壮年期 36

「オオォ!」


「あ」



分身の俺がそろそろ動くか、と思ってとりあえず分身の俺の動きを抑え込もうと盾を押し付けてる魔物の魔石抜きをしようとしたら…



ボスの魔物が大剣を勢いよく振り上げて振り下ろし、剣圧による衝撃波で周りの魔物ごと分身の俺に遠距離攻撃を当ててきた。



「!周りの…味方ごとかい!?」



衝撃波の射線上に居た弓を持つ魔物や分身の俺の周りで袋叩きにしていた魔物達がボスの魔物のフレンドリーファイアでバラバラになって消えると、分身の女性が驚愕しながら信じられないような反応をする。



「ジェネラルがボスの魔物の中でも上位に位置している理由の一つです。召喚した魔物で足止めさせてその魔物ごと攻撃する…一人の場合ではマスタークラスに近いハンターしか倒せないと言われていますし」


「…あんな攻撃をされたら…でも個人でマスタークラスに近い実力者ってのは限られてるんじゃ…?」



分身のお姉さんの説明を聞いて分身の女性は困惑しながら呟いた。



「ったく…せっかく魔石抜きしようと思ったのに…魔物のくせにせっかちかよ」


「オオォォ…!」



分身の俺が呆れながらため息を吐いて言うとボスの魔物はまだ杖を持った魔物が二体居るにも関わらず大剣を地面に突き刺し…



杖を持った魔物達の姿が消えるとまた地面から新たな魔物達が湧き出てくる。



「ほう…?召喚技をこうも使ってくるなんて珍しい…今日の奴は当たりか?」



分身の俺は意外に思いながら呟き、また巻き込み攻撃される前に近づいて来た魔物達を順番に魔石抜きして倒していく。



「オオォォ!」


「おや?これはもしかして魔石稼ぎのフィーバータイムに突入したかな?」



ボスの魔物が大剣を高々と上に掲げるとまたしても地面から魔物達が湧き出て来たが…



予想外に最初の倍以上の大量の数の魔物が出てくるの分身の俺は嬉しくなりながら余裕の態度でボスの魔物を煽るような顔をした。



「…ほら、どうした?この程度じゃ数が足りねぇぞ?もっと頑張れよ」


「オオォ!」



分身の俺は素早く群がる魔物達を魔石抜きで倒した後に両手を広げながら無意味な煽りをするとボスの魔物は大剣を振り下ろすように投げつけ…



縦に回転しながら飛んで来た大剣は分身の俺に当たっても尚勢いを落とさずに後ろに飛んで行くと、同じ軌道で戻ってきて分身の俺を後ろから切りつけながらボスの魔物の手に収まる。



「…衝撃波以外にも遠距離攻撃があったのか」


「オオォ!」



分身の俺が軽く驚いて以外に思いながら呟くとボスの魔物は今度は大剣をブーメランのように横振りで投げつけてきた。



「…よ、っと。おお?」



分身の俺は上手くタイミングを図って大剣の柄を掴んでキャッチするも柄から大量の鋭いトゲが飛び出す。



「へー、主人以外には触られたくない、と?」



分身の俺がこの剣も魔物の一部か?と疑問に思うとボスの魔物が分身の俺に向かって手を向け、大剣が引っ張られるような感じになるので手を離す。



「オオォ!」


「おっと」



ボスの魔物の距離を詰めての振り下ろしを分身の俺は後ろに下がって軽く避ける。



「召喚技を使えよ。まあ初見の技なら許すけど」


「オオォ!」



…伝わないと分かりつつも上から目線で煽るとボスの魔物は大剣を渾身の力で振り下ろし続け、避ける度にドォン!ドォン!と地面が割れて地震のような少しの揺れが起きた。



「…うーん…もう終わるか」



それから10分ぐらい待つも一向に召喚は使ってくれず、分身の俺は諦めてボスの魔物が振り下ろした大剣を右手で掴んで受け止め…魔石抜きをして終わらせる。



「…あと二回ぐらい召喚技を使って欲しかったけど…まあ次の機会でもいっか」


「そうですね。少し残念ですが仕方ありません」


「…外から見てると地獄のような状況にしか見えなかったのに…」



分身の俺が少し落胆しつつ気持ちを切り替えるように言うと分身のお姉さんも同意し、分身の女性は微妙な顔で呟いた。



「とりあえずダンジョン出たら魔石を持ってかないといけないかな?」


「そう…ですね、支部の方が早く正確に詳細が分かるので出来るだけ早く渡す方が良いと思います」


「戦場の方はどうなってんのかね?まああたし達が居ても居なくても特に変わりはないと思うけど」



分身の俺の歩きながらの提案に分身のお姉さんは少し考えて肯定し、分身の女性が戦争の状況を気にしたように聞く。



「流石に昨日と一緒でしょ。大将がどんな考えをしてるか分からないけど一日で一気に状況が変わるような行動はしないと思うし」


「…それもそうか」


「必要になれば坊ちゃんに助けを求めるでしょうし…それまで私達のやる事はありませんね」



分身の俺が適当な感じで返すと分身の女性が納得して分身のお姉さんは静観を続けるような事を言う。



「…それなら別に戦場に出る必要も無いんじゃ?」


「それもそうだけど…宿営地にずっと居るってのも暇じゃない?」


「…確かに。でもどっちにしろ暇なんだよなぁ…」



分身の女性の確認に肯定しながら尋ねると分身の女性は同意した後に微妙な顔でボソッと呟く。

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