KAC20234 “深夜の散歩で起きた出来事”🌙



◇ 私の名前は、山田と申します ◇



さて、私が どうして猫田家で 執事をしているのかを説明しますと、警視庁に栄転したのもつかの間、大きなミスを犯して退職を余儀なくされたときに、偶然にも、ここの奥方様に拾われました。


誤解がないように、はじめに申し上げますと、とても感謝しております。

ですが、奥方様のポンコツ具合ときたら、それはそれは酷いものであります。


―――と、これは失礼を致しました。


今回は、「深夜の散歩で起きた出来事」のお話でしたね。


お恥ずかしながら。

私は、ストレスが溜まると 発散のために午前2時~4時のあいだに 散歩をする習慣がございます。この時間は、大通りに人も車もおらず。冒険心が くすぐられては テンションが上がるというものです。



昨夜も 奥方様とは折合いが悪く、モヤモヤしておりました。

ですので、習慣のようにお屋敷を抜け出して、深夜の散歩に出かけようとしました。


すると、愛茉エマお嬢様が お庭で泣いておられるではないですか。


 ◇


私が 保育園にお迎えにあがったときから、ずっと 下を向いて いらしたのが気になって、理由をお伺いしましたら、お友だちと喧嘩をしてしまったそうです。


「なかなおり なんか、したくない……」


おっと。こればかりは、お嬢様の問題でございますね。


 ◇


ですので、この時間帯にもかかわらず、

お眠りに なられなかった のでございましょう。



「お嬢様、一緒に お散歩しませんか?」

「おさんぽ? ……うん。いく!」



その笑顔に、心臓が飛び跳ねてしまいそうです。


屋敷門を抜けて、しばらく歩きますと、

スキー用のゴーグル と マスクを着けた不審人物が、

前方から 歩いてくるではありませんか。


(どうやら、花粉症対策のようですね)

今年は“10年に一度レベル”の大量飛散と聞き及びます。


「あの方は、達観されておりますね」

「?」


「人の目を気にせず、芯を持って行動してらっしゃる、ということですよ」


「わかった! あした、また 友だちになる!」


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