第2話「強くなろう」

 Side 南雲 浩一


=夕方・イスズ高校・監督官の部屋=


 監督官に呼ばれ、監督官の部屋に足を運んだ。


 部屋には背広の制服姿の霧島 マリナ監督官がいた。


 男らしいショートヘアー、凛々しく整った顔立ち、大人の女性らしいボディライン。

 男子だけでなく、女子にも人気がある監督官だ。


「自分に何か用ですか?」


「ああ、竹宮高校からの補給物資の中にパワーローダーと整備キットがあってな。ここらでパワーローダー部隊を拡充しようと思ってな」


「まさか自分がパワーローダーに?」


 信じられず、年のため聞き返した。


「喜べ。しかも隊長職だ」


 と、悪戯っぽい笑みでいう。


「あの、お言葉ですが他に適任者は――」


「なんだ? 生身で今の未来兵器が飛び交う戦場を這いずり回るのが好みなのか?」


「それは――」


「なあに心配するな。ちゃんと考えた上での判断だ」


「はあ……」


 本当だろうかと思った。


「ともかく、明日から機種転換訓練は受けてもらう」


「りょ、了解です」



=夜・イスズ高校・文芸部部室=


 色々な支度を済ませて部屋に戻る途中、藤宮 キリノと出会い、文芸部部室に行った。


 屋上も悪くないのだが、人気スポットすぎて気恥ずかしい。


 だから文芸部と言う名のオタク部屋に向かった。

 

 本棚に並べられた、ラノベや漫画、アニメ雑誌にディスク。

 フィギュアにプラモ。

 ゲーム機まで完備している。


「聞きました。パワーローダー身に纏えるんですね」


「もう噂になってるのか」


「はい。私も身に纏うことになりました」


「え――」


「貴方の傍にいたい。いさせてください。それが例え戦場でも」


「……分かった。強くなるよ――いや、お互い強くなろう」


「お互い、強く?」


「自分で自分の事を守れるぐらい。大切な人を守れるぐらい」


「……はい」


 キリノは笑みを浮かべた。  

 


「で、様子を覗いて来てみればなにやってるの?」


 姫乃木 リリが文芸部お部室に入ると同時に、呆れたように言う。


「「「ゲーム」」」


「南雲とキリノはともかく、霧島監督官まで――」


 と、リリは頭を抱えた。


「し、仕方ないだろう。ただでさえストレスが溜まる役職なんだ。これぐらいの息抜きは許してくれ」


 情けなく霧島 マリナ監督官は――軽く職権乱用をチラつかせながら言い訳する。


 リリはハァと溜息をついて


「明日に影響が出ないようにしてくださいよ」


 と言って部室から去った。



 リリが来てなんか雰囲気的に解散のムードになったので文芸部からキリノと霧島監督官は撤収した。


(明日から自分もパワーローダーの装着者か)


 などと想いを馳せる。

 憧れだった。

 だが同時に不安もある。


 自分なんかで大丈夫かと。

 でもキリノと約束した。

 お互い強くなろう。

 互いで互いを守れるぐらい強くなろうと。

 

(人生で一度ぐらい本気で頑張ってみよう)


 脳裏にキリノの姿を思い出しながら部屋へと戻っていった。

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