第九話 中心

 白色に統一された外壁。外廊に沿って林立する円柱。人の目にするところに余す所なく彫り込まれた聖人像。その場に人がいる限り、その者が神を感じ、信じ、沙汰を待つことを受け入れる。その神聖性を畏怖に変換する装置。聖俗両世界の中心に位置する建物。ルキウス暦10年にザム帝国第6代皇帝ルキウスが建立した神殿を起源にもつ大聖堂。その名をザルギュランデ宮という。

 ルキウス暦1081年8月19日早朝。大尖塔に備え付けられた鐘が鳴り響く。ザルギュランデ宮前広場には大勢の人々が詰めかけていた。下は貧農から上は王まで、様々な地位と職と運命を背負った者達がこの時ばかりは同じ状態におかれる。すなわち、両足を地に着け、白衣を身に付けるのである。王であろうとも騎乗は許されず、貧農の隣に立つ。

開門エバルッ‼︎」

 裁皇府に対して絶対の忠誠を誓った龍騎士団の一人が高らかに宣言すると、ザルギュランデ宮の大門が仰々しく開き始める。この時より、約1ヶ月に渡る『神裁ノフ審判キュシュレの儀』が始まった。

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