壮年期 52
「ちなみに今から1300年前に起きた第二次聖戦では人類が一億三千万人まで減ったんだと」
「1300年前…?一億三千万っていったら大体日本の総人口と同じぐらい、だよね?」
分身の俺が補足するように言うと女の子は不思議そうな顔で現代日本の事を持ち出して聞いてきた。
「そんな多かったっけ?一億二千万ぐらいじゃなかった?」
「…もしかしたら私達の居た年代ちょっとズレてるかも…私の時は一億三千万人超えてたし」
「へー。んで、当時の世界の総人口が65億だったらしいからその聖戦の間に人口が98%減少してる」
「…は…?」
分身の俺の確認に女の子が考えるように呟くが分身の俺は適当に流して続きを話し、女の子はそれを聞いて呆然とした反応をする。
「当時も今みたいに国同士で争ってて連携を取らなかったからそんな大惨事に陥ったんだと」
「…まじ?」
「だから俺らは歴史上の過ちは繰り返さず、二の舞や同じ轍を踏まないためにこうやって世界中の国で協力体制を取ろうとしてるってわけ」
分身の俺が精霊王から聞いた話を伝えると女の子は真剣な顔で確認し、分身の俺は肯定して少女が急いで会談をセッティングさせた理由を話す。
「…なるほど。だから………ってかその話が本当ならガチでヤバくない?前回で98%って事は今度こそ人類全滅ってか滅亡するんじゃ…」
「ソレが『本当なら取り返しの付かないレベル』のヤツよ」
「…すみません、聞き耳を立ててしまいましたが…ソレは人類が協力したところでどうにかなる問題なのでしょうか?環境問題ならば時期が過ぎ去るのを待つ以外に対策が無いように思えますが…」
女の子は納得したように頷くと少し考え込んで確認してくるので分身の俺が軽い感じでネタバレするように返すと…マスタークラスのハンターである男が謝りながら会話に割り込んで来て疑問を尋ねてきた。
「例え環境問題だとしても世界各国で協力すれば被害は減らせるから対策は取れるよ。まあ分かりやすく降魔に例えただけで本当は『聖戦』の名の通り魔族や魔王とやらが復活してくるんだけど」
「…え?」「は…?」
分身の俺が適当な感じで返して本当の事を話すと男と女の子は理解出来ないような間の抜けた反応をする。
「だから魔族のトップである魔王を倒せば勝利って事で聖戦は終わる。また今度、千年後に子孫達が復活した魔族や魔王達と戦う事になるね」
「魔王…?」
「魔族…?」
「さっき言った通り降魔の時期と似たようなものだから空気中の魔素の濃度が高まって出てきた新種の魔物だと思っとけばいいんじゃね?」
分身の俺は勝利条件を告げるも女の子と男は不思議そうな顔で呟くので、ハンターなら誰でも簡単に理解できるような説明をした。
「…その荒唐無稽な話を我々に信じろ、と?」
「今はそう直ぐに信じられなくても無理はないけど…どうせ後から信じざるを得なくなるよ。雑魚だけど魔族が出てきてるから何年後か何十年後かに被害報告を聞く事になるだろうし」
元帥であるおじさんが怪訝そうな顔で不信感が滲み出る聞き方をしてくるが分身の俺は軽い感じで適当に流すように返す。
「ねえ、その『魔族』ってなに?」
「俺も詳しくは知らん。とりあえずダンジョンの外でも普通に活動してくる新種の魔物…って認識だな、今んトコ」
「…ダンジョンの外でも活動が可能、とは…」
女の子の問いに分身の俺が現状で分かってる情報を話すと男が顎に手を当てながらマズそうな感じで呟く。
「俺もこの前異変がどうとかでどっかの国に派遣された時に初めて見たんだが、外見は虫歯菌とか小悪魔みたいな感じだった。なんか三又の槍とか持ってたし」
「へー。じゃあザ・魔族の下っ端みたいな感じなんだ」
分身の俺が実際に見たままの感想を告げると女の子は意外そうな感じで返した。
「まあソイツは雑魚ではあったがそれでも多分魔族の強さはピンキリだろうし…おそらくゴブリンと同等かそれ以上の強さはあると思う」
「…ゴブリンだとしてもダンジョンの外でも活動してる…となると一般人では対応が難しいので、被害が出る可能性も高そうですね」
「…確かに。冒険者でも魔法使いじゃなければ素手だと厳しい気がする…」
分身の俺の経験談からの予想を聞いて男が難しそうな顔で想定を話し、女の子は考え込むように賛同する。
「一応俺の師匠みたいに柔術とかの格闘技を修めてて素手でも魔物と戦える人はいるだろうが…いや、数が少ないから無駄な話だな」
「その魔族ってのの出現条件とかは分かってんの?」
「まだ不明。一応封印が緩んできてるのが原因らしいから封印を一旦強化すれば聖戦が始まるまでは出て来なくなるんだと」
分身の俺は揚げ足を取るように返すが途中で空気を読んで止め、女の子の疑問に適当に返して精霊王から聞いた情報を教える。
「へー…『封印の強化』、ねぇ…」
「とりあえず世界各国との協力体制が成立すればやる予定。なんでも事前にやると話の信憑性を疑われて交渉が難航するから、それまでの多少の被害には目を瞑るんだと」
「「…ああ…」」
女の子が何か考えるように呟き、分身の俺が本当は隠しておいた方が良いんであろう裏の話しをすると、女の子と男が同時になんとも言えない微妙な顔をしながら納得して理解したように呟いた。
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