森見登美彦さんの『熱帯』を読みました。

 前回の日記に書きましたが(※1)

 先日、友人に既に勧めてプレゼントした本を、すっかり忘れてもう一度プレゼントしたというへまをやらかしました。

 それで読書とその周辺の記憶を日記に残さなければと思った次第です。


 先月は森見登美彦さんの『熱帯』(※2)を読みました。


 森見登美彦さんといえば、著者本人と思しき京都の男子大学生が主人公であることが多いですが、この作品では社会人経験が綴られています。


 なんと国会図書館職員。

 森見さんご本人もそうですし、本作の主人公もそうです。

 そして、それは『熱帯』というタイトルの本をめぐる物語に関係しているのではないかと思います。


『熱帯』という不思議な本を探す物語と、『熱帯』の物語の中を旅する物語。また、一つの物語の中に入れ子のようにまた物語があるという複雑な構成です。


 アマゾンのブックレビューや読書メーターでも「途中でわけがわからなくなった」という人が多いようです。

 鷲生も読むのがしんどかったですw


 第二部の後半あたりでつまづきそうになりますね……。

 これを「中だるみ」と表現した人もいますが、むしろ森見登美彦さんは力を込めて書かれたのではないかと思います。


 といいますのも。

 鷲生が自分の創作の糧にしようと、小説の中の表現で「これは!」と思ったものをメモして抜き出しているのですが。

 むしろ、ここらあたりの方がそうしたくなるような凝った表現が多いんです。


 ただ、読み手としては「このお話は自分をどこに連れて行こうとしているんだろう」というのが分からないというのは結構なストレスです。

 そういう意味では読み易くはない本かもしれません。


 そんな付き合いにくさのある本ですが、ラストシーンは「こう来たかあ!」でスッキリしますよ。


 後半読んでいて、物語世界に迷い込んだ人間が名付けることで世界を生成するというあたりで、エンデの『はてしない物語』を思い浮かべておりました。

 ラストで『熱帯』という本が言及される辺りも似てる気がします。


『はてしない物語』については、鷲生はこの物語を読む前に、社会学の文献で取り上げられているのを読み、この先生の解釈で読んでいます。

『はてしない物語』は「読書のアレゴリーだ」という内容です。

 読書が人間にもたらすものは何か──とても感動的な論文で、鷲生がメンタル弱っているときに読み返すとウルっとしたりしてしまいます(論文については※3)。


 ……というお話を同じ大学で同じ社会学の講義を取っていた友人に話しました。

 次に会った時に同じ話を彼女にしないように気をつけなければなりません。要注意ですw



 *****

 ※1 「府立植物園の桜と読書記録」

 https://kakuyomu.jp/works/16817330661485429107/episodes/16818093075144219872


 ※2 『熱帯』 森見登美彦 文藝春秋社 

 https://www.bunshun.co.jp/nettai/


 ※3「遍歴する読者たち―『はてしない物語』のしくみ」 『読書空間の近代: 方法としての柳田国男』 1987 弘文堂 佐藤健二

 2014年からオンデマンド版が出ているようです。

https://www.koubundou.co.jp/book/b176234.html 

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