第5話「不安」

 Side 姫乃木 リリ


 =昼・イスズ高校・文芸部部室=

 

 南雲 浩一。


 藤宮 キリノ


 そして私、姫乃木 リリ。


 私達3人はパワーローダーのチームになった。


 理由は様々だろうが最大の理由は人手不足が原因だ。


 それに誰だって、気に入らない大人達の命令に従って死ぬのはイヤだ。

 

 戦闘なんてゴメンである。


 だが相手は、ヴァイスハイト帝国はそんな事構わず攻めてくる。


 最近は大人しいが逆に不気味さを感じていた。


 それはそうと最近は南雲やキリノの二人と行動を共にする事が多くなった。


 まあチームだからと言う理由もあるが、それ以上に生死を共にする中だ。


 暇な時間を一緒に過ごしてもバチは当たらないだろう。


「あと一人ぐらいメンバー欲しいですね」


 と、キリノが言う。

 現代のゲームの最大プレイ人数はゲームにもよるが、大体四人ぐらいだ。

 中には八人ぐらいで対戦できる奴とかもあるらしい。

 だけど今は三人である。


 それに狭い部室に八人も呼び込むのはちょっと勘弁願いたいと言うのが私の本音である。


「それはそうと竹宮高校の人達と合同演習でしょ?」


 私は思い出したように南雲に言った。


「ああ。各高校の連携の強化の一環も兼ねているらしい。それに命の恩人だしな(プロローグ参照)、必ず参加するよ」


 彼が言う通り、竹宮高校は南雲たちの命の恩人だ。

 前回の戦いの終了後は、竹宮高校の人達の周りに人だかりが出来て挨拶が出来なかったがこの機会にお礼を述べるつもりなのだろう。


「それにしても妙ですよね」


「妙ってなにが?」


 キリノが唐突に話題を切り出す。


「私達は――日本政府の都合で学徒動員で武器を渡されて最前線に送り込まれました」


「だよな」


 南雲も同意する。

 私も特に言う事はなかった。


「国から最低限の支援を受けつつ、同じ学生から支援を受けてるって事は――今の状況に反対している勢力もいるってことでしょうか」


「まあそう考えるのが自然よね。竹宮高校のパワーローダーとか明らかに特別性だし。謎の組織が、私達学徒動員を支援しているとか、どうとか言う噂も、的外れじゃないのかしらね」


 そんな都合のいい組織がいてたまるかとも思う反面、いてほしいと思う。

 そうでないと私達は生きていけないだろう。


 今日まで生きてこれたのは私達の実力だけではない。


 ヴァイスハイト帝国の前線が伸び過ぎて補給が追い付いていないとか言う話もある。


 またイスズ市もそんなに戦略的、戦術的価値があるのかと言う話もある。

 そこを死に物狂いで敵は奪取するのかと言う話だ。


 私達は間違ってもエース部隊ではない。


 今日まで生き来られたのは運が良かったのだ。


「大丈夫ですか?」


「キリノ――ちょっと色々と考え事をね」


「なにを考えてたんだ?」


 南雲にも言われ私は「それは――」と思い切って全部打ち明ける事にした。


「成程な……確かに、運だよな」


「ええ……本当にですね」


 と、私の考えに納得してくれたようだ。


「だけど、帝国もずっとこのままじゃないだろう。何時かは大規模攻勢を掛けてくる」


「そうですよね。それに日本政府の動きも気になりますが……そこは支援者の人達に任せるしかないですよね」


「うん……」


 私達の士気は良いのか悪いのか分からない。

 そもそもにして後方の裏切りなどを考えながら戦わないといけない時点で良いとは言えないだろう。

 

 私は不安である。

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