第3話「訓練」

 Side 南雲 浩一

 

=翌日・朝・イスズ高校・パワーローダー格納庫=


 支給されたパワーローダーは零戦二型や富嶽、ネイキッドタイプの桜花などだ。

 自分は零戦二型を選択した。


 キリノも零戦二型を選択したようだ。


 そして――


「君もパワーローダーに?」


「悪い?」


 リリも兵科転換を志望したのか、零戦二型を選択する。

 

「それと私と南雲、同じチームに配属になったからよろしくね。それと隊長はアナタだからシッカリやんなさいよ?」


「ああ――」


「それと、早速訓練も手配しておいたから」


「……」


「どうしたの?」

 

「いや、姫乃木さんが隊長やればいいんじゃないかなって思っただけ」


「あのねぇ……学級委員とかじゃないんだから。命が関わってるのよ? 分かる?」


「んなこと言われてもな」

 

 そんな俺とリリのやり取りを見かねたのかキリノが「まあまあ二人とも、落ち着いてください」と仲裁に入る。


 ともかく訓練だ。



 訓練はシュミレーターマシンで基本動作の確認から行う。

 そこから実機での訓練からの流れだ。

 

 パワーローダーは人体を動かして操作するマシンであるため、あまり複雑な操作を必要とされない。

 

 だがパワードスーツであるため、身体の背丈によっては搭乗が不可になる場合がある。


 そんな問題を解決したのがネイキッド・パワーローダーと呼ばれる機種である。 

 どんなのかと言うと、2010年代のラノベに出てきそうな生身の部分が剝き出しのパワードスーツがある。

 

 このタイプの装着者はイスズ高校でも一定数いる。


 パワードスーツを身に纏うと言うより、メカ娘か何かのコスプレなので皆恥ずかしがるのだ。


☆ 


 =昼・イスズ市・市街地=


 基本動作を確認し終えた俺達は市街地で実機を用いて操縦訓練を行った。

 元は生身の歩兵だが、これでも戦場でパワーローダーの動きを間近で見てきた身だ。

 どう動かせばいいのか分かる。


(パワーローダーで実戦か……)


 パワーローダーは今の戦場の花形の一つだ。

 だが同時にそれは敵から狙われやすいと言う事でもある。


 イスズ高校の初陣で俺はそれを目の当たりにした。

 どの高校、学園も酷い物だったらしい。

 

 ムカつく奴も、いい奴も、綺麗な女の子も平等に死んでいった。

 

 どんなに優秀な高校でも半分は死んでいる。

 

 イスズ高校も三分の一は死んでいる。

 

 中には全滅したり、壊滅して他の学園に統合したりとか、そんな無茶苦茶な状態の学校や学徒動員部隊もあると聞いている。


 それでも政治家連中は学生による日本防衛構想を止めようとはしない。

 やってる事は末期戦の軍隊のそれだ。


 そんな現実を知ってパワーローダーの装着を避けていた。

 パワーローダーを身に纏うと言う事は危険な最前線に出ること。

 出来る限り後方にいたかったが……イスズ高校も人が死に過ぎたと言う事なのだろう。


 だから強くならなければならない。


 生き延びるために。


 自分やキリノを守るために。

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