プロローグ・開戦から数ヶ月後――

 Side 南雲 浩一


 =昼・イスズ市・市街地=


 普通の人間は大抵、言われるがままに生きてきたと思う。

 

 親の言われるがままに何となく生きて。


 教師の言われるがままに生きて。


 人生のレールって言う、誰が敷いたか分からないものから、脱線した奴を嘲笑って。


 好き放題に生きられるのは、才能と、運に愛された人間に与えられた、特権であるように思った。


 少なくとも自分にそんな物はないだろう。


 才能もないし、運もない、ただの高校生。


 そんな風に生きてきたバチが当たったのか。


 日本の学徒動員(少年兵)として戦場で戦っている。


 学徒動員の中でも、エリートと呼ばれている連中は、核融合炉で動く全高2mぐらいの軍用パワードスーツ、パワーローダーを身に纏いながら戦っている。

 

 相手は地球外の生命体とか人類の天敵とかでもなく、近年急速に台頭してきた覇権主義国家、ヴァイスハイト帝国。


 パワーローダーや陸上戦艦など、様々な新兵器を開発し、周辺諸国を併合していき、あっと言う間にユーラシア大陸の殆どを自国の領地に変え、そして日本にまで手を伸ばしてきたのだ。


 ご苦労な事である。


 戦況だが、帝国は急速に大国になった影響と、戦線を広げ過ぎた影響で膠着状態が続いている。


 それでも日本の二分の一ぐらいはヴァイスハイト帝国に占領されているが。


 それはともかく今は戦場だ。


 今回は小競り合いみたいな物で敵の規模もそこまで大した物ではない。


 敵のパワーローダー、クリーガーⅡや味方のパワーローダー零戦2型や砲撃型の富嶽が市街地で激突している。


 生身の歩兵である自分は適当に援護してそれを眺めていた。

 パワーローダーを倒すには重火器が必要だ。

 戦車を破壊できるとまではいかなくても、最低でも装甲車を破壊できるぐらいの武装が欲しい。

 正直生身の歩兵が挑むのは自殺行為だ。


 だがそれでも敵は、パワーローダーは向かってくる。

 向かってくるのなら、戦わなければならない。


「地雷に掛かった!!」


「やれ!!」


 なので知恵を駆使して、罠を仕掛け、例えば地雷などに引っ掛かったところに一斉射撃を浴びせる。


 しかしそこへ敵の救援、パワーローダーが3体纏めてやってくる。


 それを見て仲間も自分達も逃げようとした。


 こっちは生身の歩兵が10人。


 味方のパワーローダーは敵のパワーローダーと交戦中。


 呆気なく自分たちは殺されるだろう。


 こんな事なら女の子と付き合いたかった、とか、もっと正直に生きてりゃ良かった、とか色々な考えがよぎる。


「え――」


 空から何かが降ってくる。


 それは漆黒の、角が二つ付いて、二つの目を持つパワーローダーだった。

 二丁拳銃のホルスター、腰に下げた二振りのブレード、背中には二つのバインダーがある。

 手に持ったビームライフルであっと言う間にヴァイスハイト軍のパワーローダーを一体破壊。

 更に腰に下げたブレードで二体纏めて破壊する。


 そのパワーローダーはさらに別の地点にいる味方と戦っているヴァイスハイト帝国のパワーローダーを破壊していく。


 この時ある噂を思い出した。


 謎の秘密組織が現行のパワーローダーより、遥かに優れたパワーローダーを日本の各地にいる学徒動員に配り回り、少年兵を助けていると言う噂話だ。


 そんな地獄に仏な噂話、普通は信じられないが――まさか本当に――と思った。


 そう思っているウチに敵は全滅したようだ。


 これが彼――木里 翔太郎たち、竹宮高校チームとの出会いだった。

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