壮年期 50
『その技術を用いて異なる世界より召喚された人間が我ら精霊と契約を結び、一年と354日で魔王を倒して封印した』
「ソレが今の俺の200倍近い魔力を持ってたっていう化物か。今から約1300年ぐらい前だな」
『そして二度目の聖戦より378年後、人間の一部が魔族の封印を解き放ち聖戦とは別の魔族にも予期せぬ戦いが始まった』
「…邪神教的なやつかな?はた迷惑な奴らはどの時代にもいるもんだ…」
精霊王の話を聞きながら分身の俺は相槌を打ちながら微妙な顔をする。
「って…んん?待てよ?ソレが今から900年ぐらい前って事は…もしかしてそろそろその魔族の封印が解けて三度目の聖戦が始まるってのか?」
『その通りだ。あと108年後に魔族の封印が解かれて三度聖戦が起きる。弱い魔族が現れたのがその前兆とも言える』
「108年後て…遠いなー…更新しなけりゃ俺らの契約切れてんじゃん」
『今のままであればそうなるであろうな』
分身の俺がふと閃いて確認すると精霊王は肯定して正確な期限を告げ、分身の俺のなんとも言えない感じでの発言にも肯定して返した。
『人類の有史以来高位精霊や上位精霊と我を同時に契約した人間は主で二人目。己の魔力を用いずに契約や使役する人間は主ただ一人よ。此度の聖戦も主がいれば人類の負けはありえまい』
「つっても俺その時に生きてたとしても130過ぎだぞ?そんな歳で世界の存亡をかけた戦いに挑むとかヤバくねー?」
精霊王の想定に分身の俺は微妙な顔をしながら否定的に返す。
「…その時は私も260歳近くになりますね…」
「私でも190か200近くだ。生きてたとしてもまともに戦えるかどうか…」
すると少女と女も100年先の事を考えて微妙そうな顔で呟く。
「…じゃあ今から来たる聖戦…百年後に向けて後進を育てていかないといけないわけだ。孫かひ孫の時代かな?」
「…確かに。話を聞く限りでは世界中の国々…人類で協力しないと難しい案件になりそうです」
「魔族とやらが世界中で暴れるんなら一つの国だけ強くても意味が無いからね。周りの国が落とされていけば結局は包囲されて時間の問題だ」
分身の俺が適当な感じで予想を話すと少女と女は納得して考えながら聖戦を想定しての意見を言う。
「実際1300年前だかは人類の8割ぐらいが死んで異世界転移に失敗してたらそのまま滅んでたみたいな事を聞いたし」
『うむ。国同士での争いの最中に聖戦が始まり、人間同士で連携する事はなく人間の総数が一億三千万人前後まで減少していた』
「一億…当時の総人口は?」
『二度目の聖戦時で65億8500万前後だ』
分身の俺の発言に精霊王が肯定して当時の事を軽く話してくれるので分身の俺が疑問を尋ねると大まかに教えてくれた。
「…ちょっと待てよ……えーと…?…98%!?この世界の人口の98%が魔族に殺されたって事!?」
『そうなるな。魔族が全ての人間を直接手にかけたわけではないが…主が言った通り異なる世界から救世主と呼ばれる人間が来なければ人類は絶滅し、今は魔族が支配する世界へと変わっていただろう』
「…それほどまでに、魔族は脅威的なのですね…」
「死ぬ前に強い魔族とは戦ってみたいものだが…」
分身の俺が地面に式を書いて計算した結果に驚きながら聞くと精霊王は肯定して予想を話し、少女と女がまたしても微妙な感じで呟く。
「…ふーむ…そこで現物が無くなって一旦現代技術が失伝したのちに魔法の技術が発達した、と…まあとりあえず今から地道に各国に話を通して協力体制を作っていくしかないね」
「…そうですね。まだ時間はありますし、このまま何もせずに聖戦を迎えるわけにはいきません」
「話を聞いてる限りでは次の聖戦で人類が敗北して滅んでもおかしくないからね」
分身の俺はこの世界の歴史について考えながら呟き、現実的な案を出すと少女が賛同して女も同意する。
「…よく考えたらあと一回厄災の龍の魔石で契約更新してもギリギリ数年足りない…ボスクラスの魔石でチマチマ刻まないといけないかも…」
『次の聖戦まで我との契約を更新する腹づもりとはなんと豪気な。過去の契約者でさえ一月ごとに契約を結び直していたというのに…』
「…精霊との契約…その『更新』と『再契約』というのはやはり何か違いがあるのですか?」
分身の俺がめんどくさ…とため息を吐いて呟くと珍しく精霊王が驚いたような反応を見せ、少女は少し考えて疑問を尋ねた。
『無論だ。再契約とは契約が切れる度に儀式を行い、時には課された試練を再度乗り越えて果たされるもの。だが更新はその手間を省く代わりに要求される対価や期限が通常時よりも厳しくなる』
「『対価や期限が通常時よりも厳しくなる』…?」
「つまり、俺が精霊王と契約する時にドラゴンの魔石一つで一年だったけど…そっから更新して期間延長する場合はドラゴンの魔石一つでは半年にしかならないんだって」
「「なるほど!」」
精霊王の説明に女が理解し切れないような感じで不思議そうに首を傾げて呟くので分身の俺が実際の例を挙げて解説すると、少女共々理解出来たかのような反応をした。
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