【和風F】古代京都の植生

 鷲生は現在、平安京をモチーフとしたファンタジー小説を書いております。


 その中で鬱蒼とした森の描写の必要に迫られているのですが……。


 小説内で、京の市街地では雨が降らなくて植物も生えず荒涼としているのに対し、下鴨神社(をモチーフとした神域)には鬱蒼とした森があることを描きたいのです。


 ところが。

 鷲生は語彙が貧困で(泣)、情けないことに「鬱蒼とした森」以外に表現が思いつきませんw


 で。

 じゃあ、具体的に生えている植物の名前を登場させてみようかと思いまして……。

 京都の森で生えている樹木についてちょっと調べてみました。


 この話を家族にすると「京都の木なら北山杉じゃないの?」と軽く言われましたが、あれは後代に人工的に植えられたもので……。(※1)

 確かに「京都府の木」には選定されていますが。(※2)


 京都市内で、平安京の時代の植生に近いのは、「下鴨神社のただすの森」や「府立植物園内の半木なからぎの森」かと思います(あと「池」であれば深泥池ですね)。


 下鴨神社の糺の森については以下のような説明がありました。(※3)


「ムクノキやエノキ、ケヤキなどのニレ科の落葉広葉樹が本来的な樹種であること」


 ただ、京都盆地の原植生は常緑広葉樹だそうで、そこは少し違いがあるようです。

 ↓

「加茂川と高野川の出合うところ、そして平安京・京都の周縁という固有の地理的環境によって、京都盆地の原植生であったとされる常緑広葉樹林とはことなる特色がもたらされた」


 半木の森については京都府のサイトに以下のような説明があります。


「大小四つの池に囲まれた『なからぎの森』は、古くから『流れ木の森』ともいわれ、ここ下鴨の地に残された山城盆地の原植生をうかがい知ることのできる園内唯一の貴重な自然林です。落葉樹であるエノキやムクノキの古木や、常緑樹であるシロダモ、カゴノキ、シイ、カシ類が混生する森の特徴が見られます。」(※4)


 こういった情報から、「ムクノキ」「エノキ」は、鷲生の平安ファンタジー小説に登場させても良さそうです。


「ムクノキ」の語源はいくつかあるようなのですが、古木になると皮がめくてくるのだそうで、それが「剥くの木」としてムクノキになったという説もあります(wiki「ムクノキ」)。


 なので、ムクノキについては古木は古木として認識しやすいもののようなので、登場人物視点から「椋の古木が見える」という森林描写があってよさそうです。


 あと、鬱蒼とした森なら薄暗くてジメジメしているだろうと思うので、樹木の下草にシダ類やコケ類を登場させると雰囲気出るかな~と思っています。


 そうそう、枝の先と下草があるんだったら、樹木に蔓上の何かを巻き付けるのも緑濃い風景の描写になるかもしれません。

 府立植物園で、藤の蔓が近くの樹木に絡みつき、満開の薄紫の花に覆われていたのを見たことがあります。


 あと、京都の植物の描写と言えば。

 梨木香歩さんの『家守奇譚』(※5)が優れていたな~と思い出しまして、昨日、本棚の奥から引っ張り出してきました。これから読みますが、参考になればエエなあと思います。

(余談ですが。鷲生の手許にある文庫本は十年くらい前?に勝ったもので税別362円ですが、今調べてみると税込み605円だそうですよ……)。


 あと、白川紺子さんの『下鴨アンティーク』にも(現在の、ですが)京都の植物の描写がたくさんありますよ~(この方は『後宮の烏』で有名ですよね)。


 *****

 ※1 京都北山丸太生産協同組合

 https://www.kyotokitayamamaruta.com/history/

 平安京の頃にも林業があったような記述もありますが、今「北山杉」で思い浮かべる真っ直ぐな木は、技術と遺伝子的にもう少し時代が下がってからの産物のようです。


 ※2 「京都府の木」 京都府のサイトに選定の経緯など書かれています。

 https://www.pref.kyoto.jp/kyotorinmu/rinmu/12900003.html#:~:text=%E4%BC%B8%E3%81%B3%E3%82%86%E3%81%8F%E4%BA%AC%E9%83%BD%E5%BA%9C%E3%81%AE%E8%B1%A1%E5%BE%B4,%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E9%81%B8%E3%81%B0%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82


 ※3 「都市の原風景」「糺の森財団」ウェブサイト

 https://tadasunomori.or.jp/column/938/

 同じく「糺の森財団」のサイトには「「半木の森」と「糺の森」と『連理の枝』と」というコラムもあります。

 https://tadasunomori.or.jp/column/953/


 ※4「京都府立植物園 なからぎの森」 京都府立植物園ウェブサイト

 https://www.pref.kyoto.jp/plant/11900017.html#:~:text=%E8%90%BD%E8%91%89%E6%A8%B9%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B%E3%82%A8%E3%83%8E%E3%82%AD%E3%82%84,%E5%8D%8A%E6%9C%A8%E7%A5%9E%E7%A4%BE%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82


 ※5 梨木香歩『家守奇譚』

 https://www.shinchosha.co.jp/book/125337/


 ※6 白川紺子『下鴨アンティーク』シリーズ https://orangebunko.shueisha.co.jp/book/series/%E4%B8%8B%E9%B4%A8%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%82%AF


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