壮年期 51

…それから一週間後。



100年後の聖戦に向けての準備として魔法協会が世界各国に協力を申し入れる手紙を送り…



魔法協会と繋がりのある国々はすぐさま賛同したもののロンゴニア帝国が真っ先に否定的な感じで返事を保留する旨を大々的に発表すると大半の国がソレに倣ってしまい、結局魔法協会に賛同したのは世界中の3割ほどの国々に留まった。



なので魔法協会のトップ、代表者である少女と帝国のトップ、皇帝である青年が直接交渉で会談する事になり…



俺がアッシー兼護衛として帝都へと少女を送り、その流れで会談の場に同席する事に。



「…おや、随分と厳重な事で」


「…調査結果によれば貴殿ならば本当に単騎でこの帝都を陥落させかねん。このぐらいの用心は当然だ」



…なんか広くて開放的な建物に案内されると大量の兵士達がズラッと青年を囲むように配置されており、分身の俺が軽い感じで弄るように言うと青年は警戒した様子で理由を話す。



「いやいや、平和主義で面倒くさがりな俺が暴力や武力に訴えるわけないじゃん。ソッチ側が何もしなければ、だけど」


「…そんな風に来て早々喧嘩腰だから『戦闘狂』って呼ばれるんだよ?」


「こういう交渉の場では威圧や釘刺しは大事だろ?舐められたら足下見られて不利になるだけだし」


「…それはそうだけど…」



分身の俺が否定して釘を刺すと転生者である女の子が間に入るように呆れながら言い、分身の俺の反論に何も言えないような感じで呟く。



「…では会談を始めましょうか」


「ああ」


「…ってか正直こんなに人数いる?あのお兄さんの足引っ張るだけで逆効果じゃない?」


「まあ数は力だから。いざと言う時は皇帝陛下を逃さないといけないし」



少女は青年の対面の椅子に座ると本題を切り出して話し合いが始まり、分身の俺が小声で指摘すると女の子も小声で理由を教えてくれる。



「ってかこの会談ってさ、ウチに魔法協会への協力を求める目的でしょ?なんか将来大変な事が起こるとか言ってたけど…アレってマジ?」


「冗談抜きでガチなやつ」


「…具体的には何が起こるの?その言い方だとソッチも知ってるんだよね?」



女の子の確認に分身の俺が本当である事を信じさせるように返すと女の子は疑問を尋ねてきた。



「とりあえず簡単に言うなら人類の危機。なんでもこの前起きた時は人類が滅亡しかけたらしい」


「人類の危機?なに?恐怖の大王でも降りてくるの?」



分身の俺が簡潔に説明して精霊から聞いた事を簡単に伝えると女の子は当然ながら信じておらず、馬鹿にするような感じでとある預言者の話を例に挙げる。



「あー…まあ惜しい。一応見方によっては同じ事かもしれんが」


「…冗談とかふざけてるわけじゃないんだよね?ガチでそんな事が起きるの?」


「正直俺個人の感想を言うなら分からん。実際になってみないとな…でも実際に本当だったら取り返しが付かないぐらいのレベルだからこうして魔法協会の代表者が頑張って世界中の国に協力を要請してる」



分身の俺の返答を聞いて女の子は意外そうに返して真面目な顔で確認してくるので…



分身の俺は真偽不明だと言った後に万が一の最悪の事態を想定して行動してる事を告げる。



「…一体何が起きるっていうの?」


「そうだな…分かりやすく伝えるなら世界中で常時降魔の時期状態、みたいな感じになる」


「えっ!?」


「しかも空気中の魔素濃度が上がりやすくなるから世界中で魔物が跳梁跋扈した挙句、場所によっては上級やボスも外に出てくる」


「ヤバい大惨事じゃん!!」



女の子の問いに『魔族』という怪しいワードを伏せたままハンターに分かりやすいような例え話をすると女の子が驚き、分身の俺が補足すると女の子は声を上げて返した。



「アズマ中将?どうかしたのかね?」


「あ、すみません。なんでもありません。こちらの話でして…」



女の子の上司であるおじさんが咎めるような感じで確認すると女の子は早口で謝罪する。



「…なんでそんな事が起きるの?もしかして地球温暖化みたいな感じ?」


「いやアレとは似て非なる感じだが…また微妙に反論しづらいモン持ち出して来たな…」



女の子は小声に戻して現代知識に例えて聞き、分身の俺は否定しつつも困りながら呟く。



「…ソッチの話じゃ前にも一回あったんだよね?」


「一回どころか三回あったらしいぞ。だいたい千年周期で聖戦っつー人類の存亡をかけた戦いが繰り広げられてたんだと」


「聖戦?千年周期って…」


「あと百年後にその周期に入って聖戦が起きるから、今の内に人類で結託しといて一致団結して聖戦に勝とうぜ…って事よ」



女の子の確認に分身の俺は訂正して軽く説明し、怪訝そうな顔で呟く女の子に裏側の事情を教える。



「百年後って遠くない?私達もう生きてないじゃん」


「まあ俺らには直接関係ないかもしれんが子孫のためにはなるだろ?」


「…うーん…」



微妙な顔での女の子の発言に分身の俺が肯定しながらも下の世代の事を考えて返すと女の子は難しそうな顔で考えるように呟く。

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