第4話「想い」

 Side 南雲 浩一


=夜・イスズ学園・シュミレータールーム=


「夜遅くまで頑張ってるな」


「え!? 浩一君!?」


 大きなカプセルのようなマシンが何台も並べられたシュミレータールーム。

 そこで一息ついていた藤宮 キリノがいた。


「どうしてここに?」


「姫乃木さんが教えてくれたんだよ」


「リリさんが……」


「やっぱり不安か?」


「はい、不安です……」


「熱心なのは良い事だけど、実戦は何時起きるか分からないんだ。休む時には休んだ方がいいよ」


「それはそうですけど……けど、眠れなくて」


「まいったな……どうすればいいんだか……」


 困る俺。

 キリノをどう安心させれば良いのだろうか。


「あの……浩一君」


「な、なんだ?」 

 

 照れくさそうに尋ねてくるキリノ。

 思わず俺もドキドキしてしまう。


「浩一君って……リリさんの事、どう思いますか?」


「唐突になんで姫乃木が出てくる」


「いえ、姫乃木さんも、その、綺麗で可愛くて、なんだか浩一君と脈ありな感じだから、偶に気になってしまう時があって」


「俺はラノベか何かの主人公か……まあ確かに姫乃木さんがいい女なのは認めるけど……その、なんだ、俺はその……キリノの方が……」


 と、頑張って絞り出すように、照れくさくいった。

 

「そ、そうですか……」


「な、なんだ? 不満か?」


「いや、そう言うワケでは……ただ私で本当にいいのかなと思って」


「もっと自分に自信持った方が良いと思うよ」


「そ、そうですかね?」


「ともかくもう夜遅いんだ。寝よう」


「は、はい」



 Side 藤宮 キリノ


 =夜・イスズ学園・寝室=

 

 私は考える。


 浩一君の事。

 

 リリの事。


 本当はこれ以上、危ない目に遭ってほしくない。

 

だけどこれは我儘だ。


 皆、危険を冒して何かを守っている。


 浩一やリリだけ特別どうこうだなんて不公平だろう。


 浩一君はそれを分っていたんだと思う。


 だから互いに強くなろうなんて言ったのだ。


 しかし――


(本当に、私達は何をやっているんでしょうか)


 戦争がなければ浩一君と仲良くなることは無かったと思う。


 たぶん他人同士でそのまま卒業してなんとなく生きていく人生だっただろう。


 だからと言って今の状況を手放しで喜ぶ人間は皆無だろう。


 いたとしたら異常者だ。


 私達と同じぐらいの人間を大勢死なせてまで掴み取った均衡。


 その間に大人達は私達を捨て駒にして戦力を整えている。


 そのうち、神風特攻をやるように言い出しそうだ。


(もしもそうなったら私は――)

 

 恐ろしい仮定を思いつく。


 今でさえ日本を見限っている、敵意を持っている、殺意を持っている人間は大勢いる。


 もしもこれ以上の何かを命じるつもりならば――


(やめよう)


 恐ろしい考えをそこで打ち切り、私は寝ることに集中することにした。

 だけど不安はどうしても拭えなかった。

 眠れない夜になりそうである。

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