第6話「模擬戦」

 Side 南雲 浩一


=昼・イスズ高校・訓練場= 


 俺達、キリノとリリと一緒にパワーローダー、零戦二型を身に纏い、順番待ちをする。


『か、勝てるかな?』


 キリノの一言に俺は『難しいだろうな……』と言う。


 リリも『そうよね。相手が相手だもん』と同じ意見のようだ。


 相手は命恩人であり、同時にエースである。

 竹宮高校の特注のパワーローダー、黒いアイン・ブラッドタイプを使用する木里 翔太郎。

 

 日本で初めてヴァイスハイト帝国のパワーローダーを撃破した少年兵であり、同時に学生による国家防衛構想を決定付けた人間の一人である。


 どうして学生による国家防衛構想のキッカケになったのか、話は長くなるが、大体昭和のリアルロボットアニメの第一話みたいな展開の流れでパワーローダーに乗り込み、敵を撃破してしまったのがキッカケらしい。


 更に言えば自衛隊は先の戦いで大敗して人手不足であり、ヴァイスハイト帝国も俺達と同じぐらいの歳の少年、少女兵を投入しているらしいのが決定的だったと言われている。


 日本と言う国は例え悪法でも海外でやっていて自分たちに都合が良ければ採用するという悪癖がある。


 また素早い決定からかなり前から構想は考えられていて、段取りも決めていたと思われる。

 

 言うなれば木里さん達はキッカケに過ぎないのだ。


 それでも木里さん達を悪く言う人間は大勢いるが……


「速いわね……3分も持ってないわよ」


 リリがそう言ったので意識を現実に戻す。

 エースの肩書きは伊達ではないらしい。

 同じ零戦2型でも複数人相手に3分も経たずに終わらせてしまった。

 

 自分達では一分も持てば御の字のように思えた。



 訓練が始まった。

 自分達3人に木里さん1人の対決だ。

 機種は4人とも零戦二型。

 

 訓練が始まる。


 俺達3機は即刻距離をとって散開。


 ブーストを吹かし、地面を滑るようにして移動しながら3方から射撃を加える。


(これでも動きが鈍らないのかよ!?)


 しかし木里の動きは鈍らない。

 銃火を搔い潜り、反撃の一撃を見舞ってくる。

 手加減してくれてはいるとは思うがそれでも此方は必死に相手の鋭い一撃を避けていた。

 どうやって避けたのか自分でも分からない。

 そんな一撃だ。


『このままだとジリ貧よ!?』


 リリが訴えかける。


『勝負に出ますか?』

 

 キリノが提案してくるが。


『実戦なら撤退だが――勝負に出るか』


 俺は勝負に出ることにした。

 相手を囲むような3角形のフォーメーションを維持して戦っているが、それを崩し、接近戦を挑む。

 

『思い切ったな!』


 相手から、木里から通信が入る。

 模擬刀同士の鍔迫り合い。

 一対一の戦いになる。

 

 ここまでお互いの距離が近いと、キリノとリリの援護射撃は期待できない。


(今何秒経った!? どれぐらい戦った!? それはともかく、どうやったら倒せる!?)


 距離が離れたところをキリノとリリが追撃。

 そして自分はまたしても接近戦に持ち込む。

 単純な作戦だが実際やってみると綱渡りのような作業だ。

 相手の剣技もドンドン激しくなる。どうやら最初のウチは手を抜いていたようだ。


 そして剣が飛び――


「キリノ、リリ!?」


 二人が接近戦を挑む。

 呆気に取られながらも自分がやるべき事を探す。

 そして跳躍して空中に飛んだ模擬刀をキャッチ。

 

 キリノとリリの二人は木里に薙ぎ払われたがそこに構わず振り下ろす――



 =夕方・イスズ高校・文芸部部室=


 訓練は結局負けてしまったがイスズ高校のチームの中で最高記録だった。

 

 今はその事を素直に喜ぼうと思う。


 とりあえず、ささやかな残念会を文芸部の部室で開いていると――


「ここがそうか」


 木里 翔太郎が現れたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る