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若い輝きを見て感じる恐れ、焦り。そういう感情は自分のような三流のものかと思いがちだが、人間であれば誰しもあることなのかもしれないと思わされた。
ファニエルのそれは自分のそれとは一緒にしてはいけないものなのしれない。しかし、読者としてはどうしても勝手に共感してしまう。
そこまで含めて作者の掌の上なのだろうか。
天才、才能。そう一言にするのは簡単だが、個人的には絵は先天的な才能で描くものではないと思っている。(語義としては鍛錬で身につけた後天的なものも才能には含むが、外野が才能というとき、そこにはギフト的な意味合いが少なからず強いように思う)
技術面だけとっても、積み重ね鍛錬された技術、世界をミクロからマクロまで観察する習慣、それを噛み砕く知識、出力するための運動性能。何を描くかにしても、生きてきたバックグラウンドや見てきたものの積み重ねであって、才能とかいうあやふやで誤魔化されてほしくないという気持ちがある。
ファニエルは神が与えたようなギフトがあったからこの位置にいるのではなく、常人には想像もつかない程の積み重ねがあり、それを維持できる精神があったから。そうあって欲しい。それがわからぬものには才能の一言で済ませたり、天才と呼んで持て囃すのだろうと。
アネシュカは若くして既に積み重ねたものがあり、今まさにまさしくその精神でもって純粋に楽しく怒涛の勢いで上乗せをやっているわけで。そんな強くてニューゲームみたいな奴みたら「アアアアアア」ってなるのが人間なんだよな。いやまぁ、世界のほとんどは自分より上だからそれ混みでやっていかないと鍛錬なんてメンタルが持たないからどうにかするわけだし、ファニエルが抱えるのはそんな低レベルな話じゃないと思うが。
ミリもないってことはない、はず。
そう思えば彼もただの人であり、若い輝きを見て恐れる彼に、一層の共感を覚えてしまうのだ。
作者からの返信
八軒さま
ありがとうございます!
ファニエルはその過去を何処まで深く書くかは執筆しながら悩むところなんですが、相当の才能の持ち主かつ努力ありきの人で、運だけで筆頭宮廷絵師になった人間ではない……という設定です。その一方で自分の才能の枯渇に常に悩み、ときに命を絶ちたいほど苦悩している人間です。
同時に、人を癒やす存在である芸術に、肝心の自分だけは癒やされない、芸術は競争原理でないと知りながらも、勝ち負けの価値観のなかにがんじがらめになってもいます。
そういう彼からすると、怖い物知らずなうえ、自分の技量も把握せず、ただただまっすぐに絵に邁進できるアネシュカは恐怖でしかないのですね。
そういう意味で、この世界では、アネシュカの方が異質なんだと思います。というか、現実世界でもそうです。表現を数字や勝ち負け、権威で測ろうとしてしまうのが、芸術というかクリエーターの世界の現実であると思います。自分が物書きであるからこそ、そう思います。
わたしも自分の才能の無さにはファニエルほどでなくとも日々嘆息していますし、他者に対する嫉妬や羨望もあります。彼の苦悩は、自分の苦悩の拡大再生産であると書いてて思います。
でも、だからいま、この作品を書いておきたいと思ったのも事実なのですよね。
なのでファニエルとアネシュカの葛藤を描きながら、自分の内心を探っている、そんな感覚もあります。
本性出してきましたねファニエルせんせえ……。
彼には天才と持て囃された人間の苦悩のようなものが垣間見える気がしますが、それをこんな形で弟子にぶつけなくても(汗)
アネシュカの真っ直ぐな情熱が、良い方に作用すればいいのですが……。
作者からの返信
いいの すけこさま
続けてお読み下さりありがとうございます!励みになっています。
はい、つる作品お馴染み?「人間ってそう一筋縄でいかなくてですね」回です。ファニエル先生もいろいろ拗らせちゃっているんですよね。仰るとおり、己の才能ゆえ。アネシュカとファニエルは真逆の芸術家気質なのかもしれません。
さあ、ここからです。アネシュカの奮闘を見守って下さい。
えぇ~~~っ!?!?これはひどい!!
ファニエルさんがアネシュカさんの才能を見出して「うちの工房においで」って誘って弟子にしたんでしょう!?こんなことってある!?(; ゚Д゚)
スランプに悩んで苦しんで、そんな中で絵を描くことに夢中になって没頭できるアネシュカさんに嫉妬しちゃったのかなと……いや、それにしたって酷い!!(; ゚Д゚)
作者からの返信
みつなつさま
ここで拗らせ絵師の本領発揮その一です!みなさんここでは「ええええー!」ってなりますね。みつなつさんもなっていただけて、うれしい……。
一筋縄でいかない男ふたりと、アネシュカの輝き。ここからその対比に注目して欲しいです。