線に出るってのはそう言う事だから」


「はあ……」


 パワーローダー。

 現代の戦場の花形兵器の一つ。

 装甲車かそれ以上の耐久力を持ち、戦闘ヘリ並みの火力と機動性を持ち、核動力で動く兵器。


 だがその出自には謎が多いが今は関係ない。


 それを身に纏って前線で戦うと言う事は、今の俺なんかでは想像もできない困難が待ち受けているのだろう。

 

 木里さんをそれを伝えようとしているように思えた。

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